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医学者ピックArnold Pick(1851―1924)が最初に報告した認知症性疾患で、この疾患の研究から発展して認知症の一疾患群をさす「前頭側頭型認知症」(frontotemporal dementia:FTD)、あるいは神経病理学的分類としての「前頭側頭葉変性症」(frontotemporal lobar degeneration:FTLD)という概念が生まれた。したがってピック病はFTDの中心に位置づけられる。
FTDは、大脳の前方にある前頭葉や側頭葉に萎縮(いしゅく)を呈し、人格変化や行動異常を特徴とする複数の認知症性疾患の総称である。ピック病の最終診断には、神経細胞内にピック球という球形や楕円(だえん)形をした封入体(異常物質が集積した構造物)が認められる必要がある。しかし、ピック球はFTDに属するすべての疾患にみられるわけではない。脳内に蓄積している異常タンパクに対応して、FTDはいくつかの原因疾患に分類される。なおピック病は指定難病医療費助成制度の対象である「前頭側頭葉変性症(行動異常型前頭側頭型認知症)」にほぼ相当する(助成の対象となる)。