私とパソコン(いや、当時はマイコンでした)との付き合いは非常に長く、秋葉原に「Bit-INN(ビットイン)」というNECのサービスセンターが開設された1976年にまで遡ります。当時、すでにマンガ家として活動しており、昔から好きだったアマチュア無線や機械いじりの延長線上で始めたのがきっかけです。
1985年になると、日本でも「パソコン通信」というものが注目され始めました。自分は、やはり当時熱中していた海外のカーレース情報が少しでも知りたいという一心で、アメリカのThe Sourceというパソコン通信ネットワークに無謀にも加入してしまいました。英語も含めて、ほとんど独学、手さぐり状態でしたが、そのうちに日本でもniftyなどのネットワークサービスが確立されてきました。
というわけで、この30年間のパソコンとインターネットの発達というものを肌で体感してきたという次第です。
その中でも、当時すでに海外で始まっていた辞書サービスや新聞記事検索などのデータベースは、更新性も早く、いずれは書物に取って代わる存在になるのでは、という予感はしておりました。
実は、私は現在、小説やマンガ執筆の傍ら、早稲田大学の人間科学部eスクールで勉学に励んでおります。なぜか?
最近、少子化の影響か、大学などで、若い方々を集めるために、マンガやアニメ、ゲームなどのコンテンツビジネスを講義にした学科が増えているのです。その講師の依頼が舞い込むことも多くなりました。
私自身は、学習マンガや入門書などを執筆したことはありますが、人様に授業をするなんて経験はありません。そこで、どうせやるなら、エンタテイメントというものの教え方を自分の中できちんとセオリー化しておかなければ、教える相手に対しても失礼だろうと思ったわけです。
その勉強をするために見つけたのが、人間科学部だったのです。4月から4年生(2008年3月現在)で、教育工学系のゼミを中心にいろいろ学んでおります。「教える」ということを科学的に分析していく学問ですので、認知心理学の要素なども多分に含んでいます。マンガは視覚の文化ですから非常に勉強になりますね。
授業では、レポートの提出も多いですし、来年は卒業論文も控えております。そんな中で心強い味方が「ジャパンナレッジ」なのです。
早稲田大学には、学生のための「早稲田ネットポータル」というサイトがあり、その中の学術総合検索には、各種のデータベースがズラリと揃っております。その中で見つけたのが、「ジャパンナレッジ」でした。
ご存知のこととは思いますが、レポートや論文は、典拠がしっかりしていなければなりません。その点、「ジャパンナレッジ」は辞書や事典の出典がはっきりしていますので安心です。
さらに複数の情報ソースから調べられる「ワンルック」は重宝しています。教育工学自体が、比較的新しい学問なので、カタカナ語がぞろぞろ出てくるのですが、最新の辞典情報はもちろん、英英辞典で語源までさかのぼって調べられるので、全く基礎の無い人間にとってはありがたい限りです(欲を言えば、もう少し用例が多くなっていただければ、さらに重宝するのですが……)。
レポートの一例を挙げますと、考古学の授業で「玉川上水」を題材にしたことがありました。
玉川上水は、江戸時代の飲料水用水路なのですが、資料調査だけでは飽き足らず、そのゆかりの地を実際に散策することにしてみました。やはり物書きの端くれとしては、実地取材して距離感や位置関係をも体感しておきたいわけです。
その際に、「江戸明治東京重ね地図」は役に立ちました。江戸の街の特定の場所が、現在のどの位置になるのか、透かしを用いて正確に把握できるので非常に便利です。
それなりの手間をかけて作ったレポートですので、得意になって提出いたしました。ところが、考古学の先生が、江戸時代の専門家で、実際に上水の遺構の発掘までされた方だったというのを後で知りました。ちょっと恥ずかしいオチまで付きましたので、とても印象に残っております。
悪戦苦闘の学生生活なのですが、卒業しても、お世話になった「ジャパンナレッジ」は、ぜひ個人的に利用したいと思っています。