生徒が自らテーマを発見し、その問題を解決する能力の育成、それが高等学校、そして全ての教育の場に今、求められている。そのためには、教科の枠のない「学術、学問」といった、生徒から考えると「大きな世界」から情報収集を行っていくことが必需となる。
本年度は日本史で「明治・大正・昭和、日本の戦争の歴史」についての研究が2年生への1年間の課題レポートとなった。広範囲で研究に値する多くの項目が考えられる課題である。まず、生徒はこの課題で考えられる範疇から、自身が最も心惹かれる研究項目、つまり研究テーマを見つけ出さなければならず、その足は図書館に自ずと向かったようだ。
ほとんどの日本の図書館は日本十進分類法(NDC)で文献が排架されている。図書館の本には、日本文学なら「910」といった数字がラベルに書かれている。「0」類は総記に当たり、生徒は「明治・大正・昭和、日本の戦争の歴史」について、この書架にある辞書・事典から基礎知識を得た後、研究テーマを決定していく。本校図書館では総記については印刷メディアを、約3000冊所蔵している。電子メディアは、「JapanKnowledge」(以下JK)を採用している。JKは図書館にオープンスペースとなって隣接しているPC室のコンピュータすべてから利用できるため、例えば「与謝野晶子」を調べるといった場合にも印刷メディアの百科事典の「よ」に生徒が殺到することはない。JKの内容は毎月1回更新されるため、もし「与謝野晶子」について新発見が発表されれば、すぐに反映される。つまり、最新で信頼できる代表的な日本の辞書・事典を複本所蔵しているのである。生徒は情報科の授業で、印刷メディアと電子メディアの相違、Webサイトの信憑性、オンラインデータベースの信頼性をよく理解をしており、JKを駆使して課題をクリアしていく。
「研究レポート作成計画書」には(1)必ず図書館、資料館・博物館へ出かけ、テーマに関わる参考文献を2冊以上挙げる、(2)テーマ設定の理由を具体的に記す、(3)調査計画の立案、(4)辞書・事典、地図、文献からの引用、活用を行う際は出典を明記、(5)設定したテーマを分析し、どのような結論が得られるか予想する、とある。この(1)についてはJKの検索スペースに百科事典の項目執筆者の氏名を入力し、書籍の検索を行うことが盛んだ。「日本中の本屋さんが掌の中」と思わずつぶやいた生徒もいる。ほとんどの項目にある関連サイトの紹介から信頼性があるWebサイトにアクセスし、課題提出の辛さの中に大正琴のサウンドを楽しんでいる光景も見られた。
このような経験を活かし、次は与えられた課題ではなく、「自分が自分を育てる」ために活用する姿が見られることを期待している日々である。
(文責:専修大学附属高等学校 学校図書館司書教諭 齋藤康江)