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助産師
じょさんし
midwife

厚生労働大臣の免許を受けて、助産または妊婦、褥婦(じょくふ)もしくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子(保健師助産師看護師法3条)。

 助産師は、出産時の支援だけではなく、出産前から出産後までの生活全般において保健指導を行う医療専門職である。具体的には、出産前の食事や運動に関する生活指導や健康指導、母親・父親に対する産前教育、不安に対する相談等、出産時の分娩(ぶんべん)介助、出産後の母親(褥婦)の健康管理、母乳指導、退院後の生活や育児に対する相談・指導、新生児・乳児の保健指導等、多岐にわたって専門的な支援を行う。さらに出産前後の女性だけではなく、学校における性教育や健康指導、地域における思春期から更年期までの性と生殖に関する相談、命の出前講座等、あらゆる年代の女性の健康相談・保健指導も実施する。

 産婦人科医のいない「助産所(助産院)」では、助産師が自己の責任において分娩介助を行うが、これは妊婦と子どもの健康状態に問題がない「正常分娩」の場合のみである。助産師は産婦人科医と違い、投薬・麻酔や手術等の医療処置を行うことはできないため、母子の状態に異常がみられる場合や、帝王切開などの処置が必要な「異常分娩」になる場合は、必ず医師の指示のもとに分娩介助を行わなければならない。

 2022年(令和4)現在、助産師数は約3万8000人であり、就業先は病院が60.7%、診療所が23%、助産所が6.4%であり、ほとんどの助産師が病院や診療所で働いている。

[横山美樹]2025年3月18日

助産師資格とその歴史的変遷

助産師は江戸時代から「産婆」として知られ、お産の取り上げ以外にも、妊婦の世話や、新生児・産後女性の世話など女性の出産に関するさまざまな仕事を行う職業として認知されてきた。ただし、公的な資格や教育の規定は長らく存在せず、1874年(明治7)に制定された「医制」のなかに初めて産婆に関する条項が設けられた。そして1899年に「産婆規則」が公布され、そのなかで「産婆の営業は、産婆試験に合格した20歳以上の女子で、地方長官の管理する名簿に登録を受けた者である」と全国的に統一した資格として明記された。さらに同年、「産婆試験規則」「産婆名簿登録規則」が公布され、初めて全国レベルでの産婆の資質水準の統一が図られ、ほかの看護職(看護師、保健師)と比較してもっとも早く専門職として独立した活動を行っていた。

 1948年(昭和23)、保健婦助産婦看護婦法が制定され、この法律によって「産婆」から「助産婦」への改称、それまで保健婦、助産婦それぞれ独自に行われていた教育制度から、看護教育を基盤とした助産婦教育制度が定められた。さらに、それまでの都道府県登録の業務免許から国登録の免許へと改正された。その後、2001年(平成13)の法改正により、助産婦から「助産師」へと名称が変更された。

 助産師の国家試験受験資格は、看護師国家試験に合格した者または看護師国家試験の受験資格を有する者で、①文部科学大臣の指定した学校において1年以上助産に関する学科を修めた者、②都道府県知事の指定した助産師養成所を卒業した者、または③外国で助産師学校を卒業または助産師免許を取得した者で、厚生労働大臣が①または②に掲げる者と同等以上の知識および技能を有すると認めた者、である。現在、助産師教育の場は、従来の専門学校、大学に加え、大学専攻科、大学院など多様化してきている。

 なお、保健師助産師看護師法第7条には、「助産師になろうとする者は、助産師国家試験及び看護師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない」と明記されており、助産師の免許を得るためには、看護師国家試験にも合格することが条件となっている。そのため、助産師国家試験に合格したとしても看護師国家試験が不合格だった場合には、助産師の免許は得られない。

[横山美樹]2025年3月18日

助産師免許が女性のみであることについて

日本は1985年に女性差別撤廃条約を批准し、これらを契機に男性の「助産士」についても大きな議論がなされたが、助産婦の職能団体である日本助産婦会(現、日本助産師会)による、信頼関係や妊産婦の羞恥心の問題、倫理的な観点からの反対などがあった。その後、日本助産婦会も男性助産士導入に条件付賛成の見解を示したため、2000年の第150回臨時国会において、助産婦の男性導入を認める改正法案が提出された。しかし、当時の民主党などの反対を受け廃案となった。その後、2001年の保健師助産師看護師法改正において、看護婦・士から看護師へ、保健婦・士から保健師へと名称が統一されるとともに、「助産婦」も「助産師」へと変更されたが、看護師や保健師(看護師は1968年より正式に、保健師は1993年より男性も免許取得が可能となった)と異なり、助産師になれるのは「女性」に限定されたまま現在に至っている。現在、日本における医療・福祉専門職のなかで、免許が一方の性のみに限定されているのは助産師だけである。

 なお、他国においても、助産師を女性のみに限定している国がある一方、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどでは男性助産師が(おもに教育研究機関等で)活躍している。

[横山美樹]2025年3月18日

©SHOGAKUKAN Inc.

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