法政大学は1997年から3キャンパスの情報センターを改組して「総合情報センター」を設置し、ネットワークやソフトウエアなどの整備に傾注してきました。そのなかの一つとして、生徒が自宅など学外から、ジャパンナレッジのような専用データベースにアクセスできる環境を整備しました。それ以前もダイアルアップで接続は可能だったのですが、VPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク:インターネットを専用線のように利用する技術)を使って、ブロードバンドに対応した外部からのアクセスが可能になったのが2003年です。
また、現在は「net2006」と称する新しい研究ネットワークに移行し、一部のコンテンツや機能を除いて、学内で提供されているサービスは学外からでもシングルサインオンで利用できる環境が整いつつあります。現在、図書館の契約したデータベースで学外から利用できるコンテンツとしては「ジャパンナレッジ」のほか、「ネットで百科」「ブリタニカ・オンライン」、新聞では「日経テレコン21(日経4紙データベース)」「聞蔵(朝日新聞データベース)」「毎日Newsパック(毎日新聞・エコノミスト・MDN)」などがあり、そのほか、国内外の学術専門雑誌記事のデータベースや各国統計資料データベースも、利用が可能となっています。
学外からのアクセスについてですが、学生はまず、自分のIDとパスワードを使って法政大学のネットワークにログインします。ここから図書館の専用ページ(MyLibrary)を経由すると、そこにあるデータベース名をクリックするだけで上記のデータベースを使うことができるわけです。レポートや論文の作成、授業を受講する前の下準備など、専用データベースに自宅に居ながらアクセスできるメリットは大変大きなものがあると思います。
ほかにも、学内には「情報カフェテリア」が用意されています。市ヶ谷キャンパスでは、常時ネットに接続したコンピュータが100台近く用意されており、自習に使うだけでなくデータベースを利用することもできます。ノートパソコンを借りてもらえば、学内に多数設けられた情報コンセントを使って、資料を自由に閲覧することもできます。
そうしたシステム的な整備ももちろん大切ですが、法政大学でデータベースの利用が活発ないちばんの理由は、頻繁に行うガイダンスだと思います。データベースに関するガイダンスは年間、百数十回を数えます。これらのガイダンスは、単位に換算される授業の一環として行われています。
ガイダンスでは、我々図書館のスタッフが講師を務め、レポートや論文を書くための基礎知識として、図書館での基本となるOPAC(蔵書検索のためのオンライン目録)の使い方から始まって、ジャパンナレッジを含む各種オンライン・データベースの効率的な使い方、引用する際の注意点などを講義します。
ガイダンスの実際の受講者は、昨年度、市ヶ谷キャンパスで年間1483人でした。今年はさらに本格的に学部と連携したガイダンスを採り入れたので、詳しい数字はまだ挙げられませんが、相当伸びています。これにより図書館への来館が増え、データベースの活用率も大幅に向上しました。
このほかにも、図書館ホームページ上では、「レポート・論文を書くには」「分野別データベースリスト」など、実用的なデータベースの使い方(を掲載するのと同時に、「パスファインダー」なども作成して案内しています。パスファインダーというのは、ある特定のトピックに関する資料や情報を系統的に集める手順をまとめたものです。ホームページ内では、「水俣病について調べてみよう:環境問題から公害問題へというテーマで、実際に、朝日新聞の「知恵蔵」「ジャパンナレッジ」「環境科学事典」のほか、「大宅壮一文庫記事索引検索」、白書や統計資料、実際の書籍、地方新聞のデータベース、映像資料など、あらゆる情報ソースから「水俣病」について得られる情報を集めるための道しるべを記しています。現在数は少ないのですが、今年中にさらにいくつか増やしていく予定です。
ジャパンナレッジは、数多くの事典や辞書が同時に検索できるので、あらゆる調べものの入り口になるデータベースだと紹介しています。まずジャパンナレッジで調べて、そこからキーワードを拾い出したり、関連の情報に広げていくような使い方ですね。私たちがジャパンナレッジを使っていて便利だと感じるのは、百科事典の本文ページの右側に「関連サイト」として掲載されている外部の情報ソースへのリンクです。いちいち検索エンジンで調べる手間が省けますし、そもそも検索エンジンでは、信頼できるソースを選び出すのだけで大変ですから。学生が自習などで利用するときにも、学習の内容や幅が広がるので、こうしたリンクはもっと充実させてもらえるとありがたいですね。
さて、こうした多くの試みを行っていくなかで、少しずつですが、学生の図書館利用に変化が見えてきたような印象を持っています。つまり、従来は図書館に対するリテラシーが高い学生はごく一部で、多くの学生は特別な必要がある場合のみ図書館を利用する傾向があったように思います。それに対し、近年の図書館の電子化、資料電子化の流れのなかで、紙の資料を利用しなかった学生群も、検索サイト+アルファとして図書館のデータベースを利用するケースが増えているように思えるのです。少し希望的な観測かもしれませんが(笑)。