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モウセンゴケ科(APG分類:モウセンゴケ科)の多年草。池沼などの水面下に漂う水生食虫植物で、根はない。茎は長さ10~25センチメートル、多少分枝し、節間は5~10ミリメートル。葉は節に4~9枚輪生し、柄はくさび形、上端に数個の剛毛状突起がある。葉身は二枚貝状に開閉し、小虫が入ると閉じて消化する。冬季は枝先に葉が球状に密集した越冬芽を形成し、水底に沈んで越年する。日本では7~8月、葉腋(ようえき)から柄を出し、水上に淡緑白色の花を1個開く。萼片(がくへん)、花弁はともに5枚。雄しべは5本。雌しべは1個で5本の花柱があり、その先は細かく裂ける。花は半日でしぼみ、花期後、柄が水中に潜り、卵円形で黒色の種子ができる。ユーラシア、オーストラリア、アフリカ大陸に分布するが、多くは絶滅の危機に瀕(ひん)しており、国際自然保護連合(IUCN)のレッド・リストでは絶滅危惧種(EN)に指定されている。
日本では、1890年(明治23)に牧野富太郎が現在の東京都江戸川区の江戸川河畔において初めて発見した。その後に本州で点々と自生地が確認されたが、ほとんどの地域で絶滅し、現在は、埼玉県、奈良県、石川県に個体群が存在するのみである。環境省レッド・リストの絶滅危惧種ⅠA類(CR)。埼玉県羽生(はにゅう)市宝蔵寺沼のものは国の天然記念物で、継続的な保全活動が行われている。名は、全草を狢(むじな)の尾に例えたもの。