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  11. フラボノイド
日本大百科全書・岩波 生物学辞典

日本大百科全書(ニッポニカ)
フラボノイド
ふらぼのいど
flavonoid 

クロロフィル、カロチノイドと並ぶ一群の植物色素の総称。ベンゼン環2個が炭素3個で結ばれ、かつ中央のC3が酸素を含むヘテロ環をつくった構造をしている。ヘテロ環の酸化還元状態の違いによってフラボン類、イソフラボン類、フラボノール類、フラバノン類、アントシアン類、カテキン類(フラバノール類)などに分類される。植物の葉、花など各部分に含まれ、高等植物に広く分布している。代表的なものは黄色のフラボン系色素と、花などの赤・紫・青を現すアントシアン系色素で、前者は化学的にも安定で染料として利用されるものもあるが、後者は光や水素イオン濃度指数(pH)の違いなどによって変色しやすい不安定な物質で染料にはならない。フラボノイドは植物体内では3分子の酢酸単位からできるマロニルCoAとフェニルアラニンに由来する桂皮酸類が融合して生成する。フラボノイドは紫外線をよく吸収するので、高等植物はこれらの色素を表皮に含み、紫外線による障害を防いでいるといわれる。
[吉田精一][南川隆雄]
 フラボノイドという名称はフラボンに由来しており、テルペノイドやカロチノイドに倣って称されるようになった。樹木の黄色の色素で生理活性を有するものが多く、2003年現在、600種ほどのフラボノイド系色素が植物から単離されている。なお、フラボンはラテン語で「黄色」を意味するflavasが語源である。
[佐藤菊正]

フラボン類flavone

フラボン類の母体化合物は2-フェニルクロモンとよばれ、これをフラボンということがある。1914年にドイツのミュラーMüllerによってサクラソウの葉や実から無色の針状結晶として単離された。水に不溶、石油エーテルに難溶、エタノールに易溶。融点97℃。濃硫酸に溶けて、紫青色の蛍光をもつ溶液となる。2-アセトキシカルコンジブロミドに、酒精性カリを作用させると得られる。この誘導体は高等植物に広く分布しており、代表的なものはクリジンchrysin、ルテオリンなどである。クリジンはポプラの若芽から淡黄色の小片結晶として単離された。エタノール、氷酢酸に易溶、ベンジンに不溶。融点274℃。2,4,6-トリメトキシベンゾイルアセトフェノンをヨウ化水素で処理すると得られる。フラボン類は化学的に安定で、古くから染料として用いられている。
[佐藤菊正]

イソフラボン類isoflavone

イソフラボン類の母体化合物は3-フェニルクロモンというが、これをイソフラボンということもある。しかし天然には存在していない。無色の針状結晶で、濃硫酸に溶けて青い蛍光を発するが、徐々に褐色となる。融点131℃。この誘導体の分布はマメ科、バラ科、アヤメ科、クワ科およびヒユ科に限られている。ゲニステインやダイゼインなどが知られているが、これらはエストロン(ステロイドホルモンの一種)と同様に発情作用がある。
[佐藤菊正]

フラボノール類flavonol

フラボノール類は2-フェニルクロモンの3位にヒドロキシ基をもつフラボン誘導体の総称。母体化合物は3-ヒドロキシフラボンである。フラボノール類は植物界に広く分布しており、その多くは3位のヒドロキシ基が配糖体となって存在している。代表的なものはガランギンgalangin、フィゼチンFisetin、ケルセチン(クェルセチン)Quercetinなどである。ガランギンはガランガの根から単離された黄色の針状結晶。融点215℃。この加水分解によってフロログルシンと安息香酸が得られたことから、この構造が決定された。
[佐藤菊正]

フラバノン類flavanone

フラバノン類は2-フェニルクロモンの2、3位の二重結合が飽和された化合物およびその誘導体の総称である。フラバノン誘導体は天然にはあまり多く存在していないが、マメ科、ミカン科などから得られている。フラバノンは無色の針状結晶。融点76℃。これを濃水酸化カリウム水溶液と混合して加熱すると、複素環部分が開裂する。この反応はフラボンの場合と同様、構造決定に重要である。たとえば、リキリチゲニンを加水分解するとレスアセトフェノンとp(パラ)‐ヒドロキシ安息香酸が得られたのでその構造が明らかにされた。
[佐藤菊正]

アントシアン類anthocyan

アントシアン類は植物の花、葉、および果実の美しい色をもった部分に存在し、酸性溶液中では紅色を呈し、アルカリ性溶液中では青色を呈する。発色のもとになる色素の本体(アグリコン)をアントシアニジンanthocyanidin、これに糖が結合したもの(色素配糖体)をアントシアニンといって、この両者をあわせてアントシアンと称している。市販のアントシアニン色素(食用天然色素)としてはシソニン(シソ色素)、デルフィニジン(ハイビスカス色素)、マルビン(ブドウ果汁色素)などが知られている。これらアントシアニン色素による千差万別の花の色は、花卉(かき)細胞のpHによるものではなくて、アントシアニンと金属イオンとのキレート形成やアントシアニンの規則正しい分子内または分子間の会合によるものである。用途として飲料、洋酒、梅漬け、柴漬け、冷菓、洋菓子などがある。
[佐藤菊正]



フラボノイドの分類[百科マルチメディア]
フラボノイドの分類[百科マルチメディア]

注:(1)~(6)各図の左が母体化合物、右がその誘導体例である©Shogakukan


岩波 生物学辞典 第5版
フラボノイド
[flavonoid]

《同》フェニルクロマン(2-phenylchroman-4-one),


2–フェニル–1,4–ベンゾピロン(2-phenyl-1,4-benzopyrone).狭義には二つのフェニル基がピラン環かそれに近い構造の三つの炭素原子を介して結合している化合物の総称であり,ピラン環の構造によってフラバノン(flavanone),フラボン(flavone),フラボノール,イソフラボン,イソフラバノン,プテロカルパン,アントシアニジン,ロイコアントシアニジン,カテキンなどに分類される.広義にはシキミ酸経路に由来する$p$–クマロイルCoAに3単位のマロニルCoAが順次結合して生成するクマロイルトリケチド(coumaroyl triketide)が縮合閉環して生成する1,3–ジフェニルプロパノイドに由来する化合物,およびその生合成経路を共有する化合物群の総称.この過程で最初に生成するカルコン(chalcone,1,3–ジフェニルプロパノイド1,3-diphenylpropanoid)やスチルベン誘導体もフラボノイドと考えられる.フラボノイドの名は黄色(flavus)に由来し,広く植物界に分布する.

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検索コンテンツ
1. フラボノイド画像
日本大百科全書
定な物質で染料にはならない。フラボノイドは植物体内では3分子の酢酸単位からできるマロニルCoAとフェニルアラニンに由来する桂皮酸類が融合して生成する。フラボノイ
2. フラボノイド画像
世界大百科事典
ノン,ケルセチンなどである。[図・式]構造上重要な植物色素アントシアニン類によく似ていて,フラボノイドのあるものは古くから染料として用いられてきた。(表参照)竹
3. フラボノイド[カタカナ語]
イミダス 2018
[flavonoid]【生物】ベンゼン環にグルコースが結合した高分子化合物.レモンなどの皮に含まれる.血圧降下作用をもつ.
4. フラボノイド画像
岩波 生物学辞典
3–ジフェニルプロパノイド1,3-diphenylpropanoid)やスチルベン誘導体もフラボノイドと考えられる.フラボノイドの名は黄色(flavus)に由来
5. フラボノイド【2019】[外来語・カタカナ語【2019】]
現代用語の基礎知識
植物色素。特に黄色系の色素。天然健康食品の成分の一つ。
6. フラボノイドの分類[百科マルチメディア]画像
日本大百科全書
注:(1)~(6)各図の左が母体化合物、右がその誘導体例である ©Shogakukan
7. フラボノイド : 表-おもなフラボノイド画像
世界大百科事典
[名称] [化学名] [融点(℃)] [存在] ルテオリン 3′,4′,5′,7-テトラヒドロキシフラボン 329~330 モクセイソウ バイカレン 5,6,7
8. 1997 平成9年【2019】[特集2 平成の食文化年表【2019】]
現代用語の基礎知識
にもされた。 ワインブーム/フラボノイド* 赤ワインに含まれるポリフェノールが、病気の原因の一つである活性酸素を抑える働きをするという理由で人気となる。フラボノ
9. アントシアニン画像
岩波 生物学辞典
《同》アントシアン(anthocyan,旧称).2–フェニルベンゾピリリウム構造をもつフラボノイド系植物色素の総称で,花,果実,葉,茎,塊茎,種皮などの橙,赤,
10. アントシアン
日本大百科全書
花青素(かせいそ)ともよばれた。基本構造として2個のベンゼン環が3個の炭素で結ばれた炭素骨格をもち、フラボノイド色素群に含まれる。色素の本体(アグリコン)である
11. イカリソウ画像
世界大百科事典
やE.brevicornum Maxim.などが用いられ,日本産の種も代用される。地上部にフラボノイドのイカリインicariinなどを,地下部にアルカロイドのマ
12. エンジュ画像
世界大百科事典
若葉はゆでて食用とし,また茶の代用とした。漢方ではつぼみを槐花(かいか)(または槐米(かいべい))と呼ぶ。フラボノイド,ルチンrutinなどのほかにトリテルペノ
13. オーロン[カタカナ語]
イミダス 2018
[aurone]【化学】【植物・園芸】フラボノイド系色素の一種で,キンギョソウやダリア,コスモスなどの花に黄色をつくり出す. 2015 11
14. オーロン画像
岩波 生物学辞典
《同》ベンザルクマラノン(benzalcoumaranon).フラボノイド系植物色素で五員環へ閉環したベンゾフラン型構造をもつ分子の総称.キク科,オオバコ科,カ
15. 花冠画像
日本大百科全書
異花被花(いかひか)における花被の内輪を花冠という。普通は外輪(萼(がく))よりも大きく、アントシアン、フラボノイド、カロチノイドなどの色素を含んで赤、紫、青、
16. 化学分類
岩波 生物学辞典
菌類において化学構造を詳細に比較できる二次代謝産物を対象としている.例えば,アルカロイド,フラボノイド,ステロイド,テルペノイド,各種の配糖体,キノン類,菌類で
17. カシ画像
世界大百科事典
ガシは生食可能で,他のものは水にさらして渋を抜く。またシラカシは日本の新しい民間薬で,葉にフラボノイドflavonoid,タンニン,トリテルペノイドなどを含み,
18. カテキン
日本大百科全書
フラボノイドの一種。化学構造的には2個のベンゼン環(AおよびB環)が、3個の炭素で結ばれたもので、この3個の炭素は1個の酸素原子とともに6員環(C環)を形成して
19. カルコン
世界大百科事典
lavanoneで,フラボン,アントシアニンなどとともに,これら黄色色素化合物の総称としてフラボノイドflavonoidと呼ばれ,アセチルCoAを出発物質にして
20. カルコン[カタカナ語]
イミダス 2018
Educational Interchange の略 (2)[chalcone]【化学】【植物・園芸】フラボノイド系色素の一種で,ダリアやボタンなどの花の黄色
21. カルコン
岩波 生物学辞典
フラボノイド
22. カルコン生成酵素
岩波 生物学辞典
パノイド生合成系からフィトアレキシンやアントシアニンを合成するフラボノイド生合成系に分岐させる反応に関与し,この反応がフラボノイド生合成系の律速段階となっている
23. カロチノイド
日本大百科全書
不安定な物質である。水に不溶で、ベンジン、エーテルなど、脂肪を溶かす溶媒によく溶ける点が、同じような色をしたフラボノイド色素やベタレイン色素と異なる。天然には4
24. 柑橘類画像
世界大百科事典
含む外側のフラベドflavedoと一般に白くて軟らかいアルベドalbedoに分かれる。色素はフラボノイドよりカロチノイドが主で,量,構成により黄白,黄,橙,赤橙
25. 梘水
日本大百科全書
され、粘弾性が増し、食感をよくする。また伸展性も増す。アルカリ性になるため、小麦粉の色素(フラボノイド)は、中華麺独特の黄色に発色する。梘水は食品衛生法により食
26. カンゾウ画像
世界大百科事典
rhizin(ショ糖の150倍の甘みがある)やブドウ糖を含有していることによる。そのほかにフラボノイドflavonoidも含み,鎮咳(ちんがい),鎮痛や利尿作用
27. キンミズヒキ画像
世界大百科事典
干したものは漢方では仙鶴(せんかく)草,竜牙(りゆうが)草という。アグリモニンagrimonine,フラボノイド,タンニンなどを含む。収れん止血作用があり,あら
28. クズ画像
世界大百科事典
の繊維を採取し,葛布を織った。根はまた,漢方で重要な葛根(かつこん)とされ,デンプン,イソフラボノイド,ダイゼインdaizeinなどを含み,血行をよくし,血糖を
29. クルクミン画像
岩波 生物学辞典
など多彩な生理作用で知られ,健康食品として汎用されるが,摂取量には注意が必要.クルクミンはフラボノイドと同様にシキミ酸酢酸複合経路に由来し,Ⅲ型ポリケタイド合成
30. クワ画像
世界大百科事典
どを含み,解熱に,桑椹子は滋養,強壮,貧血,養毛に,桑白皮はトリテルペノイド,ステロイド,フラボノイドおよびクマリンを含み,消炎性利尿,鎮咳,高血圧などに用いら
31. 血管強化薬
世界大百科事典
改善することによって出血を防止する薬。ビタミンC(アスコルビン酸),アドレノクロム誘導体,フラボノイド製剤などがある。ビタミンCの欠乏が長期にわたると壊血病をお
32. ケルセチン【2019】[外来語・カタカナ語【2019】]
現代用語の基礎知識
植物中の黄色色素。ビタミンB2 になる。フラボノイド
33. コケモモ画像
世界大百科事典
ある。松井 仁 薬用 葉はウワウルシ葉の代用品である。配糖体アルブチン,トリテルペノイド,フラボノイド,タンニンなどを含み,尿道疾患の防腐,収れん,利尿薬として
34. 色素
日本大百科全書
色・赤色の色素で、色はアントシアンなどのフラボノイドとよく似ているが、ベンジン、二硫化炭素、エーテルなどの脂溶性溶媒に溶けるので、水溶性のフラボノイドと区別でき
35. 色素
世界大百科事典
タミンAとなり,視紅と呼ばれる色素タンパク質を形成し,視覚に重要な役割を担っている。(2)フラボノイドflavonoid C6-C3-C6の炭素骨格をもち,植物
36. 色素
岩波 生物学辞典
ore)と呼ぶ.生物は種々の天然色素(メラニン,ポルフィリン,クロロフィル,カロテノイド,フラボノイド,フィコビリン,アントラキノンなど)を生合成し,多様な生理
37. 止血薬
世界大百科事典
なる。(3)血管強化薬 アスコルビン酸,アドレノクロム誘導体,ルチン,ヘスペリジンその他のフラボノイドが,毛細血管の透過性を抑え脆弱(ぜいじやく)性を改善して止
38. 生薬
世界大百科事典
,タンパク質やデンプンなどの高分子,糖類,タンニン,樹脂,色素,ステロイドやテルペノイド,フラボノイドなどの比較的低分子有機化合物および各種無機成分が常成分とし
39. 植物色素
日本大百科全書
植物の色の発現に寄与する色素をいう。おもなものはクロロフィル、カロチノイド、フラボノイドの3群の色素であるが、特定の植物群にはベタレイン、キノン類の色素が含まれ
40. 樹脂画像
世界大百科事典
の8割は多糖である。ユーカリからとれるキノもその種の物質の一つだが,固形分はほかに例のないフラボノイドという物質で,性状はタンニンに近い。 発生 樹木は種々の方
41. スイカズラ画像
世界大百科事典
花は脂肪酸,フラボノイドなどを含み,単独で,あるいは他の生薬と配合して,解熱,解毒薬として流行性感冒,おできなどに,また黒焼きは止血薬とする。忍冬はタンニン,サ
42. センナ
世界大百科事典
や便秘に用いる。センナ葉はアントラキノイド,センノサイドA,B,C,D,クリソファノール,フラボノイドなどを含む。 ほかにハネセンナC.alata L.,ハナセ
43. センブリ画像
世界大百科事典
いのでセンブリ(千振)の和名がある。苦味配糖体スウェルチアマリンswertiamarin,フラボノイドを含み,苦味健胃薬として消化不良,食欲不振などの家庭薬の原
44. ダイダイ画像
世界大百科事典
彬雄 薬用 ダイダイの成熟果皮を橙皮という。精油を含み,その成分はd-リモネンで,そのほかにフラボノイド,ヘスペリジン,ジテルペノイド,リモニン(苦味質)が含有
45. 電子伝達系阻害剤
日本大百科全書
れる部位)に結合することにより、電子伝達系の電子の流れを遮断することと、植物体内に含まれるフラボノイド類がオルタネーティブオキシダーゼの誘導を行うことおよび直接
46. ノビレチン【2019】[外来語・カタカナ語【2019】]
現代用語の基礎知識
柑橘類に含まれるフラボノイドの一種。血糖値や血圧の上昇抑制作用がある。
47. ハマギク画像
世界大百科事典
。小山 博滋 薬用 シマカンギクの頭状花を菊花(きくか)という。モノテルペン(香気成分),フラボノイド,コリン,糖類を含む。他の生薬と配合して,頭痛,感冒,発熱
48. ビタミン画像
日本大百科全書
、ビタミンB13(オロト酸)、ビタミンBX(パラアミノ安息香酸)、ビタミンP(ルチンなどのフラボノイド)、ビタミンU(塩化メチルメチオニンスルホニウム)などが含
49. ピチログラマ
世界大百科事典
argentea Mett.(英名silverback fern)等がよく知られる。いずれの種も,葉裏にフラボノイド系の分泌物である粉をもち,その粉の色が多彩で
50. フィトケミカル
日本大百科全書
橙(だいだい)色のニンジンやカボチャに含まれるプロビタミンA(癌予防)、黄色のタマネギやレモン、バナナなどのフラボノイド(高血圧予防)、紫色のナスやブルーベリー
「フラボノイド」の情報だけではなく、「フラボノイド」に関するさまざまな情報も同時に調べることができるため、幅広い視点から知ることができます。
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