本辞典は、平成五年に初版が刊行され、平成一二年に第2版、平成一八年に第3版、平成二四年に第4版と改訂を重ねてきました。最後の改訂から八年が経過し、この間、民法(債権関係、相続関係等)や刑事訴訟法といった基本法分野での大幅な法改正や、いわゆる平和安全法制の整備(自衛隊法の改正等)をはじめとする各法分野での重要な法改正があり、また、天皇の退位等に関する皇室典範特例法、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(いわゆるマイナンバー法)、行政不服審査法、特定秘密の保護に関する法律等といった新たな法律の制定がされるなどしたことから、本辞典の内容をアップ・トゥ・デートなものとするため、第5版を刊行することとしました。
この度の改訂では、令和二年一月一日を基準日とし、基準日までに公布された法令(必要に応じて基準日後に公布されたものも含む)を前提として、用語の説明内容や引用条文等に必要な修正を加えるとともに、新たに約六〇〇項目を加え、また、既存項目の要否を改めて検討して約三〇〇項目(個々の独立行政法人の項目等)を削除するなどした結果、総項目数は約一万四一〇〇となっています。
改訂に当たっては、これまでと同様に、各項目について、極力、平明簡潔に正確な説明を行うように心懸けました。この第5版についても、引き続き、法律関係の業務に携わる実務家や、大学、法科大学院等で法律を学ぶ学生の方々、更には法令用語に触れることのある一般の方々にも広く役立つものとなることを願っています。
有斐閣の方から法律用語の辞典を作りたいという話が持ち込まれ、この辞典の仕事に取り掛かってから、かれこれ七年余の年月がたった。
この間、語句の選定を初め、用語の説明の執筆、読みの確認、再三にわたる校正などこの辞典の作成に様々な面で参加し、余暇を犠牲にして御協力をいただいた現役及び元の当局参事官、参事官補の諸氏に対し、厚くお礼を申し上げるとともに、その努力に対し心から敬意を表したい。
また、元国立国語研究所長・林大先生には、解説文全体にわたり、貴重な御意見・御示唆を頂戴したほか、一般読者の利用の便を考慮して巻末に「漢字音訓一覧」、「関連語・類義語一覧」を作成していただくなど、多大の御協力をいただいたことに深く感謝申し上げる次第である。
この辞典の作成に当たり、当初の構想は、極めて簡単な内容のものをというものであったが、でき上がったものを見ると、項目数も一万三千語を上回るという、かなり大部の本格的なものになったように思う。
この辞典の内容については、説明を極力簡潔平明なものとし、また、できる限りアップ・ツー・デートなものとするべく努力したつもりである。しかしながら、この七年余の間には度々の法律改正も行われており、完全にその全部を追いきれているか、また、正確さにおいても説明文の長さに限界があったこと等から不備、不十分な点がないか、おそれている。読者諸賢の御叱正、御批判をまちたい。
この辞典の特色は、掲載語句の多さのほか、項目を仮名見出しで配列している点である。法律専門家の方々にはやや煩わしい面もあろうかと思われるが、一般の人々や初学の人々には、それなりに意義があるのではないかと思う。
ともあれ、ここに漸くこの辞典が刊行の運びとなったことは、編集を代表する者として、この上ない喜びであるとともに、各界各層の多数の人々のお役に立てば、執筆者一同にとっても望外の幸せである。
最後に、この辞典の編集に当たり、前内閣法制局長官総務室第一課長・眞田誠次氏、有斐閣の村岡侖衛氏の御協力と御尽力なくしては、この辞典の刊行も未だ覚つかなかったであろうと深く感謝の意を表しておきたい。
なお、法令用語研究会は、内閣法制局の職務を経験した者による私的研究会であり、この辞典の項目の解説については、各執筆者の個人的見解であることを念のため付言しておきたい。