本日は、千代田図書館でどのようなことを行っているか、みなさまにお伝えしたいと思っています。
千代田図書館の運営にあたっては、このようなミッションステートメント【資料1】がございます。
当館は千代田区役所の9階にあるのですが、エレベーターを降りたすぐ前に、このステートメントが掲示されています。『千代田区立図書館の方針』がはっきり明文化されており、私が現在仕事をしていく上での基盤となっています。当館にお越しの際には、ぜひご覧ください。
内容的には以下の3つのポイントに分けられます。
当館は、このステートメントを実行するために、次の5つのコンセプトを打ち出しております。
これらを基本として、私どもは、普段、様々な企画やセミナーなどを行っております。
まず、千代田区の特徴をお話します。
日本最大のビジネス街を擁する区でもありますので、在住者に対して在勤者が圧倒的に多いのです。練馬区と比べても分かるように、夜間人口が全く違います【資料2】。
このように、かなり特異な場所なので、千代田区に合ったターゲット設定が必要になってきます。
そこで、千代田図書館では、以下の方々をメインターゲットとして見据えております。
本日は、図書館からの情報発信の1つとして「オープンスペースでのセミナー」の提案をしたいと思います。
オープンスペースセミナーは、その場に偶然居合わせた人全員が、どのようなセミナーをやっているのかということを見ることができます。本を借りたり、返しに来ただけの方、ふらっとやって来ただけの方、セミナーは気になっていたけれど申し込みまではしなかった方……そのような方々が、セミナーの様子を見ることによって、「あ、次は参加してみようかな」という気持ちになっていただけたら、と思っております。
千代田図書館には、セミナーなどを行うために10階の子ども室、9階の情報探索コーナーと研修室の、3つのスペースを利用しています【資料3】【資料4】。
平成19年5月のリニューアルオープン以来、当館では様々な催しを行ってまいりました。視覚化するために、今回このような形にデータ化してみました<【資料5】。
オープンスペースセミナーを行ったのは、9回です【資料6】。
9回の中には、オープニングイベント、トークイベント、セミナーなど色々なものがあります。その中で、「セミナー・講座」ということになると、実際は、わずか4回しか行っていませんでした。しかし、この4回の中で、実体験として多くのことを得ることができました。
今回お話しするのは、今年の夏に行った、中学生・高校生対象のセミナーです。「体験しよう!JapanKnowledge - 知って得する調べものツール」と銘打ち参加者6人に対し講師1人、サポート3人という、とても贅沢なセミナーとなりました。
オープンスペースセミナーの広報をするポイントは『セミナーの内容やターゲットによって告知の方法に違いを持たせる』ということです。
ちなみに、このセミナーに来てくれた学生はみんな、学校で配布してもらったチラシを見てやって来ていました。図書館のホームページやチラシではないのです。このことから、様々な広報を展開していく際、ターゲットに合った場所に的確な情報を伝えていったほうが、より集客のあるセミナーが開催できるということが分かりました。
次に「オンラインデータベース利用状況」という資料を見てください【資料7】。
夏のセミナーを行った後に、JapanKnowledgeの利用が劇的に伸びていることがお分かりいただけると思います(資料左上)。夏休みですので、宿題等をする子たちがやって来た、もしくは保護者とやって来られたかと思うのですが、それにしても、最初の頃に比べて、格段に伸びているのです。これは、夏休みの課題を仕上げるという目的を達成するためにツールとしてデータベースを使いこなす潜在利用者が存在するということを示していると考えることができます。
ここで、オープンスペースセミナーを行う際の諸注意について申し上げます。
まず、講師の方とオープンスペースで行うということに関して、綿密な打ち合わせが必要で、可能ならば現場を見ていただくということをお勧めします。講師及び担当者の間でセミナーのシミュレーションが可能になりますし、なにより想定外のことが起こりうるという共通の認識を持つことができます。
セミナー当日に関しては、職員への周知と協力依頼の徹底が必要です。オープンスペースセミナーの時間帯に居合わせた方に正しい情報を伝え、セミナーへの理解をいただく、という臨機応変な対応が必要になるからです。私ども千代田図書館の場合には、平日であれば、朝の10時から夜の10時まで、スタッフが約20人程入れ替わりカウンター業務を担当しております。職員スタッフが多い程、情報共有が必要だと、痛切に感じております。
これは、あくまで私の基準なのですが、「オープンスペースVSクローズスペース」をまとめてみました【資料8】。
オープンスペースとクローズスペース、どちらが効果的なのか? おそらく、みなさんが一番気にされているのは、セミナー参加者の講義への集中度はどうであったのか? ということだと思います。
今回、「体験しよう!JapanKnowledge - 知って得する調べものツール」には講師1人、サポート3人(うち1人は千代田図書館職員)で担当してもらったので、充実したセミナーになりました。さらに、実技をメインにした内容でしたので、たとえ周りに他の利用者がいたとしても、参加者は自分の宿題に一生懸命でした。周りに人がいるから、人が見ているから、ということで、気が散ってしまう学生はいなかったと思っています。
オープンスペースセミナーをやってみた図書館側としての感想は、大きく2つあります。
1つ目は、セミナーに参加していない利用者が興味を示していたということです。JapanKnowledgeのチラシをオープンスペースセミナー周辺のカウンターに置いておいたところ「これって何なの?」「私もできるの?」「今すぐできるの?」と、興味を持つ方がいました。
2つ目は、セミナーの開催が可視化できたことによって、実際に見かけて、「何かやってる」「へぇ、図書館でこんなことをやってるんだ」「次はいつやるの?」と、セミナーの開催自体に興味を持つ層がいることが分かり、私たちも次へのステップに繋げられたという実感が持てました。
反面、参加した学生が、千代田図書館でJapanKnowledgeを使えると知らなかった。また、データベースの存在自体を知らなかったということが判明しました。ということは、私ども千代田図書館として、データベースというこんな便利なものがある、という告知・促進が今までできていなかったわけなのです。これは反省点になりました。
続いて、参加者からのアンケートをご紹介します。【資料9】。
面白かったのが、「自宅でJapanKnowledgeを使ってみたい」という子がいたことです。実際に通常会費が月額だいたい1,500円位だったと思うのですが、「あ、これだったら…」とか言いながら帰って行った子がいました。このような意外なパブリシティができるのも面白いですね。
最後になりますが、今回の「図書館からの情報発信」には3つの効果がありました。
オープンスペースセミナーを行うことによって、夏休み以降にJapanKnowledgeの利用者が増え、加えて職員も以前にも増して利用者自身のセルフレファレンスの一環としてデータベース利用案内を促進していったという事実から「見える化」が成功したのかと思っています。
また子どもたちは、自分で調べたいことがあったのなら、一生懸命に調べます。ただ、その方法が分からずに、「ちょっと聞きにくい」としり込みしてしまうようです。そんな子たちを「何かやってるな」という場所に引っ張りこんでしまおう。オープンスペースでやる意味というのは、まさにそこにあるのだ、と思っています。
子どもたちを引っ張りこむという意味では、公共図書館は、むしろ好都合な場所かと思います。
各施設にあった『オープンスペースセミナー』やってみませんか?