本日は、公共図書館でのデータベースサービスについてどのようなものかをご紹介できればと思います。
まず、当館、大阪市立中央図書館は西区にあります【資料1】。
大阪市は24区ありまして、地域の図書館が各区に1つずつあります。そのほか、自動車文庫「まちかど号」が2台運行しております。これらを合わせまして中央図書館を中心とした図書館ネットワークが機能しています。
中央図書館の3階閲覧室の写真です【資料2】。自治体としては最大級の規模の図書館で、開架が約30万冊、閉架を合わせると約160万冊所蔵しています。
そのような中で、(少しデータが古くて申し訳ないのですが)平成18年度は1日平均694件の調査相談をお受けしています。これは、インフォメーションの数字も含んでいますので、純粋にレファレンスというわけではないのですが、それだけ多くの利用者の方と、電話、カウンターなどを含めて対応している、大きな図書館です。
中央図書館は1996年(平成8)に建て替えをして、同じ場所にオープンしました。当時は、CD-ROMの新聞記事データベース等の導入は初めての試みでした。職員向けには外部とのネットワーク接続を始めていましたが、パソコン通信とインターネットで国会図書館のオンライン情報検索システム(NOREN)や、データベースでは日経ニューステレコン(当時)、総合目録ネットワーク実験事業、そして大阪府立図書館とは、パソコン通信ネットワーク(OL-NET)で結んでいるような環境でした。 地域図書館は、その当時どうだったかというと、今では懐かしいワープロによるパソコン通信接続で府立図書館から本を借りるような手続きをしていました。まだ10年ちょっと前ですが、このような状況でした。
地域図書館へのデータベース系の導入をどのように行っていったのかをご説明します。1997年(平成9)に地域図書館の建替拡充ということで、東淀川図書館がオープンし、そのときに初めてCD-ROM等の電子資料の提供を開始しました。続いて1999年(平成11)に旭図書館が同じく建替拡充をして、電子資料を導入いたしました。
2001年(平成13)に、図書館情報ネットワークシステムの第1期再構築システムが稼働し、従来の地域図書館を含めた、全館で利用者へのCD-ROM資料の提供を開始しました。職員の環境としては、全館の全業務端末にインターネット常時接続を行い、インターネットを活用したレファレンス業務が可能になりました。
商用データベースに限ってみますと、日経テレコンを1996年の新中央図書館の開館時に導入しています。日外アソシエーツの「MagazinePlus」は、2000年(平成12)に中央図書館、2001年に全館の全業務端末で利用可能になりました。
利用者向けに一番最初に提供を始めたのが朝日新聞社の「聞蔵DNA for Libraries」で、2005年(平成17)に提供を開始しています。その後、2006年(平成18)に「レクシスネクシス.jp」を中央図書館の職員向けに導入しました。
これが2006年までの商用データベース導入の状況です。
「知識創造型図書館」をひとつのキーワードにして、大阪市立図書館は運営を行っています。
まず、「市民主体の生涯学習の推進」が平成19年度の大阪市教育委員会の経営課題に掲げられていました。その中で、図書館として目指すのは、レファレンス機能・情報サービスの高度化です。これは、誰もがいつでも情報や知識を活用して創造性・生産性を高めることを図書館として支援していこう、というものです。
図書館機能の充実とは、レファレンス機能、情報サービスの高度化で、商用データベースの情報の提供を含みます。データベースだけでなく、レファレンスブックやビジネス関連の図書も整備する他、子どもの調べ学習の支援にも力を注いでいきます。
大阪市では重点政策予算枠というものが平成17年度の予算編成から創設されました。みなさんもご存知のように、大阪市も大阪府と同じように非常に厳しい財政状況で、政策の選択と集中ということで、通常の予算とは別に政策的な予算の中で施策を行ってきています。ただ、政策予算枠というのは年度が決まっているものですので、計画年度が終わった時に、今後どうしていくのかは、大きな課題となっています。
2007年(平成19)4月23日から、データベースの提供を開始しています。地域図書館も含めて、「多機能OMLIS(オムリス)」と呼んでいるキーボードタイプのパソコン約100台で提供しています。種類は28種類。無料で、時間制限は設けていません。一部パスワード入力が必要なデータベースもありますが、特に申し込みが必要というわけでもなく、まったくフリーです。(契約の関係上、中央図書館のみで検索していただくものが5種類あります。)印刷は、中央図書館の決められた端末のみで行えます(有料)。
種類は、「新聞 雑誌」「政策 法律」「自然科学 医学」「辞典 事典」などがあります【資料3】。資料の○で囲んだものが、中央図書館のみで提供している種類です。
こちらが、中央図書館3階にあるデータベース専用の端末です【資料4】。この4台だけがプリントアウト可能です。これが、専用端末の実際の画面です【資料5】。
一方これが「多機能OMLIS」のメニュー画面です【資料6】。項目が分かれているのは同じですが、●が付いているのが商用データベースで、あとはCD-ROMなどのメニューも併用して提供しています。
データベースの実際の利用状況ですが、月単位でデータベースごとに自動集計しています。これが月別利用統計です【資料7】。4月は23日に開始していますので、日数が少なくなっています。9月以降に、利用者と業務用の統計を切り分けられるようになりました(8月までは内数になっています)。基本的には、開館日数、来館者数に比例していると思っています。8月はやはり非常に来館者数が多いということと、12月~2月は開館日数が少ないため、来館者数が落ちています。4月は、蔵書点検の期間が2週間ありましたので、その関係で落ち込みをしているのではと推測しています。
タイトル別統計【資料8】です。やはり新聞が多いですね。中央専用端末、多機能OMLIS、業務に色分けしています。
利用状況の実感としては、ヘビーユーザーの方が非常に多いようです。元々そのような方たちは、商用データベースがどのようなものかをご存知で、図書館で使えるようになったということで来館されているようです。それ以外に、新聞データベースの利用が活発です。新聞を調べに来られる方は元々多く、データベースで活用できますよと、こちらから声かけさせていただいております。年配の方でも、リピーターになられる方が多いようです。
例えば、「ロトの当選番号を調べたい」という方が来られて、「新聞でも調べられますが、商用データベースで調べたらロトの当選番号ばかり出ますよ」とご紹介したら、とても喜ばれました。
庁内支援ということで、大阪市職員向けにレファレンスサービスを展開していて、そちらに商用データベースを活用させていただいています。主に法律関係ですね。判例の調査が多いようです。官報で法律がどのように変わってきたか、うろ覚えの記憶であってもデータベースなら収集することができます。他にも新聞データベースで他都市の政策の状況を調べるなど、非常に有効に使っていただいています。
データベース種類別統計【資料9】です。全館の多機能OMLISでの状況を見ると、やはり新聞が多いようですね。法律系は中央図書館でしか使えないデータベースがあるので、その関係で左の業務での統計より減っています。右が中央図書館の印刷可能な専用端末の統計ですが、新聞が4分の3を占めています。リピーターの方がよく来られる端末なので、これが実体に近い統計だと思います。全館で自然科学系の割合が多くなっているのは、項目の中のタブは五十音順になっているので、「エコロジーエクスプレス」をまずクリックする人が多いからのようです。
中央図書館職員としてデータベースを使っていて、メリットを感じる点は、検索性が高いということと、調査時間の短縮です。これは特に電話での相談にとっては有効です。電話を受ける専用の部屋があり、百科事典やレファレンスブックを常備しているのですが、まず、電話を置いて取りに行かなければならないのです。「じゃ、あとでかける」「いつかけ直せばいい?」と、すぐ言われてしまいます。「今お調べしますから、お待ちくださいね」と言って、職員が動かずに端末で信頼性の高い情報を調べられるのが非常に便利です。
それから、最近休刊する資料が多いので、その代替としての意味合いも強いようです。「朝日新聞 聞蔵」、「読売新聞 ヨミダス文書館」の人物情報などを使わせていただいてます。
企業情報も休刊してしまうものが多かったり、中央図書館で利用が重なっていたり、した場合に、ジャパンナレッジの「会社四季報」などの利用を紹介しています。
業務用のタイトル別統計です【資料10】。「Magazine Plus」がトップで、次が「ジャパンナレッジ」です。利用者の方がよく使っておられるのは「ネットで百科」です。利用者の方々は名前からだけでは、ジャパンナレッジが何をするものなのかが、よく分からないようです。
データベースに関する課題としては、職員研修や利用者への広報、提供タイトルの見直しを随時行っていかなければならないと思っています。
中央図書館は各分野の担当制になっております。例えば人文系なら人文系、芸術なら芸術の担当者がいますので、各々が担当しているデータベースに、まず自分自身が精通しようということで研修を行っています。
その一環として、お客様向けの配布物を発行して、自分の分野に関係のあるようなデータベースを積極的にお知らせしようとしています。反面それは自分の研修でもあるわけです。
業者の方が行ってくださっている無料の研修がありますので、それにも参加させていただいています。レファレンスの業務研修、夜間の自主学習会も行っています。事例の共有には、レファレンス協同データベースも活用しています。
利用者への広報は、当館のホームページを使ったり、館内に掲示をしたり、「いちょう並木」という大阪市の生涯学習に関する冊子の中で紹介したりしています。
庁内の職員向けには、庁内ポータルや庁内組織メールを使ってお知らせをしています。
利用者にデータベースがどの位知られているかと、利用者のデータベース認知度に関するアンケートを実施しました【資料11】。「知っているし、使ったことがある」が約1/4、「知っているが使ったことがない」が約半分。「知らなかったけど使ってみたい」が約20%です。
商用データベースは使えそうと、潜在的に思ってらっしゃる方は多いのですが、実際に使ってくださっている方はまだまだ少ないのが現状です。アンケートに答えてくださっている方は図書館のヘビーユーザーの方が多いと思うのですが、それでもデータベースの利用者は少ないようです。
「役に立ちますか?」との質問に対しては、使った方は、たいてい満足されているようです【資料12】。けれども、知らない人、使ってない人が大多数です。
「改善すべきことは」という質問で、約2割の方が使い方を教えてほしいとおっしゃっています【資料13】。
提供タイトルは、以上のようなアンケートによる使い方の現状を見ながら見直しをしています。ジャパンナレッジについては、使おうと思ったら使えないというアクセス数の問題がありましたので、今年度はアクセス数を増やしました。
商用データベースは大変有用で、毎日使わせていただいております。司書の役割は、まず資料を知ること、利用者のニーズを知ること、その上で利用者と資料を結ぶことです。それは商用データベースについても全く同じだと思っています。資料を知るということを、導入一年目には取り組んできました。「利用者のニーズを知って、利用者と資料を結んでいく」ことが、導入2年目の今年の大きな課題だと思っています。
大学図書館では、学生さんへのリテラシー教育というものが行われてきています。公共図書館では利用者層が幅広いということもあり、どの層にむかってやっていけば良いのか手探りの状態ですが、大学図書館の例を参考にさせていただいたり、ジャパンナレッジさんの力もお借りしながら、これからも尽力していきたいと思っております。