元来、投資信託は有価証券を対象とした金融商品であるが、そのスキーム(仕組み)を実物資産である不動産に適用したもの。不動産投信と略称され、英語の頭文字をとってREIT(リート)ともいう。日本においては、在来の証券投資信託が契約型であるのに対して、不動産投資信託は会社型であり、証券取引所(金融商品取引所)に上場されることで一般の株式と同様に売買が可能となるなど、投資対象資産としての不動産の欠点である流動性の乏しさを解消している。また、不動産は取引価格が高額で個人投資家には分散投資がむずかしいが、共同投資という投資信託のスキームを用いることで少額資金を集積して大きな基金(ファンド)を構築し、分散投資によるリスク管理を可能にしている。
不動産投資信託の歴史は古く、アメリカでは19世紀にすでに組織的に行われていた。それは、当時のマサチューセッツ州で不動産を投資目的で取得することが禁じられていたこと、法人税が非課税であったこと、などを背景に考えられたものである。ただし、その後の判例で不動産投資信託にも課税されるようになり、いったんは消滅している。これに対してヨーロッパにおける不動産投資信託は、1938年にスイスで誕生している。その後、オランダ(1947)、西ドイツ(1959)、フランス(1963)と広がりをみせたが、スイスでの発展がもっとも顕著であった。その理由として、世界的な不況によりスイス国内での資本市場も停滞していたなかで、投資物件としての不動産の優位性が注目された点を指摘しうる。同時に、直接的な不動産投資には多額の資金が求められるという桎梏(しっこく)があるが、その課題解決が共同出資と資金集約という投資信託の機能に期待された面もある。加えて、スイスという狭隘(きょうあい)な地理的条件(不動産の希少性)とそこに流入する豊富な海外資金の存在が不動産投資信託の普及・拡大を支援した。一方、アメリカにおいては、1960年に今日的なREIT制度につながる法的整備が進み、一定の条件を満たせば受益者に非課税措置が認められたことで、不動産投資信託が再スタートをきり、その後は曲折を経ながらも発展の道をたどっている。
不動産投資信託は、多数の投資家から集めた資金で不動産を購入し、そこから生じる賃貸料や売却益などを投資家に分配する。具体的な投資対象としては、アパートを中心として独立家屋、倉庫、店舗、事務所、ガレージなどがあげられるが、工場、別荘などは堅実性維持の思想によるリスク回避の視点から原則として除外される。不動産を保有する企業にとっては、資産の証券化を通じて資金調達の道が開かれることにもなる。
日本では、2000年(平成12)の「投資信託及び投資法人に関する法律」(略称、投資信託法)改正により、投資信託が不動産を運用対象とすることが認められ、2001年から制度化された。日本の不動産投資信託は、JAPANのJを付して「J-REIT(ジェーリート)」ともよばれる。不動産投資法人が投資証券を発行し、投資証券は証券取引所に上場されて、投資家は市場で売買を行う。購入しやすい価格水準や相対的に高い利回りが好感され、発足以来拡大基調で推移している。2023年(令和5)末時点における不動産投資信託の純資産総額は、公募形態が11兆8649億円、私募形態は3兆5380億円となっている。