国土交通省の外局の一つで(国土交通省設置法41条2項)、1948年(昭和23)に海上保安庁法(昭和23年法律第28号)に基づき設置された(海上保安庁法1条1項)。「海上において、人命及び財産を保護し、並びに法律の違反を予防し、捜査し、及び鎮圧する」目的のために設置された行政機関であり、海上における警察活動を行う執行機関である。
海上保安庁の長は、海上保安庁長官である(海上保安庁法10条1項)。同長官は国土交通大臣の指揮監督を受けるが、海上保安庁が同大臣以外の大臣の所管に属する事務を担当する場合には、当該大臣の指揮監督を受けることになる(同法10条2項)。
海上保安庁の内部部局として、総務部、装備技術部、警備救難部、海洋情報部、交通部が置かれている。施設等機関として海上保安大学校(国土交通省組織令255条)と海上保安学校(同令256条)が設置されている。地方支分部局として、第1から第11までの管区海上保安本部が設置されている(同令258条)。
海上保安庁の活動範囲は「海上」である(海上保安庁法1条1項)。海上保安庁法の制定当初は、海上保安庁の活動範囲は「港、湾、海峡その他の日本国の沿岸水域」とされていたが、公海において職務を執行することができることを明確にするために改正され、現行法の通りとされている。
海上保安庁の任務は「海上の安全及び治安の確保」(同法2条1項)であり、その事務は、法令の海上における励行、海難救助、海洋汚染等の防止、船舶交通に関する規制、海上における犯罪の予防・鎮圧、犯人の捜査・逮捕、水路の測量・水路図誌の調製、灯台などの航路標識に関する事務である(同法5条)。
海上保安庁に海上保安官と海上保安官補が置かれている(同法14条1項)。海上保安官と海上保安官補は警察活動を行うのみならず、刑事訴訟法の規定に基づく司法警察職員としての職務も担当する(同法31条)。ソマリア沖・アデン湾における海賊対策として、自衛隊の護衛艦が2009年(平成21)から派遣されているが、自衛隊は司法警察活動を行えないため、逮捕、取調べなどの司法警察活動が行われることを想定して、海上保安官が護衛艦に同乗している。海上保安庁による法令の励行の事務は、海上保安庁が所管する法令以外に、ほかの行政機関が所管する法令の励行の事務も担当するため、その場合には海上保安官は、海上保安庁の所管ではない法令の執行の事務を担当する行政官庁の当該官吏とみなされる(同法15条)。
海上保安庁法は、この法律のいかなる規定も海上保安庁とその職員が軍隊として組織され、訓練され、軍隊の機能を営むものと解釈することを禁止している(同法25条)。したがって、内閣総理大臣は、自衛隊に対して防衛出動(自衛隊法76条1項1号)や治安出動(同法78条1項)を命じた場合に、「特別の必要があると認めるときは」、海上保安庁を防衛大臣の統制下に入れることができるが、その場合であっても、海上保安庁の活動は、海上保安庁法の任務と所掌事務の範囲に限定される。