JKボイス お客様の声知識の泉へ
ジャパンナレッジを実際にご利用いただいているユーザーの方々に、その魅力や活用法をお聞きしました。
先端を行くナレッジピープルによる数々のジャパンナレッジ活用術の中に、あなたの知識探索生活をさらに豊かにするヒントが隠されているかも知れません。法人のお客さまの導入事例としても、興味深いエピソードが盛りだくさんです。
2006年09月

JKボイス-私はこう使っています:ジャパンナレッジ ジャパンナレッジはなぜ、北米図書館に受け入れられたのか?

三竹 大吉さん
(みたけだいきち)
紀伊國屋書店
ライブラリーサービス部 部長
2001年3月、北米で図書館サービスを行う外商部門設立のために、紀伊國屋書店の三竹さんは渡米した。JapanKnowledgeがサービスを開始したのはその1か月後の4月17日。市場はちょうど日本語電子文献の導入の黎明期。三竹さんは、日本語商品の新たなニーズを肌で感じていた。それから5年、JapanKnowledgeは高い評価を得て北米市場に受け入れられた。環境や文化がまったく違う北米でJKが受け入れられた背景を三竹さんに聞いた。

北米と日本の文化的・技術的な壁

 JapanKnowledgeが北米図書館関係者の間で話題に上るようになったのは2003年初めころだったと思います。同年3月にニューヨークで開かれた電子文献委員会(Digital Resources Committee)で初めて公に取り上げられました。英文ですが下記に該当部分を抽出してみます。

 Participant D contacted NetAdvance Inc. (a part of the Shogakukan) for licensing of JapanKnowledge. Although they do not have a licensing contract for overseas institutions yet, they are very willing to learn and make accommodations for future overseas use. Participant D finds this product very useful for undergraduate students. The frequency of updates and coverage were inquired by an audience. Participant E replied that it is updated frequently. Participant D will maintain a dialogue with the JapanKnowledge representatives and keeps us inspaned on her progress.

(北米日本研究資料調整協議会 Digital Resources Committee:
http://www.fas.harvard.edu/~ncc/drc/drcmeetingminutes2003.html

 【ジャパンナレッジのライセンシングに関する契約の件で、協議会員のDさんはネットアドバンス社にコンタクトを取りました。それ以前、同社では海外法人へのライセンシングを行っていませんでしたが、このオファーに大変興味をもち、将来的な海外利用についても非常に積極的だったそうです。また、Dさんからはこの商品が学部学生にとって大変有用なツールだと感じたという報告もありました。他の参加者の方からは、この商品のアップデート頻度についての質問があり、それに対し、協議会員Eさんは、アップデートは頻繁に行われていると答えられました。なお、Dさんは同社と引き続き連絡を取り続け、その後の進展をわれわれに報告してくれることになりました。】

 ここで注目したいのは、ネットアドバンス社がJapanKnowledgeの販売に関し当初より海外ユーザーを強く意識していた点です。それまでの日本語データベースは、残念ながら海外をも視野に入れて販売する気概を持ったメーカーが(一部の例外を除き)皆無だったのです。日本国内の利用が順調に推移してくれればそれでよしとする方針が大勢だったと思います。当然、北米図書館関係者からすると不満ですし、交渉の必要性を感じたわけですが、同時にそこには北米市場特有の問題も含んでいたと私は考えるのです。

 一般に北米の研究機関が電子商品を導入する場合、まず彼らは二つの点に留意していると思います。

  • (1)大学全域で利用できる商品かどうか。具体的には学内LANからの接続が可能か? ID & パスワードではなくIP アドレスによるアクセスが可能か? 学外からのリモート・アクセスがOKかどうか? など
  • (2)英文利用規約が整備されているか? さらにはそれが基本的にユーザーの立場を保証する内容となっているかどうか?

 北米機関では、ある意味当然ですが「利用」を目的に導入を検討しますので、逆に言うとどんなに有益なデータベースであっても利用条件に支障がある場合は受け入れられない、ということになります。例えば、CD-ROMやDVD-ROMのようなオフライン・データベースは導入にあたって(1)が技術的なネックとなります。北米は英語環境ですからOSの問題がからんでくるのです。仮にLANからの接続利用が許可されたとしても、学内のWEBサーバーにCD-ROMのデータを移し、英語環境下で利用させるところに至るまで相当な時間と労力を費やすのです。その他の例では、いくつかの大学が共同で独自のネットワーク環境を開発し利用者へ便宜を図っているケースもありました。

 そうした現場の紆余曲折を経て、北米図書館側は、特に海外コンテンツの利用を前提に考えた場合、日本語オフライン商品には限界があるので一刻も早く、オンライン版への移行を熱望するに至ったのです。

 利用規約の問題も同様で、当初より日米間には温度差があったと思います。例えばメーカー側は「利用上の留意点」というニュアンスで作成した文章であっても、ユーザーである北米図書館側は「契約書」と同様なレベルで厳密な内容チェックを行うのが一般的です。あくまで利用者の立場に立脚して検討する北米側と、日本のメーカーとで見解の相違が生じ、話が先へ進まないケースも実際に間々ありました。

楽しみながら学べる学習ツールへ

 かかる状況下で登場してきたのがJapanKnowledgeです。冒頭に記しましたように2003年春に取り上げられるやいなや、ネットアドバンス社は北米ユーザーの声に素早く対応し、あっという間に(1)、(2)両方をクリアしてくれたのです。特に、(2)は結果として契約第一号となるYale大学にもご協力いただき、利用規約の北米バージョンを数週間で完成させたのでした。そしてその後2年間で30以上の主要なResearch University(研究重視型大学)が会員となり、地域によってはコンソーシアム利用も始まりました。さらに嬉しいのは利用頻度が毎年上がっていることで、その結果が同時アクセス数の増加にも繋がっています。現在の北米利用状況はまさに順風満帆と言えましょう。これからはアジア、ヨーロッパへも利用を拡大していくとうかがっています。

 当初は、『Encyclopedia of Japan』や各種辞書が利用の中心でしたが、これからは『東洋文庫』や『日本歴史地名大系』のようなフルコンテンツ・データベースが重宝がられることでしょう。目録や抄録の時代からフルコンテンツの時代へ移りつつあるのではないでしょうか。『週刊エコノミスト』も将来バックナンバーが充実するとさらにアーカイブとして機能が増しましょう。また前述のCD-ROMやDVD-ROM商品をオンラインへ移行させ、JapanKnowledgeへ搭載してもらえる日が来ることをすべてのユーザーが待ち望んでいると思います。これからも成長する「最大・最強の知識探索サイト」としてますますの発展を期待していますが、もっと多様な利用法を用意する、またユーザーの自由度を増やしてもらえるとなおいいのではないでしょうか。

 最後に、北米の熱心なユーザーの声をひとつご紹介して今回の私のレポートを終わらせていただきたいと思います。

 「仕事柄、辞書はよく使うので、オンラインで簡単に検索できるJKはとても便利です。JKの主なユーザーは教授や院生なのですが、最近日本語のクラスでJKを活用してもらうことにしました。今回試してみたのは、『新語探検』を使って学生それぞれが面白いと思った“新語”をクラスの他の生徒に日本語で紹介するというもの。わからない言葉や読めない漢字があればワンルックで検索できるのも嬉しいです。学生達も一度使い方に慣れると自分で他のコンテンツを探すようになるので、楽しみながら日本語の学習ができるようです。今度は、『字通』で漢字の学習をさせてみたいですね」

(カンサス大学図書館の伊藤倫子様)