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岩波 生物学辞典 第5版

岩波 生物学辞典 第5版
ミトコンドリアゲノム
[mitochondrial genome]

mtゲノム,mtDNAなどと略記.《同》ミトコンドリア核様体(mitochondrial nucleoid),ミトコンドリア核(mitochondrial nuclei),ミトコンドリア染色体(mitochondrial chromosome).ミトコンドリアが保有する独自のゲノム.一般に環状二本鎖DNAであるが,生物によっては線状の場合もある.生物種間でサイズの隔たりが大きい.後生動物のミトコンドリアDNAは一般に小型の環状DNAで,情報的には極度に切りつめられたコンパクトな形になっている.例えば,ヒト(1万6569 bp)などの哺乳類のミトコンドリアDNAには,2種のrRNA(16S,12S),22種のtRNA,13種の蛋白質(NADH還元酵素の7個のサブユニット,シトクロム酸化酵素の3個のサブユニット,ATPアーゼの2個のサブユニット,およびシトクロム$b$)に関する遺伝子が存在するが,これらはほとんど隙間なく配置されており,tRNAにはTループやDループに欠失のあるものも多い.各遺伝子の間にtRNA遺伝子が存在し,長く転写されたRNAがtRNAプロセッシングによって各mRNAに分割される.イントロンはない.遺伝暗号は変則的で,核ゲノムの終止コドンであるUGAがTrpに,IleコドンであるAUAはMetに,ArgコドンであるAGAとAGGは終止コドンに変わっている.このようなミトコンドリアDNAの遺伝的構成は動物に普遍的なものと考えられている.ミトコンドリアゲノムは核ゲノムと比較して細胞や組織当たりのDNAコピー数が数十~数百倍多く,PCR法と組み合わせた塩基配列検出が容易なことから,生物種間などの分子系統解析(⇒分子系統学),化石や遺骨の調査,親子判定や犯罪捜査などにも用いられる.古代人骨や現代人のミトコンドリアDNA塩基配列解析は人類進化の系統的な研究にも広く利用されている.ヒトではミトコンドリアゲノムは細胞質を通して母性遺伝するため,ミトコンドリアDNAの解析から現生人類の祖先と推定された女性(約20万年前にアフリカに居住)はミトコンドリアイヴ(mitochondrial Eve)と呼ばれることがある.細胞や組織内では正常型と変異型ミトコンドリアDNAが混在していることをヘテロプラスミー(heteroplasmy)と呼ぶ.酵母のミトコンドリアDNAは,78~85 kbpの環状分子で動物のものよりかなり大きいが,基本的な遺伝子構成はほぼ同様である.サイズの違いは遺伝子間のスペーサーの長さと遺伝子内にイントロン(自己スプライシング型のグループⅠ,Ⅱ)を含むものが多いためである.これらイントロンのなかにはスプライシングを補助するための蛋白質(RNA maturase)の遺伝子などを含むものも知られている.酵母の一種$Saccharomyces cerevisiae$では,動物のミトコンドリアゲノムに普遍的なNADH脱水素酵素系の7個の遺伝子を欠いているが,他の菌類や藻類では対応する遺伝子群が検出されており,これが単細胞真核生物の特徴というわけではない.遺伝暗号表には動物の場合と全く同じではないが,同程度の変則性がみられる.植物のミトコンドリアゲノムは動物や菌類などのものに比べ一般に大きく(200~2400 kbp)複雑な構造をもつ.苔類ゼニゴケ$Marchantia polymorpha$のミトコンドリアDNA(18万6608 bp)は単一の環状分子であるが,種子植物などの場合には一つのミトコンドリアの中に大きさの異なる複数のDNA分子が存在し,分散型(multipartite)のゲノム構造になっている.分散型のミトコンドリアDNAには分子内に反復配列が複数存在しており,それらの間での組換えによって環状DNAの切出しや結合,逆位などが起こることにより,種々のDNA分子種が派生してくると考えられている.逆に,反復配列を基にミトコンドリアDNA全塩基配列を仮想的な一つの環状DNAとしてまとめたものをマスターサークルと呼び,これが一般に植物ミトコンドリアゲノムとして認識されている.しかしこのようなマスターサークル分子が植物の中で恒常的に存在するか否かは証明されていない.植物のミトコンドリアDNAは,rRNA,tRNA,蛋白質に対する遺伝子(未同定のORFを含む)と多数のイントロン(グループⅠ,Ⅱ)で構成されており,動物や菌類などのミトコンドリアゲノムに普遍的な蛋白質遺伝子の他,十数個のリボソーム蛋白質遺伝子などが付加されている.遺伝暗号表は普遍的で動物などにみられるような変則性はない.種子植物やヒメツリガネゴケのミトコンドリアゲノムからの転写産物は,RNAエディティング(主にC→Uへ)が総計数百カ所で起こり,DNAとRNAの間で塩基配列の変換が起こるが,ゼニゴケではRNAエディティングはない.

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ミトコンドリアゲノムの関連キーワードで検索すると・・・
検索ヒット数 22
検索コンテンツ
1. ミトコンドリアゲノム
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いる.このようなミトコンドリアDNAの遺伝的構成は動物に普遍的なものと考えられている.ミトコンドリアゲノムは核ゲノムと比較して細胞や組織当たりのDNAコピー数が ...
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5. 親子鑑定画像
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6. キネトプラスト
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7. ゲノム
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8. 細胞質置換
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9. 生物系統地理学
岩波 生物学辞典
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10. チミジンキナーゼ
岩波 生物学辞典
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11. DNA画像
岩波 生物学辞典
どにも核のDNAとは異なる独自の少量のDNAが存在し,細胞質遺伝の要因となっている(⇒ミトコンドリアゲノム).現在では,組換えDNA実験技術とDNA塩基配列決定 ...
12. DNA複製酵素
岩波 生物学辞典
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13. ハプロタイプ
岩波 生物学辞典
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14. ミトコンドリア画像
岩波 生物学辞典
.ミトコンドリアは独自のゲノム(mtDNA)を保有し,細胞内で分裂によって増殖する(⇒ミトコンドリアゲノム).ミトコンドリアの遺伝子発現機構は基本的には原核生物 ...
15. ミトコンドリアDNA
日本大百科全書
の長さは1万6569塩基対で、環状二重鎖構造をとり、計37種類のミトコンドリア遺伝子(ミトコンドリアゲノム)をコードしている。 細胞の核内に染色体として存在する ...
16. ユーグレノゾア類
岩波 生物学辞典
もつ単細胞性鞭毛虫.鞭毛軸糸に沿って蛋白質性のパラキシアルロッド(paraxial rod)が付随する.ミトコンドリアゲノムに分化が見られ,クリステは盤状.基本 ...
17. ρ因子
岩波 生物学辞典
原核生物の転写終結因子(⇒ターミネーター).酵母のミトコンドリアゲノム.野生型はρ+と表す.ρ+株を臭化エチジウムにさらすと高頻度でρ因子の欠失が誘発され,呼吸 ...
「ミトコンドリアゲノム」の情報だけではなく、「ミトコンドリアゲノム」に関するさまざまな情報も同時に調べることができるため、幅広い視点から知ることができます。
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「ミトコンドリアゲノム」は自然科学に関連のある記事です。
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