本書の初版が刊行されたのは 1999 年であり, ほぼ 10 年を経ております. その間, 利用者から評価の声に加えて, 不足や欠点のご指摘をいただきました. それらのことも踏まえて改定版の編集を企画しました. その際, 単に訂正や追加にとどめず, 初版に含まれなかった用語や語彙をできるだけ多く取り入れることにしましたが, その際, 他の類書で扱われているものだけでなく, 新しい用語の取り入れにも努めることにしました. しかし, 初版で目指した編集方針はそのまま踏襲されることになりました. すなわち, 専門用語に加えて, 医療現場で使用されている口語・俗語・略語などを多く採用し, 訳語に簡明でわかり易い解説を付け, 専門家のみならず, 一般英語読者の利便を図ることであります. また, 編集者および編集協力者も初版に引き続いて東北大学の関係者が中心になりましたが, 皆が元東北大学総長石田名香雄先生の謦咳に接して蝟集したものです.
近年の医学・医療や関連諸科学の進歩・発展は目覚ましく, それに伴い, 疾病の原因, 診断, 病態, 治療, 予防などに関する新しい事実や事象を記述する用語・術語が日増しに増加しています. この現実を踏まえ, 出来るだけ多く新規の用語を取り入れることにしましたが, 専門性の高いものについては及ばぬところが少なくないことは否めないと思います. しかし, 今度の版に収録した用語・術語あるいは物質名の見出しの数は 13 万余りで, 初版のそれの約 8 割増になっており, 本改訂版の所期の目的は達成できたのではないかと自認しております. 各見出しの用語等について簡潔な解説をつけましたが, 大掴みの理解の便を図るもので, 完結的な説明でないことをお断りしなければなりません. また, 編集にあたり, 内外で刊行されている多くの関連の辞典や用語集, あるいは専門教科書などを広く参照させていただいたことを記します.
編集者については上記しましたが, 初版以来編集に一緒に関わっておりました橋本保彦先生がこの版の完成前に逝去されたことは残念でなりません. ご冥福を祈ります.
最後に, 本書発行の企画を積極的に推進された池上勝之前社長, 関戸雅男社長に敬意と謝意を表します. また, 資料の収集, 整理ならびに校正にご尽力された辞書編集部の皆さんにお礼申しあげます.