大学図書館でどのような使い方をしているのかということに絞ってお話しさせていただきます。
私どもがジャパンナレッジを導入したのは2003年(平成15)です。
当時の大学教育を取り巻く環境は、社会全般の高度情報化、少子化/大学全入などで、大学およびその図書館が、それぞれの試みに向かって進んでいかなければならないという認識に立って、具体的なアクションを実施に移した頃でもありました。事実、今年の2008年(平成20)からは、中学3年、高校3年、合計6年間のゆとり教育を受けた初の学生が新入学してきております。【資料1】
ジャパンナレッジ導入の前年(2002年)には、外国雑誌購入の見直しをしております。CD-ROM系のデータベース、電子ジャーナルなど電子メディアと紙媒体が重複しているものに関しては、紙の方を解約し、その分の費用を電子化に充てました。
さらに、百科事典や新聞雑誌系など、さまざまなCD-ROMのデータベースをCD-ROMサーバーに格納したり、省スペースを試みましたが、メンテナンスを行うのは、かなり大変になってまいりました。そこで、Web系のデータベースへ可能な限り移行しようと考えたのです。
その結果として、なぜ私どもが、ジャパンナレッジを選んだのか?
ジャパンナレッジは複合型のデータベースだったからです。ご承知のように、辞典や百科事典ばかりでなく、「週刊エコノミスト」から「東洋文庫」まで、雑誌や書籍も見ることができます。
特に「東洋文庫」は魅力的でした。普通の図書館の場合、それほどでもないかも知れませんが、本学は流通科学大学という、とても特化したテーマの文献を集めている関係で、「東洋文庫」全巻を置くことは不可能でした。そのような点からも、「東洋文庫」のソースが入っているジャパンナレッジは、大変ありがたい存在だったのです。
さまざまなコンテンツが入っていて、それを複合的に利用できる。これは、ひょっとすると、良い電子図書館……ミクロコスモスの図書館ができるきっかけなのでは、という期待を込めて、ジャパンナレッジの導入となったわけです。【資料2】
ジャパンナレッジの主な利用方法としては、クイック・レファレンスの回答として、あるいはレファレンス・プロセスの中での利用が考えられます。
いちいち辞典のコーナーへ利用者と一緒に足を運ばなくても、レファレンスカウンターの端末を利用して、相談を受ける際の手がかりにできます。あるいは、レファレンサー自身の確認の意味で項目をチェックするといった使い方もできます。
他にも、ジャパンナレッジは各ガイダンスでも効果的に利用しております。
ここで、私どもの大学で行っている情報リテラシー教育支援の演習や講座をご紹介しましょう。
一般的なガイダンスをのぞいて、1年生の基礎演習の中で「ライブラリーツアー」と「メディアセンターツアー」というものを行っております。これらは、「ツアー」とは称しておりますが、館内や施設を見て回っておしまいということではありません。OPACを使って実際に本を取り出してきたり、データベースを使って検索した結果をレポートさせるなど、いわゆる館内見学ツアーとはまったく異質のものです。その後、3年生を対象としたさらに高度な中級編も用意しております。
また、「就活・レポートに役立つデータベース活用講座」というものもあります。最近の学生は、「これは役に立つよ!」と言わないと、なかなか来てくれないので(笑)、このような名称になっております。
それに実用的な「レポート作成のための図書館活用講座」も試みております。レポート作成にあたっての資料集めなどのステップで図書館をどのように活用するか、ということが中心です。そのなかで引用文献の表記法を学ぶことで図書や雑誌論文に引用されている引用文献の見方を理解するというものです。OPACのタイトル項目に雑誌論文名を入力して検索結果0件ということであきらめてしまう、などという失敗も回避できると思います。引用文献の書き方を学ぶことを通じて、先行研究の引用文献の見方を覚えてもらうようにしています。
実施状況に関しては資料をご覧ください【資料3】【資料4】。
先ほど申し上げた、基礎演習対象の「メディアセンターツアー」について、詳しくお話しいたします。ここでは、メディアセンター利用法の概要、情報の速報性と信頼性の説明、データベースの検索実習を行います。
検索演習では、新聞・雑誌の記事検索ということで、本文記事データベースと国立情報学研究所のCiNii、それからジャパンナレッジを実際に使っています。
【資料5】は、ユニクロの新商品に関する新聞記事検索問題の例です。実際に特定の記事を検索させてPDF版と表示されているテキストが、どのように違っているかを対話形式で説明して、学生の反応をみていくというものです。
【資料6】は、フルテキストの雑誌記事データベースの検索演習問題ということで、資生堂のTSUBAKIというシャンプーについて調べる問題です。CMに6人の女優さんを起用したことでも話題になり、TSUBAKIが発売されて約1年半後に白TSUBAKIが発売されましたので、このようなトピックス性の高いテーマを素材にしながら、調べものをさせます。
CiNiiの実習では、神戸のテーマパークなどの記事を検索させます。少しクラスが騒がしくなってきている時には、学生には嫌味がてらに、付き添いの教員もちょっと驚かしておくために、フリーワードで「私語」&「授業」で検索してみましょうね、とけん制します【資料7】。CiNiiでは、大学紀要のかなりのものがPDFで本文を閲覧できますので、その記事を読みながら、学生たちには「君たちのことだね」と注意を促し、教員には「あ、こんなに見れるんだ」と有用性をアピールしておきます。
さて、本題のジャパンナレッジですが、まず「OneLook」での検索を紹介しています【資料8】。これは、「辞事典」「記事」「URL」などが検索できます。
最初に、ダイアログボックスに検索ワードを入れると、あとは「辞事典の検索」というボタンを押せば、搭載された辞書・事典の項目が検索できるのです。 次に、「記事」の検索にすると、「週刊エコノミスト」や「NNA:アジア&EU国際情報」などがヒットしてきます。
1年生の段階では、「マーケティング」と入力して、それぞれ検索させてみます。1年生には、とりあえず操作が簡単だということと、次のステップにつながるようなところをメインに説明しております。
「メディアセンターツアー」の演習では、Webページの評価という話題も出てまいりますので、ジャパンナレッジの「URLの検索」は、そのテーマと連動した形で、学生に見せることもできます。
先ほど申しましたように、ジャパンナレッジが、図書、雑誌、辞書、コラム、Webサイト、そのような情報が一度に利用できる複合型のデータベースであることに力点を置いています。
ジャパンナレッジの裏側にある発想というのは、おそらく、インターネット上の情報と呼ばれている部分でしょう。最近の学生は、すぐ検索エンジンを使いたがります。他の有用なデータベースを紹介しても、とにかく無条件でGoogleやYahoo!にキーワードを入力して、検索ボタンを押してしまいます。
そういったインターネット上の情報のほかに、図書館が従来扱ってきたような紙媒体の情報が存在しますが、今の時代、記事検索をするのに「私は紙の方が良い」という、ガンコな人は少ないと思います。
恐らくこれからの図書館の仕事というのは、ネット上の情報と、従来型の印刷情報の両方をハイブリッドして扱えるようにしていかなければならないと考えております。その手がかりが、ジャパンナレッジにあったと思っています。
これは、「現代用語の基礎知識」です【資料9】。先ほど「ハイブリッド」ということを話題にしましたので、ハイブリッド車のページを表示してみました。ちゃんと元の冊子体にあった図表もそのままの形で入っています。参考業務の途中で、ちょっと確認をするのにも使えます。
今度は、ユニクロについて調べてみます【資料10】。「ユニクロ」を「日本大百科全書」で全文検索すると、「ユニクロ」と「ファーストリテイリング」が、まず表示されます。ご承知のように、「ユニクロ」というのはブランド名・商標名で、学生が例えば「ユニクロ」のことを調べたいといったときに、「ユニクロ」だけでいくら新聞記事等を調べても網羅できないのです。要するに、会社名の「ファーストリテイリング」でも調べないと、その全体像はつかめないわけです。このあたりの索引機能の紹介としても、ジャパンナレッジは十分役に立ちます。
繰り返しますが、ジャパンナレッジの持つ、次へのステップの基本になるという点を常に重要視しております。