はしがき
今,人類が地球とともに共存していくためのキーワードは,「地球環境」「エネルギー」「新材料」である.そのいずれも化学の世界と大きくかかわっており,大学入試問題でも,この分野に関する出題が増加している.
化学は覚えることが多くて大変,実感できない量を扱う計算問題は苦手,そんなことがきっかけとなって,化学の学習に今ひとつ積極的になれず,ついには化学嫌い症候群に陥ってしまう高校生が多い.この疾病の予防薬は,授業や予習復習,受験対策で疑問に思ったことは,そのつど調べて解決し,知識として脳内の引き出しに移し変える作業である.疑問を積み重ねないことである.
本書は,日常学習と受験対策に役立つものにするために,高校化学の教科書と,最近の大学入試問題の総点検を行い,以下の編集方針のもとに制作された.
編集方針
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学習に必要十分な7,000項目余を収録
収録項目の選定にあたっては,現在採用されている教科書,最近の入試問題を精査し,日常学習と受験対策に十分な7,000項目を収録する.ことに物質名は,これらの資料に現れる物質はもとより,2 で示す周辺分野からも広く採用する.
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周辺分野の用語も採用
用語,物質名の選択に当たっては,授業の課題研究における調査や文献研究,研究レポート作成に役立つこと,また,入試の増加傾向にある生命・生活などの周辺分野を素材とした応用問題の受験対策として,知識が積み重ねられることを念頭に,ことに生化学,医学,物理学,食品学などの分野からも厳選する.
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この一冊で解決できる詳解
高校化学の疑問点はこの一冊で解決できるように,わかりやすい説明と正確な表現に心掛ける.また,酸化物や塩化物,錯体など,中心元素の同類の化合物が同一項目内で比較,整理できるように各物質に小見出しをつけて解説する.解説の裏づけとして,大学レベルまでの記述を行う項目もある.
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化学式,化学反応式を積極的に採用
物質の性質は化学式から知ることができる.特に有機化学物質は示性式や構造式に物質の性質に関する豊富な情報が示されている.例えば,複雑な分子式でも構造式に,–NH2があれば性質は塩基性,–COOHがあれば酸性,C=Cがあれば付加反応をしやすいなどである.そこで,物質名には化学式を記載し,有機化合物には原則として示性式または構造式を示し,視覚からも物質の性質が読み取れるようにする.また,化学は物質の変化を学ぶ学問であることより,化学反応式を可能な限り示す.
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このような編集方針により,化学教育に長年従事している練達の専門家,気鋭の研究者が執筆した.本書を十分に活用し,所期の目的を達成していただきたい.
旺文社