シカゴ双葉会日本語学校は、主にアメリカ在住の日本の子どもたちが学んでいます。親の海外赴任でアメリカに来た生徒や、両親のいずれかが日本人で、アメリカで生まれ育った子もいます。
学校は全日校と補習校があります。全日校は日本の普通の学校と同様のもので、小学部と中学部がひとつになっています。補習校はアメリカの学校に通っている生徒に対し、週一回、日本語の授業を行う学校です。こちらは日本で一週間かけて習得するものを、土曜日の一日に集中して行いますから、授業はとてもハードです。どちらの学校でも、将来は日本に帰る生徒が多いため、日本のカリキュラムを念頭に置いた指導が行われています。帰国してから日本の授業についていけなくてはなりませんから、ご両親の教育熱も自ずと高くなっています。
規模の違いはあるでしょうが、学校の設備としては日本の学校と大差はありません。ただ、ひとつ大きな違いがあるとすれば、日本語の本についてでしょうか。外国では日本にいる感覚で本が手に入るわけではありません。日本から直接送ってもらう書物には搬送費用などがかかりますから、おおむね2~3割は高くなってしまいますし、街の書店で購入できる日本の書籍は、1.5倍くらいの値段となって売られていることも珍しくありません。
そうした中で図書館の蔵書数は2万6000冊くらいありますが、決して満足できるような状況ではありません。本も古いものが多いので、情報の鮮度という点でも問題があります。もちろん特定の書店では日本の書籍を買うこともできますし、最近はインターネットで日本の情報をいつでも入手できる環境になったのですが、本に対する愛情というか、大切さは海外にいるとはっきりとわかります。
アメリカで生活する日本人は、当然、日本語と触れ合う機会が少ないわけです。ですから、全般的に日本語に対する感度は低くなります。即座に漢字を思い出せないのはよくあることで、普段の会話の中で歴史上の人物の名前が出てこなかったり、常識で当然知っているであろう知識が欠落していたりということが多々あります。親御さんをはじめ学校としても、そんな生徒には日本語を忘れないために、日本語の書物を積極的に読ませるようにしています。
全日校中学部ではいわゆる「総合的な学習」が年間30時間カリキュラムに入っており、教科ごとの調べ学習も頻繁に行われます。子どもたちは5~6人のグループになって、自分たちの決めたテーマについて調べ学習を行います。
具体的にあったテーマとしては、「日本の最近の犯罪について」「日本のいじめ問題について」「環境破壊について」などです。こうした社会的なテーマについては、統計データや具体的な事象も調べなくてはいけません。そこでインターネットを活用して情報を集めるという作業が必須のものとなってきますが、子どもたちにインターネットを自由に使わせると、見せたくないようなページも出てきます。
実際に、「日本の自殺」「日本のいじめ」について調べたグループがありました。単に「自殺」や「いじめ」といったキーワードを検索エンジンで調べると、膨大な数の検索結果が出てくるのと同時に、子どもには到底見せられないページがたくさん出てきました。そもそも、どのような情報が「調べ学習」に使用できるものなのか、信頼に足る情報なのか、その判断基準が子どもには備わっていませんから、情報洪水に溺れてしまうことになります。子どもたちにはまず、しっかりとしたベーシックな知識を提供してくれる土台が必要なのです。
そういう事情で苦慮していた時期に出合ったのがジャパンナレッジでした。前述の「いじめ」について調べてみると、必要な項目がしっかり更新されており、海外だからと料金が高くなることもない。生徒ばかりでなく、先生も教材研究のために利用することができる。なによりもマルチメディアデータをはじめとして、私自身が楽しむことができました。
この部分は非常に大切で、図書館でのレファレンスは、子どもたちが自分たちで調べることもありますが、私のところに「こういう分野について調べてください」と持ってくることも多いのです。ですから、司書にとっての使いやすさ、親しみやすさという部分に気を配ったシステムであるかは、とても大切な要素になるのです。
日本にいると疑問にも思わない常識が、海外では「おやっ?」と思うことがよくあります。しかし、そんな“常識”を調べる資料は、実は意外と少ない。ジャパンナレッジはそんな疑問に答えてくれる、頼りになる“日本語力ツール”なのです。