本学は「流通科学大学」という名の通り、商品や情報、お金など、さまざまな「モノの流れ」を科学的に研究する大学です。そこで図書館も一般的な資料をそろえるのではなく、大学の特性を反映した内容でありたいと考えています。専門書や実務書を問わず、「流通」を学ぶ上で必要な書籍をそろえ、「流通科学大学の図書館だからこそ手に入る情報」を重視した資料収集をモットーにしています。
しかし、特定の分野に特化していくと、図書館が本来備えるべき総合的な情報や基礎的分野が弱くなってしまう可能性があります。そこで、こうした点をカバーしてくれる存在としてジャパンナレッジを導入しました。
ジャパンナレッジは百科事典をはじめとする数多くの辞典類、雑誌記事や東洋文庫、オリジナルコンテンツにいたるまで、総合的な情報が一括検索できる極めて普遍的で統括的なデータベースですから、「電子図書館」という言葉がぴったりあてはまるサイトだと思います。基本的な図書館機能を補完してくれるサイトを求めていた私たちにとって、まさに理想のデータベースだったのです。
ジャパンナレッジは、知りたい知識や情報を調べる以外に、新入生を対象にした授業の中でも利用しています。情報を効率よく得るためにメディアセンターの利用法を学ぶ「メディアセンターツアー」という企画がそれです。「基礎演習」という、情報検索や資料収集法、レポートのまとめ方など、学生が学習を進める上で必要な基本スキルの習得を目的とした科目で実施しています。
演習では、学生1人ないし2人につきパソコン1台を割り当て、ジャパンナレッジを体験してもらっています。たとえば、「マーケティング」という言葉をワンルック(一括検索)してどんな資料が出てくるかを確認し、得られた情報の活用法を考えてもらうという具合です。ちなみに、最近の学生は一から手順を教えるよりは、「こういうことができるから便利なんだよ」という結果を先に見せると、興味を持って取り組むようです。
1回生の基礎演習では情報サーフィンを体験する程度ですが、2回生後期のゼミではレポート作成を意識した、一歩踏み込んだ内容のツアーも実施しています。各情報ソースの特性を理解したレベルの高い情報検索を目指し、レポートの中で使う用語の意味を再確認させたり、目的によって資料を使い分ける方法などを指導したりしています。今後は、就職活動のための企業情報収集や、卒論への活用法などへ発展させていきたいと考えています。
本学ではジャパンナレッジ以外にも多くのデータベースを導入していますが、おもに図書館員や教員が使うものは1~2アクセスを、ジャパンナレッジのように学生に積極的な利用を勧めるものは10アクセス程度を取得することにしています。メディアセンターツアーは1回20人を上限としていますので、すべての学生に体験してもらうには時間がかかります。それなら新入生を一度に集めてガイダンスを実施した方が効率がよいという意見もあるかもしれません。しかし、私たちは実際に体験してもらうことにこだわっています。使ってみて初めて、その便利さや面白さを理解し、実践に役立てることができるからです。
おかげさまで、このメディアセンターツアーに参加する前と後では、学生のレポートの質が変わると教員からも好評です。新入生の段階では内容が大きく変わるわけではありませんが、情報収集法を学んだことで基本的要素をカバーし、出典を明記するなど、形式の整ったレポートを作れるようになるようです。
ジャパンナレッジは、『日本大百科全書』はもちろん、『現代用語の基礎知識』や『Multimedia Internet 事典』、『週刊エコノミスト』などで新語や雑誌記事も瞬時に調べられるので、経済や情報系の学部が多く、常に最新事情に敏感でなければならない本学の学生にとっては頼りになる検索ツールです。どんどん情報を追加・更新して充実しているジャパンナレッジを授業や研究に活用する余地はまだまだあるはずなので、私たち図書館員もこれから試行錯誤し、新しい時代の学習法、ひいては新しい授業サポートの形を作り出していきたいと考えています。