JKボイス お客様の声知識の泉へ
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ジャパンナレッジユーザーに関わるイベント、他メディアでの掲載記事などを「SPECIAL」と題してアップしていきます。今後もユーザーのみなさんが各方面でJKを応援していただいている様子をお伝えしていこうと思います。ご期待ください。
2007年11月

JKボイス-セミナーレポート:ジャパンナレッジ 「どうなるこれからの図書館」
~生き残りのカギは“想像力”と“編集力”~PART1

大串 夏身さん
(おおぐしなつみ)
昭和女子大学教授
去る11月7日、第9回図書館総合展にてネットアドバンス主催のパネルディスカッションが行われました。日本の図書館のこれからを問う、講師御三方による興味深い内容の講演と討論が行われました。
アフターレポート第1弾は、2007年10月のJK Voiceにも登場いただいた大串夏身さんの講演です(大串さんには今回のパネルディスカッションの司会進行も引き受けていただきました)。情報通信ネットワーク時代の中で、これからの図書館は如何に変わっていくべきか? 近年発表されたレポートを通じて、今回のテーマを明確にしていただきました。
2007年11月7日(水)
会場:パシフィコ横浜(神奈川県)
講師:大串夏身(昭和女子大学教授)
       井上真琴(同志社大学職員・講師)
       登紀子Yバゼル(ハワイ大学マノア校日本研究専門司書)
主催:株式会社ネットアドバンス
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第三の情報革命

 平成19年3月に文部科学省から「これからの図書館像(脚注1)」という報告書が発表されました。これは、あくまで日本の公共図書館のこれからについてのレポートでした。

 ほぼ同時期には、やはり文部科学省の委託事業として筑波大学(大学院図書館情報メディア研究科)の永田治樹先生からレポート(脚注2)がまとめられております。

 これらを読みますと、今、新しい時代が到来しており、図書館を取り巻く状況が大きく変わろうとしていることを実感します。図書館ばかりでなく社会全体の枠組みが大きく変わろうとしています。

 その基盤となるのは、世界的規模のコンピュータ情報通信ネットワークです。いわゆる「第三の情報革命」の到来です。ネットワークを介して知識と知識が様々なところで出会い、それがまた新しい知識を生み出して行きます。あと50年くらいの間に社会全体も次の枠組みが作られていくだろうと言われております。日本でも、ユビキタス情報社会を構築するという、u-Japan政策が打ち出されています。

 このようなことを背景に、図書館にも大きな環境変化が起こっています。


 環境変化は、新しい伝達の方法や知識技術が生まれる時に顕著です。

 「第一の情報革命」は、紀元前7世紀、話し言葉をそのまま書き取る技術が生まれたことによります。文字をパピルスに書写し、記録する技術です。

 「第二の情報革命」は、1450年代のドイツで発明された活版印刷です。これによって新しい知識が次々と量産されました。

 二つの情報革命、この時代では、知識や情報を蓄積する場所は図書館だったのです。そのため巨大な図書館が次々と生まれ、蔵書量が飛躍的に増加していきました。

 過去二つの情報革命と今回の大きな違いは、コンピュータネットワークの上にいろいろな情報知識が蓄積される点でしょう。これは、図書館だけが蓄積の場ではなくなることも意味しています。図書館よりネットワーク上の情報の方が多くなってしまう、利便性から考えても、ネットワークの方が優れている、という事態が予測されています。

 図書館のこれからの在り方について考える場合には、このような枠組みの中で図書館がどのように存在すればいいのかを考えていかなければなりません。

 どのようなサービスをしていけば良いのか? それ如何で図書館に対する社会の評価、そして期待、対応が定まってしまう。現在、そんな入口に立っていると考えて、まず間違いは無いでしょう。

大学図書館は、どうすべきか?

 先述の「これからの図書館像」の中で非常に重要なポイントがあります。

 第2章の「提案」の中で、これからの図書館サービスに求められる新たな視点ということで、レファレンスサービスについて、非常に強調されています。

 その中では、「日本の公共図書館はレファレンスサービスが非常に不十分である」「専用のカウンターを設けているところが量的に少ない」「専任の職員の配置が少ない」という状況を指摘しています。

 他にも、「課題解決支援機能の充実」「紙媒体と電子媒体の組合せによるハイブリッド図書館の整備」なども強調されております。

 もうひとつご紹介したいのが、「学術情報基盤の今後の在り方について(脚注3)」という科学技術・学術審議会学術分科会の報告書です。

 こちらは、「図書館像」と同じ平成19年3月にまとまっております。その第一部は、もっぱらコンピュータの環境整備の話になっておりますが、第二部では、大学図書館の話題になっています。その中の「基本的な考え方」に、学術情報基盤は、「国全体の学術研究のための基盤として、これらの整備について総合的かつ戦略的に取り組むことが必要である」と書かれています。

 では、実際にどうすればよいのか?……残念ながらそのことについては、あまり具体的に書かれていません。ハード面での大学図書館を取り巻く課題や、今後の対応策などについては書かれているものの、実際の図書館サービスに関しては、ほとんど書かれていない。

 ただ、図書館サービスの問題点と、それに対しての提言はあげられています。

 問題点としては、
「主題知識、専門知識、国際感覚を持った専任の図書館職員が不十分」
「情報リテラシー教育の位置付けが不明確」
「利用者ニーズの把握が不十分」
という点が指摘されています。

 これらに対して、

「大学図書館の教育支援サービス機能強化に当たっては、急激に変化し、多様化していく利用者のニーズに円滑・迅速に対応するという観点が重要である」「情報リテラシー教育の推進に当たっては、各分野の教員との連携の上に立った取り組みが必要である」という提言が成されています。

 たしかに、ひとつの方向性が示されているのは事実です。

 日本の大学図書館が再生していけるのか? 時代に対応した方向へ進めるのか? これらを考えると、もっと具体的なサービス内容に突っ込んだ議論が巻き起こらない限り、その再生発展は難しいと思います。

 これからお話いただく、御二人には具体的な大学図書館におけるサービス、という点を踏まえながら、それぞれの実情について語っていただき、その後、パネルディスカッションに入っていきたいと思います。

>>次回へつづく

脚注1:「これからの図書館像」

「これからの図書館像 -地域を支える情報拠点をめざして-」。文部科学省の「これからの図書館の在り方検討協力者会議」が、地域や住民に役立つ図書館となるために必要となる新たな視点や方策等について取りまとめた提言書。
文部科学省ホームページより


脚注2:レポート

『今後の「大学像」の在り方に関する調査研究(図書館)報告書-教育と情報の基盤としての図書館-』のこと。平成19年3月、筑波大学が先導的大学改革推進委託事業として公表した報告書。平成17年から18年にかけて実施した調査に基づき、大学に価値をもたらす図書館、情報基盤の在り方を論じたものである。論説に加え、実例や最新の資料がついており,昨今の大学図書館の実情をよく理解できる報告書となっている。
筑波大学 知的コミュニティ基盤研究センター ホームページより


脚注3:「学術情報基盤の今後の在り方について」

文部科学省ホームページより


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