頭部を保護する帽子の一種。紀元前2600年ごろにメソポタミア南部でシュメール人兵士が頭部を保護する帽子をかぶっていたという記録がある。11世紀ごろのヨーロッパの騎士のヘルメットは頭や顔全体を覆う金属製で、緩衝材などの内装がないために衝撃が直接頭蓋骨(とうがいこつ)に伝わった。それに対して日本の兜(かぶと)は、革製の内張りが緩衝の役目を果たしていた点で優れている。第一次世界大戦の塹壕(ざんごう)戦で、兵士の頭を弾丸から保護するために鉄兜が発達し、第二次世界大戦でも役だった。戦後は、プラスチックや合成材料の導入により軽量化され、耐衝撃性も高まって安全性が向上し、産業用として普及した。さらにオートバイ用、自転車用、野球用など、さまざまなヘルメットがつくられるようになった。構造はいずれもおもにプラスチック製の帽体、着装体(ハンモック)などからなるが、産業用、オートバイ用、自転車用などはさらに帽体内に発泡スチロール製の衝撃吸収ライナーがあり、あご紐(ひも)を装備している。これらのヘルメットの場合、頭部への打撃、つまり衝撃エネルギーは、帽体がへこんだり、さらにライナーの独立気泡が圧潰(あっかい)、復原したりすることにより吸収されて軽減する仕組みとなっている。産業用は労働安全衛生規則によって定められている場所での着用が義務づけられており、オートバイ用も道路交通法により着用が義務化されている。2023年(令和5)には、自転車や特定小型原動機付自転車に乗る際の着用が努力義務化され、普及の段階にある。
また近年、斜頭症など頭蓋形状矯正のためにヘルメットを装着している乳児を散見するが、このヘルメットは衝撃を緩和するなど頭部の保護を目的にしたものではない。結果として頭部が保護される可能性はあるが、あくまでも矯正用の医療器具であり、本来のヘルメットの用途とは異なることに注意を要する。