主としてX線およびその他の電離放射線を用いて医学的な診断・治療を行う科をいう。その診断・治療を研究する学問が放射線医学である。放射線医学は、レントゲンによるX線発見(1895)に始まる。日本の大学における最初の放射線科の開設は、1920年(大正9)、慶応義塾大学医学部に発足した理学的診療科教室であった。
放射線医学における診断としては、胸部、腹部などの単純X線画像、胃・血管の造影撮影、X線CTのほか、超音波による超音波診断、磁気共鳴画像診断(MRI)、放射線同位元素(ラジオ・アイソトープ:RI)による核医学診断などがある。また、陽電子(ポジトロン)放出物質を利用するポジトロン・エミッション・トモグラフィー(PET(ペット))、核磁気共鳴CTなども開発されている。さらに、画像診断装置を用いて細いカテーテルや針等の医療器具を体内に入れて治療を行うIVR(画像下治療)では、血管造影の技術を応用した血管成形術、腫瘍塞栓(しゅようそくせん)法、ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法、凍結療法なども行われている。放射線を用いた治療ではリニア・アクセレレーター(線形加速器)や密封小線源からのX線、電子線、γ(ガンマ)線による病巣への照射が行われる。このほか、陽子や重イオンなどの粒子線治療、中性子捕捉(ほそく)療法などがある。放射性同位元素による治療は、RI内用療法とよばれ、長らく甲状腺がんに対するヨウ素131治療が行われてきたが、最近では分子生物学の進歩により、α(アルファ)線、β(ベータ)線を発生する複数のRIを利用できるようになった。この治療では治療(therapeutics)と診断(diagnostics)を同時に行えるため、セラノスティクス(theranostics)とよばれる。
このように、放射線医学は科学の進歩とともに拡大される傾向にあり、最近では、画像診断部門と腫瘍治療部門とに分けられ、それぞれ画像診断科、放射線治療(腫瘍)科とよばれることも多い。