いっちょうぎり【一挺切】
読者カード 用例 2003年02月18日 公開
用例: | ○人が夜に蝋燭一個に限って、人の遺物を途に拾う、一丁限(キリ)と名づく。 |
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『慊堂日暦-天保2年11月10日の条』 1831(天保2年)年 松崎慊堂 | |
語釈: | (1)葬式の終わった夜、ろうそくを一本だけにして、それが消えるまで読経(どきょう)念仏すること。または、その行事。特に茨城県地方で行なわれる。 |
コメント:上に書きましたように、困ったことに『日本芸林叢書』版ではこの部分が省略されており、東洋文庫版から引用しました。原漢文が分りませんし、また、説明にやや不審な部分があります(「人の遺物を途に拾う」の個所)が、現在の(1)の説明「蝋燭一本分だけ念仏を唱えること」にやや似た使い方であり、また、現在は用例が挙げられておりませんので、何かの参考にと考えました。用例中の「一丁限(キリ)」の「キリ」は原本にある振り仮名だということです(本書の「凡例」参照)。
編集部:用例にできるかどうかは別途検討しなければなりませんが、語釈については、貴重な資料になると思います。「一挺切」は各地でいろいろな習俗があるようで、現行の語釈では茨城県の例を挙げていますが、ほかに忌日に老人たちを招いて行なう仏事を言ったり、新仏の家が初彼岸会に寺で式を行うことを言ったりと、多様な例があるようです。ご投稿いただいた例は、蝋燭が一本燃える間に何かをするという点で語釈と共通しており、興味深いものがありますね。
著書・作品名:慊堂日暦-天保2年11月10日の条
媒体形式:単行本
刊行年(月日):1831(天保2年)年
著者・作者:松崎慊堂
掲載ページなど:東洋文庫『慊堂日暦』、216ページ下段6行目。ただし、この個所は日本芸林叢書版では省略されています。
発行元:平凡社