日本国憲法第8章の地方自治条項に基づいて定められた法律(昭和22年法律第67号)。地方公共団体の区分、組織および運営に関する基本的事項を定めており、日本の地方自治法制のもっとも基本的な法律である。憲法付属法律の一つとして日本国憲法と同日に施行された。それまでの明治憲法下では地方政治に関する規定を置かず、地方制度はもっぱら法令の定めるところに委ねていた。明治憲法下の地方制度であった、都道府県知事の官選を含む東京都制、道府県制、市制および町村制は廃止されることになった(地方自治法附則2条)。
地方自治法は、第1編総則で、地方公共団体の種類とそれが担当する事務を定めている。地方公共団体に法人格を付与したうえで、これを普通地方公共団体と特別地方公共団体に大別する。普通地方公共団体は都道府県と市町村の2種類に、特別地方公共団体を特別区、組合および財産区の3種類に区別している。普通地方公共団体は「地域における事務」と「法律又はこれに基づく政令により処理することとされた事務」を担当する。
第2編では、(1)都道府県・市町村の境界の変更・編入、市町の要件などの地方公共団体の区域、(2)住民の意義や権利(選挙権、条例の制定・改廃請求権、事務の監査請求権、議会の解散請求権)、(3)議会の条例制定権、長の規則制定権や条例等の公布手続、(4)選挙権・被選挙権の要件や直接請求の手続(条例の制定・改廃請求、議会の解散請求、長の解職請求など)、(5)議会の組織や運営、(6)地方公共団体の長の地位と権限、補助機関や委員会の設置と権限、(7)長や職員等に対する給与等の支給方法など、(8)普通地方公共団体の会計や予算、契約、財産管理、(9)公の施設の設置・管理、(10)住民監査請求手続や住民訴訟手続、(11)国の関与に関する原則や手続、国・普通地方公共団体間の紛争解決手続、(12)指定都市や中核市などの指定要件や事務配分などが規定されている。
第3編では、特別地方公共団体の特別区、組合や財産区の組織や運営に関することが規定されている。
地方自治法はその制定以来、数多くの改正が行われてきた。たとえば、1952年(昭和27)の改正では、国が地方公共団体に対して技術的な助言や勧告を行う権限の付与や団体委任事務および機関委任事務の法定化(別表に規定)、1956年の改正では、市町村を「基礎的な地方公共団体」、都道府県を「広域の地方公共団体」と規定するとともに、都道府県の事務が法定化され、1974年の改正では特別区の区長の公選制が復活することとなった。1991年(平成3)の改正では、機関委任事務に対する議会と監査委員による監査制度が導入され、職務執行命令訴訟が簡略化され、長の罷免制度も廃止されることとなった。
1999年の改正では、明治憲法下の市制・町村制以来の機関委任事務が廃止され、地方公共団体が処理する事務はすべて同団体の事務となった。国の地方公共団体への関与については、関与の必要最小限度原則、関与の法定主義、関与手続の適正化の仕組みが定められた。さらに、国・地方公共団体との紛争処理のための機関として国地方係争処理委員会が設置され、国の関与に対する不服申立て手続と訴訟手続が制度化されることとなった。
これ以降も、住民訴訟の被告を長や職員から執行機関等とすること(2002)、指定管理者制度の導入(2003)、全部事務組合、役場事務組合、地方開発事業団の廃止(2011)、国等による違法等確認訴訟制度の導入(2012)、議会が長等の損害賠償責任の一部免責を条例で定めることを認める(2017)などの改正がなされている。