電力が余っているところと、不足しているところが、電力を相互にやりとりすること。国境や海を越えた電力融通から、地域内でのやりとりまでさまざまな形態がある。日本では、認可法人の電力広域的運営推進機関(2015年設立)が調整・指示して、大手電力会社や新電力事業者などの電気事業者間で相互に電力を供給・売買することをさす。北海道から九州までの9電力会社(沖縄電力を除く)間でやりとりする全国融通と、隣接する電力会社間で効率運用などを目的とする2社間融通がある。全国融通には、需給相互応援融通電力(ある電力会社の突発的な故障や天候急変に対応した応援的融通)と、広域相互協力融通電力(需要が少ない深夜に大雨が降り水力発電に供給余力がある場合など、資源を有効活用して環境特性に配慮する融通)がある。大震災、酷暑、豪雪などの自然の猛威に加え、原子力発電所の停止、供給力が不安定な再生可能エネルギーの増加などで、日本では電力融通の必要性が高まっている。
電気事業法第28条は「広域的運営による電気事業の総合的かつ合理的な発達に資するように(中略)、相互に協調しなければならない」と規定しており、電力不足時に相互に電力を融通することは電力会社の責務である。しかし日本では東日本と西日本で電気の周波数が異なり、東西の電力融通には周波数変換が必要で、その変換設備の能力上限は120万キロワット(2019年時点)である。また北海道と東北を海底ケーブルで結ぶ送電設備(北本(きたほん)連系線=北海道・本州間電力連系設備)の送電能力が60万キロワットであるというように、電力会社間の送電能力にも限界がある。このため東日本大震災後の2011年(平成23)夏には、東京電力と東北電力管内で企業の電力使用を強制制限する電力使用制限令を発動したにもかかわらず、電気が余っていた西日本からの電力融通には限界があった。2018年の北海道胆振(いぶり)東部地震の際にも、本州からの電力融通に限界があり、北海道は全道で停電に陥った。こうした教訓を踏まえ、各電力会社は周波数変換設備や送電線の能力増強を計画・検討している。
国家間の電力融通は、電力自由化が進んだヨーロッパで盛んに行われており、ドイツやフランスは年によって電力輸出超過国になることも輸入超過国になることもある。ロシアはサハリンからの電力輸出に意欲的で、日本に対しても海底ケーブルによる輸出構想をもっている。
2019年5月21日