広義には消費という事実に対して課される税であり、直接消費税と間接消費税とに分けられる。直接消費税は消費者に直接課される税であり、間接消費税は直接的には消費者以外の経済主体に課税されるが、転嫁過程を通じて最終的には消費者により負担されると考えられる税である。
直接消費税は、さらに個別消費税と総合消費税とに分けられる。個別消費税とは個別の財やサービスの消費に対して課される税である。総合消費税は納税者の1年間の消費総額を課税標準として課される税であり、所得税が所得を課税標準とするのに対して、総合消費税の場合には課税標準が所得から貯蓄を控除した消費額である点が異なるだけである。所得税と同じく人税であり、各納税者の担税力に合った課税が可能である。
間接消費税には、内国消費税と関税とがある。内国消費税は、財やサービスの価格の一部として税が含まれることが多いことから、納税者の抵抗が少なく、古くから利用されてきた。生産課税、流通課税、特許課税、専売課税などの形態をとる。
日本の消費税は、1989年度(平成1)に実施された税制改革において3%の税率で創設された。消費対象となる財・サービスの売上高に対して多段階で課税される税であり、税の累積を排除する観点から仕入税額控除制度が設けられており、売上げにかかわる消費税額から仕入れにかかわる消費税額を控除した金額を納付する。このことは、売上高から中間財の価値を控除して計算される付加価値を課税標準とする税と同じことであり、租税論で消費型の付加価値税として分類される。税の徴収は多段階において行われるが、税の前方への転嫁を通して最終的には消費者が負担するものと想定されている。納税義務者は国内取引においては事業者であり、輸入取引においては輸入者である。課税標準はそれぞれ事業者が行った資産の譲渡等の対価と、保税地域から引き取られる外国貨物の引取価額である。事業者が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、輸出として行われる資産の譲渡または貸付は免税であり、国境を越えた時点で輸出国の税は消滅し、輸入国の国内製品と同様の扱いを受けることになる。
消費税は1997年(平成9)4月1日よりかなり大幅な改正をみた。従来は基準期間(前々年または前々事業年度)の課税売上高(税抜き)が3000万円以下の事業者は、納税義務が免除されたが、資本金または出資金が1000万円以上の新設法人の設立当初の2年間については、納税義務を免除しないように改正された。税率は従来の3%から4%に引き上げられ、さらに1997年度から地方消費税が新たに導入されたが、その税率は消費税額に対して25%であるから消費税の課税標準に対しては1%の税率に対応し、両税をあわせると5%の税率となる。前段階からの仕入額にかかわる税額控除の適用の要件として以前は帳簿または請求書等(インボイス)のどちらかの保存が義務づけられていたが、帳簿および請求書等の保存が義務づけられるようになり、帳簿方式からインボイス方式へ移行した。
特例措置として簡易課税制度が存在し、課税期間について選択により、売上げにかかわる消費税額にみなし仕入率を乗じた金額を仕入れにかかわる消費税額とすることができるが、この制度の適用上限額が課税売上高4億円から2億円に引き下げられた。みなし仕入れ率は第1種事業(卸売業)90%、第2種事業(小売業)80%、第3種事業(製造業)70%、第4種事業(その他の事業)60%、第5種事業(サービス業等)は50%となっている。また従来は限界控除制度が存在し、課税期間の課税売上高が5000万円未満の場合には税額を控除することにより、小規模納税者の負担緩和が図られていたが、この制度は廃止された。
消費税は一般税であり、基本的にはすべての資産の譲渡等に課税されるのが原則であるが、土地の譲渡および貸付のように消費に負担を求める税としての性質上課税対象とならないものや、医療保険法上の医療のように社会政策的配慮に基づいて課税されない非課税扱いの資産譲渡も存在する。税率が高くなると、この税の短所とされる負担の逆進性を緩和するために、社会政策的配慮に基づいた非課税や軽減税率適用対象が増加する傾向がある。
2012年(平成24)、国会で消費増税法(「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律」平成24年法律第68号)が成立した(その後2014年、2016年など相次ぎ改正)。同法に基づき、医療、介護などの社会保障財源を確保するため、消費税率を2014年4月に8%(うち地方消費税率1.7%)へ、2019年10月に10%(同2.2%)へ引き上げた。10%への引上げと同時に日本初の軽減税率を導入。対象は飲食料品(酒類・外食を除く)と新聞(週2回以上発行の定期購読契約新聞)で、両品目の消費税率は8%に据え置かれた。これにより複数税率が併存するため、事業者の納税額を正確に把握する適格請求書等保存方式が2023年(令和5)10月から導入された。ただし適格請求書導入は事業者の経理処理を煩雑にするため、中小・零細事業者にとって負担の軽い事業者免税点制度や簡易課税制度も引き続き利用可能とした。
消費増税法は当初、2015年10月に消費税率を10%に引き上げると明記していた。しかし消費増税法には景気条項(2014年改正で削除)があり、2011~2020年度平均で「名目3%程度、実質2%程度」という経済成長率を目ざす取り組みを求めており、2014年11月に首相の安倍晋三(あべしんぞう)は同条項に基づき、引上げ時期を2017年4月に延期し、衆議院を解散した。さらに参議院選挙を控えた2016年6月に、安倍は「世界経済は大きなリスクに直面している」として、引上げ時期を2019年10月に再延期した。
消費税率の引上げに伴い、消費者が支払った消費税が国や地方公共団体に納められず、中小事業者の手元に残る「益税」への批判が強まっている。この批判にこたえるため、政府は益税縮小策を種々講じている。しかし、適格請求書の導入以降も、中小・零細事業者が事業者免税点制度や簡易課税制度を利用することによって益税を得られるという問題が残っており、徴税を確実にするため政府は2029年10月までの経過措置を設けながら、適格請求書の利用への転換を促している。