イギリスとアメリカの国籍をもつ経済学・政治学者。シカゴ大学教授。民主主義や少数独裁主義などの社会制度の違いによって国家の繁栄に格差が生じることを解明した功績で、2024年のノーベル経済学賞を受賞した。ダロン・アセモグル、サイモン・ジョンソンとの共同受賞。専門は政治経済学、比較政治学、開発経済学と開発政治学などで、とくにサハラ以南のアフリカやラテンアメリカの専門家として著名である。
1960年生まれ。1982年、ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス(LSE)を卒業し、1993年にエール大学で経済学博士号(Ph.D.)を取得。メルボルン大学、カリフォルニア大学バークレー校などで教鞭(きょうべん)をとり、ハーバード大学教授を経て、2015年からシカゴ大学教授。ボリビア、コロンビア、ハイチ、コンゴ民主共和国、ナイジェリア、シエラレオネ、南アフリカなどでのフィールドワークを基本とした研究活動で知られており、ナイジェリア大学(ヌスカ)やアンデス大学(コロンビアのボゴダ)でも教鞭をとっている。ヨーロッパ諸国による植民地時代における入植者の致死率と、それぞれの植民地がその後にたどる政治経済状況の因果関係を、データ分析によって解明した、アセモグル、ジョンソンとの共同論文(2001)が注目を浴びた。また、アセモグルとの共著『国家はなぜ衰退するのか:権力・繁栄・貧困の起源』(2012年。邦訳は2013年)では、もともとは一つの町だったが、現在は北側(アメリカのアリゾナ州)と南側(メキシコのソノラ州)にフェンスで分けられた都市ノガレスを分析し、市民に幅広い権利が与えられたアメリカ側と、立法権が制限され組織的犯罪の危険にさらされるメキシコ側の制度の違いが貧富の差の要因であると説明。韓国と北朝鮮、明治維新前後の日本などの事例を引きながら、社会制度と国家の繁栄の関係性を説いている。ほかにも、アセモグルとの共著『自由の命運:国家、社会、そして狭い回廊』(2019年。邦訳は2020年)など著書多数。