地域公共交通網の維持・再編と活性化を、自治体によるまちづくりと連携して推進していくことを目的とした法律。正式名称は「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」(平成19年法律第59号)。2007年(平成19)年5月制定、同年10月施行された。少子高齢化の進展、自家用車の普及等により、バス、鉄道等の地域公共交通の維持が困難となっていることを踏まえ、地域公共交通の活性化・再生を目的に、市町村を中心とした地域関係者の連携による取組みを国が総合的に支援する。また、地域のニーズに適した新たな形態の旅客運送サービスを円滑に導入するために、国が法的・財政的に支援を行う。
地域公共交通の活性化は市町村の課題であり、主体となるのは市町村である。国は事業主体となるのではなく、公共交通の改善に努力する地域を応援するという建前である。市町村が、関係する公共交通事業者、道路管理者、公安委員会、利用者等で構成する協議会での協議を経て、地域公共交通総合連携計画を作成すると、その計画に定められる事業のうち、とくに重点的に取り組むことが期待される事業(「地域公共交通特定事業」)について、国による認定制度等を設け、認定を受けた事業に対して、関係法律の特例(起債と許可の特例)による支援措置が講じられる。
特定事業としては、軌道運送高度化事業(LRT:軽量軌道交通、次世代路面電車を想定)、道路運送高度化事業(BRT:バス高速輸送システム、オムニバスタウンを想定)、海上運送高度化事業、乗継円滑化事業、鉄道の上下分離方式(公有民営方式)などによる鉄道事業再構築事業、鉄道再生事業などがあげられる。なお、オムニバスタウンとは、環境と高齢者等の交通弱者にやさしいまちづくりのためにバス等の公共交通機関の利用を促進する国の補助制度である。また、鉄道事業と道路運送事業等複数の旅客運送事業に該当し、同一の車両または船舶を用いて一貫した運送サービスを提供する事業(「新地域旅客運送事業」)について、国の認定を受けた場合は、該当する交通事業法(鉄道事業法、軌道法、道路運送法、海上運送法)に係る事業許可を一括して受けたものとみなす等、法律上の手続きの合理化を行う。
その後、人口減少や少子高齢化が加速し、ローカル鉄道など地域公共交通の経営環境は一段と厳しくなった。このため国は地域公共交通活性化法を頻繁に改正。地方自治体が将来まで残す公共交通網を明確にする「地域公共交通網形成計画」を策定し、国から財政支援を受ける制度の導入(2014)、LRTやBRTの整備に国が出資する制度の創設(2015)を行った。さらに、地域公共交通網形成計画に加えて自家用有償旅客運送(ライドシェア)やスクールバスなどを活用する「地域公共交通計画」(「地域公共交通網形成計画」を改称)の策定(2020)、ローカル鉄道の存廃などを話し合う国主導の再構築協議会の設置(2023)などを次々に打ち出し、地域公共交通の再編を促している。ローカル鉄道については、輸送密度(1日1キロメートル当りの平均輸送人数)が1000人未満の路線を存廃協議の対象とする指針も示した。しかし赤字ローカル線廃止や路線のバス転換を進めたい民間事業者と、廃線に反対する地域住民・地方自治体との対立は激しく、交通網の再編は難航している。2023年(令和5)6月末までに、全国で869の地域公共交通計画が策定されたが、国の財政支援を受ける再編・実施計画の認定件数は80にとどまる。