妊娠22週以降37週未満で分娩(ぶんべん)に至ること。日本の全出生の5~6%を占める。妊娠22週未満での分娩は「流産」、妊娠37週以降42週未満での分娩は「正期産」である。流産との境界となる妊娠22週は、児(じ)が母体外で生育可能な限界を根拠として定められ(別項「流産」を参照)、正期産との境界の妊娠37週は、胎児が十分に成熟し、母体外で呼吸補助などの治療を要しない状態の目安である。早産の期間をさらに分け、妊娠32週未満のものを「極早産」、妊娠28週未満のものを「超早産」とよぶこともある。早産で生まれた児は「早産児」という。新生児に対しては生下時体重による定義も存在し、生下時に2500グラム未満の児を「低出生体重児」、1500グラム未満の児を「極低出生体重児」、1000グラム未満の児を「超低出生体重児」という。低出生体重児と早産児とはかならずしも一致するわけではない。
早産とみなされる妊娠齢の時期に、分娩に進行する所見や症状を呈しているものの、いまだ早産に至っていないものを「切迫早産」という。切迫早産の診断は、陣痛に至るような子宮収縮があることや、子宮口開大、子宮頸管(けいかん)熟化の進行、性器出血、破水など分娩進行の徴候がみられることにより下される。
感染に由来する絨毛膜(じゅうもうまく)羊膜炎などの炎症、多胎妊娠や羊水過多、子宮筋腫(きんしゅ)などによる子宮内圧の上昇、子宮頸管無力症など、子宮自体の器質的(きしつてき)疾患や、妊娠高血圧症候群(旧、妊娠中毒症)やさまざまな母体合併症など、母体の全身にかかわる妊娠中の異常が早産の原因となりうる。
切迫早産の段階で、安静を保ったうえで子宮収縮抑制剤の使用、明らかな炎症を有するものに対する抗菌薬の使用により分娩の進行を止めて、早産に至らないようにする。多胎妊娠や、過去に早産や切迫早産の既往のある妊婦は早産になりやすいので、とくに注意が必要である。
回避に努めたにもかかわらず早産に至った場合には、新生児への治療が主体となる。新生児に対する治療は出産時の妊娠齢により大きく異なる。超早産、なかでも妊娠22~24週で出生した超低出生体重児に対しては、新生児集中治療室(neonatal intensive care unit:NICU)内で保育器に収容して、人工呼吸器の装着、輸液と経管栄養を行うなど集中管理が必要となる例が多いのに対し、正期産に近い早産児は正期産児と発育に差がないことも多い。したがって、正期産に近い時期の切迫早産に対しては、あえて早産回避の処置を行わないことも少なくない。