君待つと わが恋ひをれば わが屋戸の 簾動かし 秋の風吹く

 強い想いを偲ばせたこの歌。万葉の女流歌人で天武天皇に嫁いだ額田王の歌で、一説に、天武天皇の兄である天智天皇に思いを寄せて詠んだものという。また、「すだれ」を意味する「簾」ということばが、日本の文献に初めて登場したとされる歌でもある。

 「すだれ」の語源には様々な説があり、最もそれらしい説は、葭(よし)や蒲(がま)を芯材とし、麻糸などで編んだものを「簀(す)」といい、これを「吊って垂らした」ところから「簀垂(すだ)れ」と呼ばれるようになった、というものだ。「すだれ」に似た、寺社仏閣で襖や障子の代わりにする「御簾(みす)」は、特別なしつらいの道具である。一方、葭や蒲を材料にした「すだれ」は、古くから庶民の生活道具として愛用されてきた歴史がある。

 京都らしい町家や長屋の夏の過ごし方は、密閉率の高い現代の住環境とはずいぶん違い、涼しく感じさせる演出があちらこちらに働いている。「すだれ」は、そんな涼感を演出する小道具としてなくてはならないものといえる。

 毎年6月に入ると、戸や窓を開け放ち、軒下には「すだれ」を吊す。2階の窓に吊っている「すだれ」は、日除けと目隠しを兼ねたもので、一年中吊ったままにしておくのが京都流儀である。また、1階の軒下に1/4丈ほどの短い「すだれ」が吊ってある。珍しいものではないが、何気なく見過ごしやすい。この丈の「すだれ」は、縁側への強い日差しを遮りつつ、外からの出入りをしやすくする。さらに、1階の縁側に座って2階を見上げたとき、上階の様子を視界から遮る機能も持っている。「すだれ」は、何気なく涼やかに、狭い住環境を機能的に活かすための便利な道具なのである。

 わずかに流通する琵琶湖産の葭でつくった「すだれ」が最高級品で、高級な料理屋や旅館などでは、京都風の風情を醸し出す小道具として珍重されている。最近は材料の入手が難しく、高価にもなったので、一般には入手しにくくなってしまった。

 

   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 政治家にルビを振れという試験が出たら、私なら「バカか」とする。

 このところの政治家どもの暴言、放言を聞いていると、「選良」という言葉が死語になったことがよくわかる。

 豊田真由子(とよた・まゆこ)議員の秘書への「このハゲ~ッ!」という絶叫を含めた悪口雑言は人間業とは思えない。もはや悪魔の領域であろう。

 稲田朋美(ともみ)防衛相の時と場所と身分をわきまえない発言には、「バカか」という言葉しか浮かばない。

 向田邦子は「バカ」という言葉が差別語になったら、自分は放送作家を辞めると言っていたが、幸いなことに永田町にはバカが氾濫しているから、安倍独裁政権下でもこの言葉は禁止しようがなかった。

 自民党議員たちの数々の暴言もあり、先日の東京都議選挙で自民党は57議席から23議席へと歴史的大敗を喫した。選挙後の安倍政権の支持率も4割を切ってしまったのである(7月4日付、朝日新聞)。

 だが、自民大敗の最大要因は、安倍首相が親しくしている「お友だち」の森友学園や加計(かけ)学園への“便宜供与”疑惑に対して、何一つ安倍が説明責任を果たさないことに、国民の怒りが爆発したからである。

 さすがに安倍首相も、これはまずいと思ったのであろう。加計学園の獣医学部新設問題で、国会の閉会中審査の実施と前川喜平(きへい)前文部科学事務次官の招致に自民党が応じた。だが、安倍首相は外遊中だから出席しないというのである。これほど国民をバカにした対応はない。

 都議選終盤、『週刊文春』(7/6号、以下『文春』)は、安倍首相の一番のお気に入りの下村博文元文科相が、文科相時代に加計学園から2年にわたり200万円の献金を受けていたことを報じた。

 下村は幹事長代行で、東京都連の会長として都議選の最高責任者でもあった。下村は早速記者会見を開き、事実無根、選挙妨害だと言ったが、青ざめた顔が、この報道がほぼ事実であることを表しているように見えた。

 『文春』砲の内容はこうだ。

 下村と加計学園が親しいのはよく知られているが、もともとは下村の妻だったという。10年以上も前から親しく、下村夫人と安倍夫人の昭恵、加計孝太郎理事長とアメリカや韓国、ミャンマーなどへよく旅行していたそうだ。

 『文春』が入手した内部文書によると、「2013年博友会(下村の後援会=筆者注)パーティ入金状況」と題され、「9月27日 学校 加計学園 1,000,000」と記されているという。

 翌年も同じ金額が記されているが、重大なのは「この献金は、博友会の政治資金収支報告書には記載されていない」ことだと『文春』は指摘している。

 政治資金規正法では20万円を超えるパーティ券の購入を受けた場合、報告書に記載しなければならない。違反すれば、5年以下の禁固または百万円以下の罰金を受ける可能性がある。

 この博友会は全国にあり、塾や学校関係者が入っており、組織的、継続的に政治活動を展開し、盛大なパーティを開いているにもかかわらず、政治団体として登録されていない。したがって政治資金規正法違反の疑いがあると、『文春』は2015年3月5日号で報じ、そう指摘していた。

 この文書は、下村事務所を仕切る金庫番・榮(さかえ)友里子が書いた「日報」だそうだ。そこには加計学園側からの様々なお願いが記載されており、下村が加計学園のために相当な便宜を図ってきたことがうかがえる。

 14年の日報に加計学園の山中一郎秘書室長(当時)がたびたび登場する。4月21日には、「加計学園 山中室長より 大臣にお繋ぎして頂いた山本順三先生と23日に会食することになりました。もし宜しければ、是非大臣もご参加下さい」

 山本は参院議員で、選挙区は愛媛県、地元事務所を獣医学部が新設される今治市に置いている。

 さらに山中室長は、岡山理科大学の件で何度も文科省へ連絡をしたが取り合ってもらえないので、面会してくれるよう陳情している。

 これにも「→事務方を通して、お願いをいたしました」とあるそうだ。

 14年の内閣改造で下村が再び文科相を続投することが決まると早速加計側から、「就任のお祝いをいたしたいと思っています。10月中で空いている日程を夜頂けますか」と言ってきて、「→取り急ぎ、10月17日にいたしました」と素早く決めて返事している。

 文科相が、特定の学校法人のトップと親しくするなど、普通の頭があればやってはいけないことがわかるはずだが、この「バカだ大学」出身の政治家には考えが及ばないようである。

 さらに『文春』によれば、多額のパーティ券を購入してもらったら収支報告書に記載しなければいけないのに、そうしないケースが多々あるという。

 『文春』は20万円以上のパーティ券を購入したとされる人たちに、支払ったかどうかの有無を聞いている。

 そうすると、記載されていない金額は3年分で約1000万円にも上るというのである。

 さすがに下村も、文科省の管轄下にある教育業界から、多額の寄付をもらうことに多少後ろめたさを感じてはいたようだ。

 「文科省の大臣として、教育業界から寄付をもらっていいものかね」と、事務所関係者に漏らしていたというのである。

 悪いと知りつつも、やめられないのをバカというのだ。

 下村が会見で語った200万円の言い訳はいかにも苦しい。

 「下村氏が文部科学相だった2013年と14年、学校法人『加計学園』(岡山市)の秘書室長から、政治資金パーティー券の費用として各100万円、計200万円を受け取ったことを明らかにした。100万円はそれぞれ、11の個人と企業から秘書室長が預かったもので、『加計学園からのものではない』とした」(朝日新聞6月29日)

 11に分けてあるから一人20万円を超えないと言いたいのだろうが、小学生だってもう少しましな言い訳を考えるはずだ。

 11人もの人たちのカネをなぜわざわざ加計学園の秘書室長が集金して持って来たのか。それも、その中に加計学園分は入っていないというのである。

 加計学園と極めて親しい文科省のトップが、在職中に獣医学部新設などの便宜を図るために、その地域の政治家たちを紹介し、自分がいなくなれば、申し送り事項として後任に託し、首相補佐官たちが文科省に圧力をかけて、強引に特区での獣医学部新設を認めさせたのである。

 安倍首相は、森友学園問題では籠池前理事長を悪者にし、国策捜査をやらせて切り抜けようとしている

 だが「腹心の友」である加計孝太郎理事長を安倍首相は切り捨てるわけにはいかない。安倍の側近である下村元文科相と加計学園とのズブズブの関係が明るみに出て、寄付やパーティ券購入金などを違法に処理していたとなれば、これ以上知らぬ存ぜぬでは国民が許さない

 下村は、『文春』報道は「東京都議選の妨害目的と受け止めざるを得ない」と批判し、文書の出先は自民党以外から都議選に立候補した元秘書が関与した可能性を指摘、偽計業務妨害などの疑いで刑事告訴を検討する意向だと会見で言った。

 その元秘書は、都民ファーストの会から出馬して当選した。当選後、自分が持ち出し流したのではないと否定している。

 下村は都議選惨敗の責任をとって都連会長を辞任したが、この重大疑惑に対してきちんとした説明ができなければ、下村を打ち砕く二の矢、三の矢が出てくることは間違いない

 この内部文書から加計学園が学校ビジネスを展開していく過程で、下村をはじめ様々な政治家たちに働きかけを行なっていたことがはっきり見て取れる。

 このまま学部新設が文科省に認められれば、その後は補助金などの形で多額の公費が投入されることになる。

 「加計学園を巡る疑惑は新たなステージに入った」(『文春』)

 下村は、小学校3年の時に交通事故で父親を亡くし、母親が下村を含め3人の子どもを育てたという。交通遺児育英会の交通遺児奨学生第1期生である。

 苦労して這い上ってきた政治家なのに、長年センセイと呼ばれることに慣れ、差し出される多額のカネに目がくらみ、自分が進むべき道を見失ってしまったのであろう。

 夏目漱石の『吾輩は猫である』にこんな言葉がある。

 「呑気と見える人々も、心の底を叩いてみると、どこか悲しい音がする」

 下村議員、自分の心の底にある子どもの頃の悲しみを思い起こし、政治家たるもの何を為すべきかをもう一度原点に返って考えたがいい。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 豊田センセイの罵声で笑い、小林麻央の早すぎる死に泣き、藤井聡太四段の快挙に沸き、都議選の自民党惨敗でわずかに溜飲を下げた日本列島であった。だが、安倍自民党への怒りは、次の総選挙まで持続させなくてはいけない。日本人は忘れっぽいから時間が経てば忘れるよと高をくくっている安倍官邸に、目にもの見せてやろうではないか。

第1位 「我、『藤井聡太』にかく敗北せり──『14歳の天才』に敗れた『14人の棋士』インタビュー」(『週刊新潮』7/6号)/「藤井四段『ここが凄い』──『100回やっても勝てない』」、敗者が語る」(『週刊文春』7/6号)
第2位 「美人代議士『金子恵美総務政務官』が公用車で保育園」(『週刊新潮』7/6号)
第3位 「都議選圧勝! 小池百合子『総理への道』」(『週刊現代』7/15号)

 第3位。『現代』は「小池圧勝」と都議選を予測したが、多くが予想したことだから威張れることではないだろう。
 小池都知事は、このムードを駆って総理へと突き進むのではないかと書いているが、あまりにも短絡的な見方である。
 もちろん、野望政治家である小池が国政を狙っていないわけはない。その証拠に、都議選の候補者応援では、自民党への悪口は言うが、安倍批判はまったくしなかった。
 政治アナリストの伊藤惇夫(あつお)の言うように、「国政で一定数の議席を確保できたら、維新ではなく自民党と連立を組む考えを持っている」のであろう。
 だが、都知事になったばかりの小池が、国政へ出るとなれば都民から大きな批判が出ることは間違いない。
 小池にとっては、都民ファーストが大勝したのは嬉しいが、国政が近くなったことを意味しない。
 実際のところ、ポスト安倍には女性ならば野田聖子あたりが有力になるのではないか。小池はそれを、内心ではコンチクショーと思いながら、押さざるを得ないことになるはずだ。
 国政は遠くにありて思うものと、今頃小池は歌っているかもしれない。

 第2位。ところで、先週、今週と『新潮』のガンバリが凄い。『文春』中吊り盗み見問題にケリがついたのだろうか。6月29日の『とくダネ!』で小倉智昭が「新潮砲」と言っていた。
 「新潮砲」が今週、狙いを定めたのは金子恵美総務大臣政務官(39)の公用車・私用疑惑。金子政務官はゲス不倫で一躍有名になった宮崎謙介元議員の妻である。
 亭主が妊娠中に浮気をしていたことを「文春砲」が報じ、妻は離婚を考えたそうだが、それを乗り越え、今は2人で生まれた1歳4か月の息子を育てているという。
 『新潮』によれば、国会が閉会した翌日の6月19日、朝9時30分、永田町の衆議員第二議員会館内にある「国会保育園」と呼ばれる東京都の認証保育園「キッズスクウェア永田町」へ、専属の運転手が運転する黒塗りのクルマが滑り込んだ。
 クルマから出てきた金子政務官は、息子を車から降ろしベビーカーに乗せて(グラビアを見るとベビーカーを押しているのは総務省の秘書官である)、保育園に連れて行き、戻ってきて霞が関へ。この日は午後2時半にも、千代田区内で母親とともに公用車に乗り込み、母親を東京駅まで送り届けている。
 翌日の朝も公用車で息子を送り、午後6時前に公用車で迎えに行っている。22日は、午後7時に公用車で子供を迎えに行き、一緒に議員宿舎へ帰宅している。
 公用車とは政務三役など要人にあてがわれるもので、当然税金が使われている。舛添要一前都知事が毎週末、別荘へ行くのに公用車を使っていたことが大きな問題になったばかりである。
 このことは国会関係者の間で「バレたらまずい」と噂になっていたようだ。『新潮』も、どうしても忙しい朝に公用車を使って子供を保育園に送るのはわかるが、彼女の場合、それが「常態化」していることに問題ありだと指摘する。
 公用車に関する窓口の会計課管理係の担当者は、「途中の保育園で子どもを降ろす? ないです。家族を乗せること自体ダメでしょう。そんな人いないと思います」とはじめ答えていたが、金子議員が実際やっていると告げると、「えーっと……。運転手の日報にはそうしたことが書かれておらず、詳細は把握していないのが実情です」と、しどろもどろ。
 金子は自分のブログで「公用車の使用につき、常に総務省の運用ルールに則ってまいりました」と、問題はない、総務省の担当者は『新潮』に出ているようなコメントはしていないと言っていた。しかし「公用車に家族を同乗させてよいのかというご批判に対し、改めて自身の行為を振り返り、真摯に受け止めたいと思います」と言い、その後、これから金子は子どもを歩いて送り届けると公表した。
 この記事については、それぐらいはいいではないか、いや、選良は公私のけじめをつけるべきだと、両論あると思う。
 子どもを保育園に入れられない、首尾よく入れても送り迎えに苦労している母親たちの多くからは「特権を利用して」と白眼視されるだろう。彼女も亭主も安倍チルドレン「魔の2回生」である。

 第1位。29(にく)らしいほど強い藤井聡太(14)四段だが、30連勝はできなかった
 安倍政権のおかげで先の見えないどんよりとした雲が覆う日本列島だから、明るい話に飛びつきたい気持ちはわかる。だが、いささか騒ぎ過ぎではないか。
 29連勝を達成した夜のNHK『ニュースウオッチ9』は、放送開始から9時40分ぐらいまで、増田康宏四段(19)との対局を生中継し、29連勝が決まった瞬間、キャスター2人がバカ騒ぎをしていた。おまけに新聞社は号外まで出したのだ。
 翌日、私が読んだのは東京新聞と朝日新聞だが、一面トップがともに藤井29連勝だった。
 私が整理部長だったらせいぜい社会面トップまでだろう。「レジャー白書2016年」によると、一度でも将棋をしたことがある人は2015年で530万人。将棋ファンの数ははるかに少ないはずだ。テレビゲーム2170万人、パチンコが1070万人と比べるとそれほど多いとは言えない。
 それはともかく、非公式だが羽生善治(はぶ・よしはる)三冠まで破っているのだから、藤井四段の強さは本物である。
 『新潮』は、彼に敗れた棋士たちに、藤井の強さについて語らせている。曰く「終盤が強い」(小林裕士七段)、「時間配分が上手くて、持ち時間を残しますから終盤にしっかりと読み込める」(所司和晴七段)、「集中力のすごさは感じました」(宮本広志五段)
 『新潮』によると、大方の棋士たちが、藤井は現段階でトップ10~20人には入る実力があると太鼓判を押しているそうだ。
 瀬川晶司五段によると、ミスをしたときは膝を叩いたり、ボソッと小さな声で「しまった!」と口に出すそうだ。中学3年生の顔が時々覗くそうだが、そこがまたいい。
 こうなると渡辺明竜王や羽生三冠に挑むのも視野に入ってくるが、その先に、今や最強といわれる人工知能(AI)といつどういう形で対戦するのかも楽しみになる。
 藤井四段は、いまのところAIとやるつもりはないと語っているが、彼の将棋にはコンピューター将棋の影響が色濃くあるといわれる。
 『文春』で40代の棋士が、自分たちの世代はソフトの判断をそのまま受け入れることに抵抗があるが、「藤井君の世代だと、ソフトが示す判断基準をそのまま受け入れる事はごく普通のことだと思う。実際、藤井将棋はコンピューターの思考が色濃く反映されていると感じます」と語っている。

 私事で申し訳ないが、私の父親は将棋が好きで、たしか素人三段か四段だったと記憶している。家には分不相応な将棋盤と駒があり、休みの日は前に坐らされ駒の動かし方から教えてもらったのは小学校低学年の頃だった。
 当時、中野に旧将棋連盟本部があったせいだろうか、升田幸三第四代名人の着物姿をときどき見かけた。私もいっぱしの将棋少年だったが、すさまじく短気な父親に、指す度に怒鳴られるため、ついには将棋盤をひっくり返し、以来、将棋とは無縁になった。
 だが、会社に入って作家の山口瞳さんから芹沢博文(せりざわ・ひろふみ)や米長邦雄(よねなが・くにお)を紹介され、親しくなり、特に芹沢九段には可愛がってもらった。彼も14歳で入門して19歳で四段となり「天才」と言われた。
 だが多才すぎた。無類のギャンブル好きで女好き。原稿を書かせたらそこら辺の作家顔負けの素敵な文章。TVタレントとしても売れっ子で、酒は底なし。
 晩年、血を吐いて入院し、医者から酒をやめないと命取りになると言われたが、ワインは酒ではないからと、シャブリを朝から飲み、箱根のホテルへ行った時はホテル中のシャブリを持って来させ、私たち数人で飲み干した。
 たしか、田中角栄に将棋を教えていたと記憶している。彼を通じて角栄インタビューを申し込んでOKをもらった。だがインタビュー直前、角栄の秘書の早坂に「俺を通してない」といわれ、実現はしなかった。
 将棋指しの世界を見せてくれた。「お前のためなら何でもやってやる」と言ってくれた芹沢九段だったが、酒で体を壊し、たしか51歳の若さで亡くなってしまった。奥さんから聞いた。死ぬ間際、彼女に「ごめんね」と言ったという。
 藤井四段の話から余談になってしまったが、米長邦雄の口癖は「兄貴たちはバカだから東大に行ったが、オレはできるから将棋指しになった」。『文春』によれば、藤井は小四のときには五十手以上の詰将棋をあっという間に解いたという。地頭(じあたま)のよさとAIからも吸収できるいい環境があるのだから、連勝はストップしたが、彼がどこまで強くなるのか、これから楽しみではある。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 ここ数年、女性のあいだで人気を集めている「コルギ」は、漢字では「骨気」と表記する美容法。従来のもののように筋肉をほぐすだけでなく、骨じたいを矯正するような施術が特徴だ。もともとはイ・ビンチョル氏が婦人科系の病気のために開発した韓国の民間療法とされ、日本では「小顔になるフェイスマッサージ」として認識されている。

 テレビでもよく紹介され、「グイグイと骨を押し込む様子がとにかく痛そう」「でも比較画像を見る限り即効性が感じられる」といった、ある種のわかりやすさがある。顔の見た目のサイズは、生まれながらの頭蓋骨によるのでどうしようもないと思われがちだが、じつはむくみによるところが大きい。コルギでは、骨を調整して血管やリンパの流れをうながすことで、頬のたるみを改善し顔の引き締めをはかっているという(ただし、メディアによっては「骨じたいを縮めている」かのごとく紹介されることもあって、それは医学的には難しいように思えるのだが……)。

 西内まりやや指原莉乃など、多くの芸能人の支持も受けており、これからもメディアで名前を聞く機会は多そうだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 現行の性犯罪に関する刑法は、明治40(1907)年に制定されたものだ。性暴力被害者は女性が圧倒的に多いが、当時は女性の社会的地位が確立されておらず、法律の制定についても女性は意見を述べることもできなかった。本来なら、時代に即して法改正を行なうべきなのに、性犯罪については法律の条文と被害の実態が乖離しているとの指摘を受けながら長く放置されてきた問題だ。

 その性犯罪を厳罰化する改正刑法が、先の通常国会で成立。約110年ぶりに抜本的に見直されることになった。改正のポイントは次の通り。

・強姦罪の名称を「強制性交等罪」に変更。女性に限定されていた被害者に男性も含め、性交類似行為も対象にする。
・強姦罪の法定刑の下限を、懲役3年から5年に引き上げる。強姦致死傷罪の下限は懲役5年から6年に引き上げる。
・強姦罪や強制わいせつ罪などは、起訴するのに被害者の告訴が必要な「親告罪」規定を削除する。
・親などの「監護者」が立場を利用して18歳未満のものに性的な行為をすれば、暴行や脅迫がなくても罰する「監護者わいせつ罪」と「監護者性交等罪」を新設する。

 このほか、同じ現場で強姦と強盗をした場合、これまではどちらが先かによって法定刑の重さが異なる傾向があったが、「無期または7年以上の懲役」に統一し、罪名も「強盗・強制性交等罪」とされる。改正刑法は7月13日に施行され、今後、性犯罪は重い罪に問われることになる。

 性犯罪の厳罰化の流れをつくったのは、性暴力の被害者、支援者グループなど4団体からなる「刑法性犯罪を変えよう!プロジェクト」だ。

 2014年に性犯罪に関する刑法改正の検討が始まったが、相変わらず性暴力の実態に即したものではなかった。被害にあった人たちは「他の犯罪に比べて法定刑が軽い」として、当事者の声を法改正に反映させるために、法制審議会に要望書を提出したり、理解を深めるための集会を開いたりしてきた。被害にあった当事者やその支援者たちが、勇気をもって声をあげてくれたおかげで、性犯罪を厳罰化する改正刑法は成立したのだ。

 だが、今国会では慣例を無視し、改正刑法より遅く国会に提出された共謀罪法を与党が優先したため、改正刑法が審議入りしたのは国会閉幕の約2週間前。参考人質疑も参議院法務委員会でしか行なわれず、十分な審議が行なわれたとは言いがたい。厳罰化されたとはいえ、多くの課題も残されている。

 強姦罪が成立するのは、被害者への「暴行や脅迫」が要件になっている。だが、必ずしも暴行や脅迫がなくても、性犯罪に遭遇するとフリーズ(凍り付き)という身体反応が出たり、関係性によって抵抗ができなかったりすることがある。そのため、要望書では暴行脅迫要件の撤廃、緩和を訴えていたが、「被害者の意思に反すると確信できなくても処罰されかねない」との反対論が多く、手つかずで残されることになった。

 また、親などの監護者が、18歳未満の者に行なった性的な行為等は、暴行や脅迫がなくても罰せられることになったが、立場の強い監護者は親や親戚などだけではない。スクールセクハラに代表されるように、親と同じような力関係については学校の教師、スポーツ指導者からの性的行為の強要も問題になっている。そのため監護者の対象を広げるように求める意見も多い。

 性的な暴力は「魂の殺人」といわれる。性暴力の本質にあるものは「支配欲」で、対象者をモノとして扱うことで自らの欲望を満たすのだ。だが、望まない性行為を強制された被害者の尊厳は著しく傷つけられる。そして、体だけではなく心にも深い傷を残し、その多くはPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症する。

 今回の改正刑法には、施行3年後の見直し規定が付則として設けられた。今回、指摘されながら、法律に盛り込まれなかった案件についても、この間に十分に審議を重ね、性犯罪が起こらない社会の実現を目指したい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 子どものランドセルの選択肢といえば、昔は黒と赤でシンプルだったものだが、現在ではすっかり様変わり。カラーやデザインが多種多様で、セミオーダーも珍しくない。メーカーの新規参入も見られ、競合も激化。人気のモデルは油断するとすぐに売り切れてしまうという時代なのだ。

 こうした状況を踏まえ、いま、ランドセルの購入時期がどんどん早まっているらしい。早ければ、我が子が年長さんになりたての頃にはもう動き始める。そして、ゴールデンウィークから夏にかけては、もう購入を終えてしまうそうだ。どれにしようか悩んでいる時間を含めて、以前よりも重たいイベントごとになっており、「婚活」「妊活」のような表現として「ラン活」とも呼ばれている。

 昨年は、高級ランドセルで知られる土屋鞄のサイトがダウンしたというトピックが話題にのぼった。7月1日の販売開始とともにアクセスが集中したことによるもので、加熱する状況が浮き彫りになった。もちろん、大手のメーカーならそこまで売り切れるほどのこともない。こだわりが強くないなら、情報に踊らされず冷静に動くのもよいだろう。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 安倍政権が2017年6月、新たな看板政策として掲げた。その狙いについて、安倍首相は「誰もが生きがいを感じ、その能力を思う存分発揮することができる、一億総活躍の日本をつくりあげていかなければならない。その本丸はあらゆる人にチャンスをつくることだ」(2017年6月19日の記者会見で)と強調した。

 日本経済の再生には、従来の「働き方改革」に加えて「人づくり」でも改革が必要との判断だ。改革の具体的な中身は、有識者会議を発足させて練り上げる方針。返済不要の給付型奨学金の拡充などが検討されている。

 要は「家庭の経済事情に関わらず、誰でも十分な高等教育まで受けることができるようにする」ということらしい。将来的には安倍首相が憲法改正の項目に掲げた「教育無償化」の実現も視野に置いているという。

 教育無償化は大いに結構。しかし、問題はその財源だ。自民党内には「教育国債」や「こども保険」などの構想があるが、「教育国債」は赤字国債にほかならず、年金保険料に上乗せして徴収する「こども保険」も国民や企業に新たな負担を強いるものだ。実現に向けてハードルは高い。

 第2次安倍政権の発足から4年半。森友学園や加計(かけ)学園の問題の対応などで、ここに来て安倍政権の内閣支持率が急落した。「人づくり革命」は文字通り看板の「付け替え」ではないか。焦りなのか、掛け声だけの「絵に描いた餅」のような感じがしてならない。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 北海道利尻町内在住の現役漁師によって結成されたHIPHOPグループのこと。メンバーは78歳のガンゼ、77歳のめんこE、91歳のコンブアッペカッチャの3人で、合計年齢は246歳……らしい。

 すでに、YouTubeでリーシリーボーイズが踊って話す短編CMとプロモーションビデオが公開されており、デビュー曲名は『ウィーアーリーシリーボーイズ』。

 インタビューシーンでは「目標は紅白歌合戦出場」と豪語。昔の武勇伝や昆布漁のとれ具合、利尻の今後など……ボーイズたちのMC(ラップ)をたっぷり堪能でき、パフォーマンスシーンは男女高校生を交えながら、HIPHOP特有の背徳感を排除したポップさを前面に押し出し、かなり完成度の高いファンキーな仕上がりとなっている。作中、さかんにリフレインされている意味不明なリリック「あぎらがす あぎらがす あぎらがすより ばふらめぐ あぎらがすより ばふらめぐ」は地元の方言で、「あぎらがす」とは「もてあます」、「ばふらめぐ」とは「バクバクする」という意味なのだそう。

 タネを明かせば、利尻町の町おこし的活動の一環で、ボーイズ(おじいちゃんたち)が見たこともない極彩色のラッパー風コスチュームを着させられ、しゃべり慣れている方言(だけ)を連呼させられ、適当にカラダを揺り動かす……そんな「どういう状況か本人がわからないまま、なんかやらされてます感」が、結果として“イイ味”をかもし出している。「下手」を逆手に取ることもできるラップという音楽の特色を最大限に活かした名(迷)作だと言えよう。

 ちなみに余談ではあるが、『ウィーアーリーシリーボーイズ』の作詞・作曲を担当するNONA REEVESの西寺郷太(にしでら・ごうた)氏は、筆者の草野球仲間(所属チームは別)でもあったりする。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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