民間の取り組みなどにより、生物多様性の保全が図られていると国が認定した区域。企業の森や里地里山、都市内の緑地などが対象となる。
生物多様性条約第15回締約国会議(2022)において採択された新たな世界目標「昆明(こんめい)・モントリオール生物多様性枠組」のなかに、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全するという目標(30by30目標)がある。この目標を達成するために、環境省は、既設の保護地域の拡張に加え、2023年度(令和5)から「自然共生サイト」を、保護地域内外を問わずに認定する取り組みを開始した。2024年には、おもに自然共生サイトにおける生物多様性「増進活動実施計画」の認定などを規定する「生物多様性増進活動促進法」(正式名称「地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律」令和6年法律第18号)が制定された。
民間などが環境省に申請し認定された自然共生サイトのうち、保護地域との重複を除いた区域は、OECM(Other Effective area-based Conservation Measures、保護地域以外で生物多様性保全に資する区域)として国際データベースに登録される。ここでいう保護地域とは「自然公園法」「自然環境保全法」「種の保存法」「鳥獣保護管理法」「文化財保護法」などの法律や都道府県の条令などによって指定されているものである。
自然共生サイトの認定基準としては、境界・名称(地理的に画定された区域であることや、名称が付されていることなど)、ガバナンス(区域内の土地に対する統治・活動責任者が特定されていることなど)、生物多様性の価値、活動による保全効果の4項目それぞれに関するものがある。このうち、自然共生サイトが有すべき生物多様性の価値の具体的内容は、(1)保全上重要な場に関するものとして、①公的機関によって生物多様性保全上の重要性がすでに認められている場、②原生的な自然生態系が存する場、③里地里山といった二次的な自然環境に特徴的な生態系が存する場、④生態系サービス提供の場であって、在来種を中心とした多様な動植物種からなる健全な生態系が存する場、⑤伝統工芸や伝統行事といった地域の伝統文化のために活用されている自然資源の供給の場、(2)保全上重要な生物種に関するものとして、⑥希少な動植物種が生息生育している場、あるいは生息生育している可能性が高い場、⑦分布が限定されている、特異な環境へ依存するなど、その生態に特殊性のある種が生息生育している場、または生息生育の可能性が高い場、(3)保全上重要な機能に関するものとして、⑧越冬、休息、繁殖、採餌(さいじ)、移動(渡り)など、動物の生活史にとって重要な場、⑨既存の保護地域や自然共生サイト認定区域に隣接する、もしくはそれらを接続するなど、緩衝機能や連続性・連結性を高める機能を有する場、の九つで、区域の全部または一部がいずれかの価値を有することと定められている。