気象庁の地方組織で、航空機や航空路の安全運航のため航空気象に関する各種業務を行う。東京、成田、中部、関西、福岡の5航空地方気象台があり、それぞれ羽田、成田、中部、関西の各国際空港と福岡空港に配置されている。地方気象台と同等に扱われ、東京、大阪、福岡の各管区気象台の下の組織である。業務内容としては、「航空機の運航の安全性・定時性・経済性の確保に資するため必要な飛行場の気象観測、各種予報」「航空機の運航への悪影響および空港施設等に被害をもたらすおそれのある気象現象に関する気象警報・情報の発表」「気象実況・予報等に関する解説」などがある。
航空地方気象台で観測する気象要素は、風(風向、風速)、視程(大気の混濁の程度。肉眼で目標物を見分けられる最大の距離)、滑走路視距離、大気現象(雨、雪、霧、雷電、竜巻など)、雲(雲量・雲形・雲底の高さ)、気温(日最高・最低気温など)、露点温度、気圧(飛行場現地気圧、飛行場の標高から3メートルの高さに換算した気圧)、降水の量・強度、積雪または降雪の深さの10種類。これらを目視、あるいは自動化された観測機器を用いて観測する。具体的には、2分間および10分間平均風向・風速、最大・最小瞬間風速、風向の変動幅(測器:風車型風向風速計)、飛行場周辺の風向およびウィンドシアー(風の急変域)を含む大気現象(目視または測器:空港気象ドップラーレーダー、空港気象ドップラーライダー、雷監視システムなど)、視程(目視または測器:視程計)、滑走路視距離(測器:滑走路視距離観測装置)、気温・湿度(測器:電気式温度計、電気式湿度計または通風型乾湿計)、雲層別の雲量・雲形・雲底までの高さ(目視または測器:シーロメーター)、気圧(測器:電気式気圧計または振動式気圧計)、降水量(測器:転倒枡(ます)型雨量計)、積雪または降雪の深さ(測器:積雪計、雪尺または雪板)を観測している。
また、空港を離着陸する航空機が安全に運航できるよう空港およびその周辺(空港から半径9キロメートルの範囲)を対象とした予報・警報・気象情報を提供しており、大きく気象状態が変化した場合などは、必要に応じて修正報を発表している。飛行場予報には、運航用飛行場予報(TAF)、着陸用飛行場予報(TREND)、離陸用飛行場予報(TAKE-OFF FCST)、飛行場時系列予報があり、飛行場警報には、飛行場強風警報、飛行場暴風警報、飛行場台風警報、飛行場大雨警報、飛行場大雪警報、飛行場高潮警報がある。さらに、飛行場に停留中の航空機を含む地上の航空機や空港施設に被害を及ぼすおそれがある現象(大雪、雷、ウインドシアー)について注意を喚起するため、飛行場気象情報を発表している。そのほか、空港における地上作業の安全確保や航空機の安全運航のため、雷監視システムにより検知した雷の位置、発生時刻などの情報を、航空会社などにただちに提供している。
加えて、気象実況・予報等に関する解説(ブリーフィング)では、空港を利用する航空機のパイロットや運航管理者には、航空機の大きさや飛行方式(計器飛行・有視界飛行)など、それぞれの利用者にあわせ、その目的に応じた気象解説をするほか、航空局の航空管制官や航空管制運航情報官に対しては、飛行場および進入管制区の大気の気象状態や、その変化予測等を解説している。
国内を含む世界各国の気象観測値、火山観測、天気予報、気象情報等や、各空港に設置された航空統合気象観測システム(AIMOS(アイモス))の出力する観測データや観測通報は、航空気象実況データ収集処理システム(ALIS(アリス))によって、リアルタイムで全国の空港に就航する航空会社等に提供されている。
航空地方気象台とほぼ同等の業務を行う地方組織に航空測候所がある(新千歳(ちとせ)、那覇(なは)の2か所)。また、航空地方気象台と航空測候所、および仙台管区気象台の管内の空港には、航空気象観測所や空港気象連絡室が設けられている。たとえば、東京航空地方気象台は、東京国際空港(羽田)に設置され、その下には新潟、富山、静岡、大島、能登(のと)、松本、新島(にいじま)、神津島(こうづしま)、三宅島(みやけじま)、八丈島、福井の各航空気象観測所と、百里(ひゃくり)(民間施設名は茨城空港)、小松の空港気象連絡室がある。航空気象観測所(76か所、うち8か所は業務休止中。2023年4月時点)は、気象庁から委託された民間事業者や地方公共団体が空港の気象観測や通報を行う施設で、空港気象連絡室は、防衛省等が気象観測を行う7空港(丘珠(おかだま)、三沢、百里、小松、美保(みほ)、岩国、徳島)に設置されている。