花街・島原(下京区)の郭内で、太夫(たゆう)のことを「こったいさん」と呼ぶ。島原は豊臣秀吉が天正年間に許した日本初の花街である。この通り名の来歴も1600年前後まで遡る。当時、名高い芸妓が能狂言に夢中になって凝りすぎた。要するに「凝った」から「こったいさん」と呼ばれるようになったというわけだ。このほかに、江戸・吉原の花魁に対し、「こち(島原)の太夫さん」が縮まったものなど、語源については諸説ある。

 文楽や浄瑠璃などでも使われている「太夫」とは、芸能の最上位を表す称号である。律令制で天皇に謁見が許される正五位の身分にあり、世が世なら城持ち大名と同じ身分ということになる。芸妓の場合は唄や踊り、鳴り物などのすべてに多芸で格式が高く、抜群の教養まで備えていることを意味している。現代では不思議に思うかもしれないが、島原とは、公家や大名をもてなしてきた別格の遊女がいる場所であり、宮遊びの相手をできるだけの高い教養や技芸が遊女に求められていた。その郭内で最上位にある太夫が、いかに特別な存在であったかは想像に難くないだろう。

 かつて4月21日には、島原太夫道中が盛大に行なわれていた。太夫は脇に仕えの少女・禿(かむろ)や世話役の引舟(ひきふね)を従え、金色の打ち掛け姿でお歯黒をし、黒塗り三本歯の下駄で内八文字に弧を描くように歩いた。現在は江戸前期の島原を代表する名妓の遺徳を偲ぶ法要、吉野太夫花供養(4月中旬、常照寺)や夕霧祭(嵯峨生まれの夕霧太夫を偲ぶ。11月中旬、清涼寺)に合わせ、舞や道中が披露されている。なお、江戸・吉原の花魁道中の歩き方は外八文字であり、島原の習わしをもとに、吉原流として取り入れられたものが数多くある。


明治25年に出版された「色情克己女郎買の用心 増山守正編」の「島原太夫の道中」に掲載されている絵図。(国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」より)


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 3月27日、テレビ朝日の『報道ステーション』で古舘伊知郎と元経済産業省官僚でコメンテーターの古賀茂明氏が番組内で口論になったことが波紋を呼んでいる。

 安倍政権に批判的な発言を繰り返してきた古賀氏がこの日を最後にコメンテーター降板となったわけだが、それはテレビ朝日の早河洋(ひろし)会長や古舘プロダクションの佐藤孝会長の意向によるものであると突然、番組中に語り始めたのだ。だいたい以下のようなやり取りがあった。

古賀 ちょっとその話をする前に。わたし、今日が最後ということで、テレビ朝日の早河(洋)会長とか、あるいは(制作協力している)古舘プロダクションの佐藤(孝)会長のご意向でですね、わたしはこれが最後ということなんです。
これまで非常に多くの方から激励を受けまして。で一方で、菅(義偉)官房長官をはじめですね、官邸のみなさんにはものすごいバッシングを受けてきましたけれども、まあ、それを上回る皆さんの応援のおかげでですね、非常に楽しくやらせていただいたということで、心からお礼を申し上げたいなという風に思います。本当にありがとうございました。

古舘 古賀さん、ちょっと待って下さい。ちょっと待って下さい、古賀さん、待って下さい。いまのお話は、私としては承服できません。古賀さんは金曜日に、時折出て下さって、大変わたしも勉強させていただいている流れの中で、番組が4月から様相が変わっていく中でも、古賀さんに機会があれば、企画が合うなら出ていただきたいと相変わらず思ってますし。

古賀 それは本当にありがたいことです。もし本当であれば、本当にありがたいです。

古舘 古賀さんが、これで、すべて、なにかテレビ側から降ろされるっていうことは、ちょっと古賀さんそれは、違うと思いますよ。

古賀 いや、でも、古舘さん言われましたよね、「わたしがこういう風になるということについて自分は何もできなかった、本当に申し訳ない」と。

 古舘の慌てようが滑稽であった。この古賀発言に対して賛否が分かれているようだ。

 その見本は『週刊文春』(4/9号、以下『文春』)と『週刊新潮』(4/9号、以下『新潮』)である。『文春』は古賀発言を「暴走」ととらえ、菅義偉官房長官の「事実に反するコメントだ(中略)放送法があるので、テレビ局がどう対処されるかを見守りたい」という発言を次に持ってくる。

 そして古賀氏が経産省時代から優秀な自分が重用されないという「被害妄想」を抱き、民主党政権時代、行政刷新相をつとめた仙谷由人(せんごく・よしと)氏に、古賀氏の能力は高く評価していたが「官僚組織の中で仕事をする際は一種の自制がないといけない」と言われ、また大阪維新の会代表(当時)だった橋下徹氏や細川護煕(もりひろ)元総理のブレーンになったが、やはり古賀氏は暴走する質で、原発即ゼロの氏に付き合いきれないと、距離を置かれてきたと書く。

 また、古賀氏を『報道ステーション』に連れてきたMというチーフプロデューサーは、夫が朝日新聞の政治部長で、「古賀氏から様々な話を聞いて番組作りに生かしていたMは、左翼的な思想の部分でも共鳴し合ってベッタリの関係に」(テレ朝関係者)なっていた。そのため、安倍首相に近い評論家や、原発は最低限必要と発言したコメンテーターは「もう呼ぶな」とMが言って、番組に出させなかったと書き進む。

 Mには目的のためには手段を選ばない危険な一面があるとテレ朝関係者に言わせている。このMも3月で番組からはずされ経済部長に異動になったそうである。

 『新潮』のほうはどうか。ことの経緯を書きながら、「無論、その日のニュースとは何ら関係のない『テレ朝・古舘・官邸』批判を展開し、暴走した古賀氏の行動は大人げないとの誹(そし)りを免れないだろう。しかし、菅氏が圧力の存在をいくら打ち消そうとしたところで説得力を持たないほど、安倍官邸が『メディア操縦』を行っているのも事実なのだ」として、NHK『ニュースウオッチ9』を降板させられた大越健介キャスターの件を挙げる。

 安倍首相は恭順の意を表すメディアには情報を流し、リベラルな朝日新聞や毎日新聞には情報を渡さないことでメディアをコントロールしていると批判し、田島泰彦上智大学文学部新聞学科教授にこう言わせる。

 「安倍総理が総理に返り咲いて2年3ヵ月の間にメディアの人と会食した回数は、3年3カ月続いた民主党政権時代の総理3人の総計の既に4倍に達しています。加えて15年度の政府広報の予算案は83億円で、民主党の野田政権時代と比べると2倍以上に膨らんでいる。こうした影響を受けているのか、大手メディアは今、長いものには巻かれている印象が拭えません」

 この2つを読み比べて読者の皆さんはどう考えるのだろうか。私は古賀氏の「暴走」を断然支持する。テレビのニュースショーには電波芸者的コメンテーターが多い中で、こうした「ハプニング」が起きるというのは痛快である。

 NHKを筆頭に安倍首相や菅官房長官がテレビに圧力をかけているというのは周知の事実であり、テレビを傘下に持つ新聞は、知っていながら批判も出来ない腑抜け集団である。

 言論の危機が叫ばれて久しいが、私は常々、本当にそうなのだろうかと思っている。メディア(この場合の多くは新聞だが)が言論の自由を守り育ててきたことがあるのか。

 戦時中や戦後の占領軍時代、権力からの不当な検閲などにメディアが闘ったことなどない。

 その後はどうか。象徴的なのは1972年に起きた毎日新聞・西山太吉記者の「事件」である。沖縄密約公電をすっぱ抜いた西山記者を逮捕させた政府に対して、メディアは言論の自由を守れと声を上げたが、西山記者が女性外務省事務官から「情を通じて」情報を取ったと発表されると、スゴスゴと引き下がってしまったのである。

 これは「新聞が死んだ日」と言われるが、このように、この国のメディアは言論の自由のために闘ったことなどほとんどないと言っていい。

 民主党政権のようにひ弱な権力に対しては大声で批判してみせるが、小泉(純一郎)政権や今回の第二次安倍政権のように強い権力の前にはひれ伏し、擦り寄るのが日本のメディアの本性なのだ。

 私は週刊誌の編集長時代、物言わぬ新聞、物言えぬテレビと批判してきたが、週刊誌も、世の右傾化を我がことのように喜んで政権批判を忘れたり、アベノミクスで値上がりしている株を買え買えと浮かれ惚けていたりで、こちらも期待はできない。

 この国のメディアはとっくに死んでいると思う。そのことを『報道ステーション』の古賀発言は、国民に思い起こさせてくれたのである。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 今週は女性代議士にまつわるスキャンダルが花盛りである。醜聞が出ると「事実無根」「告訴も辞さない」などと男顔負けに勇ましいが、どうも腰砕けが多いような気がするのだが。今週のはみなさんどう見るのだろうか。

第1位 「『選挙民に日本酒贈呈』をない事にした『稲田朋美』政調会長」(『週刊新潮』4/9号)/「高市早苗総務相実弟秘書官が関わった『消えた公庫の1億円』重大疑惑を追う」(『週刊ポスト』4/17号)/「浪速のエリカ様 国会サボってホワイトデー温泉旅行疑惑」(『週刊文春』4/9号)
第2位 「上重聡アナ有力スポンサーから『1億7千万円マンション』利益供与」(『週刊文春』4/9号)
第3位 「初めて明かされるマツコ・デラックスの素性」(『週刊現代』4/18号)

 第3位。歯に衣着せぬ物言いと独特の切り口でテレビからひっぱりだこのマツコ・デラックス(42)だが、意外に彼女(?)の素顔は知られていないようだ。
 現在、マツコはレギュラー番組9本を抱えているという。
 あまり週刊誌のインタビューに出てこないマツコが出てきたのは、『現代』がマツコの母親に接触したことに憤りを感じたからだそうである。

 「なんで親への取材にこんなに過剰に反応するのかって? あのさあ、オカマの親なんだよ。綺麗な女優さんの親じゃないの。私は何を言われても構わないけど、両親がとやかく言われることだけは絶対に許せない」

 そう言って自分がゲイだと意識したことから語り始める。

 「自分がゲイなんじゃないかと気づいたのは、物心がついたときから。女の子と付き合ったりしてみたけど、やっぱり違った。でもゲイであることを、あえて表に出すようなことはしなかったわ」

 「いまでも連絡を取り合う友達は一人もいない。(中略)
 学生時代の私は、学校が終わると家に帰ってずっとテレビを見ていた。だからテレビが大好きなの。私の人格はテレビが作ったといってもいい」

 マツコのいいところは、自分を客観的に見ているところであろう。

 「私は自分が楽しく生きようなんて思っていないのよ。だってこんな化け物が画面にさらされて、不快な思いをしている人たちだっているんだから。(中略)
 今、幸せかどうか問われれば、それは幸せですよ。一緒に真剣勝負してくれるスタッフがいて、私を必要としてくれる人がいる。
 これは引き籠もっていた時、自暴自棄にもなったけど、そこで腐らずに、誰も見ていなくてもやり続けた結果だと思う。(中略)
 私だっていずれ飽きられる日が来ることはわかっている。だけど、だからといって、そのために保険かけて、予防線を張って生きていくつもりはないの。前に向かって突っ走っていくしかないのよ。今、私を見つけてくれている人たちのために、感謝しながらね」

 私はほとんどマツコをテレビで見たことがない。少し前にテレビに出まくっていた細木数子という占い師に似ているようで、胡散臭さが鼻について見る気にならないのだが、このインタビューを読んでからは、一度ゆっくり彼女の話をテレビで聞いてみたくなった。

 第2位。日本テレビのエースといわれる上重聡(かみしげ・さとし)アナ(34)が、有力スポンサーから1億7千万円もするマンションを「利益供与」されていたと『文春』が報じている。上重アナは、高校時代PL学園のエースとして活躍し、横浜高校の松坂大輔と延長17回の死闘を繰り広げたことで知られる。
 立教大学でも野球を続けていたが、ケガや故障に悩まされプロ入りを断念してアナウンサーを目指したという。
 03年に日テレに入社してスポーツ中継などを担当していたが、09年に中山秀征(ひでゆき)がメインのMCをつとめた『おもいッきりDON!』のサブ司会者に抜擢されてから頭角を現し、この春の番組改編で『スッキリ!!』の総合司会になったばかりだ。
 スポーツマンの爽やかさが魅力なのだろう、モデルの安座間美優(あざま・みゅう)(28)と交際しているそうだ。
 その爽やかアナにとんでもないスキャンダルが発覚した。まずは日テレの社員就業規則にある「自家用車での通勤を禁止している」ことへの違反。それも2000万円はくだらないという純白のベントレーを、新橋の裏通りに路上駐車していたところを、『文春』にバッチリ撮られてしまったのである。
 しかもこのクルマの所有者は上重ではなく、靴の小売りメーカーABCマートの元会長・三木正浩氏が代表を務める資産管理会社のものなのだ。
 上重アナが住んでいるのは港区のタワーマンションの最上階。広さは126平米もある角部屋で、「不動産登記によると、上重アナは昨年三月三十一日にこの部屋をABCマート関連会社の役員から購入しているが、その際、一億七千万円もの大金を、三木氏から“無利子”で借りているのだ」(『文春』)と言う。
 三木氏は『文春』に対して、マンションは自分が紹介して、ローンは月々三木氏に支払っていると話している。だが、日テレのコンプライアンス憲章を持ち出すまでもなく、有力スポンサーからこれほどの便宜供与を受けるなど、社員としても問題ありだが、情報番組のアナウンサーとしては失格であろう。
 日テレは、女子アナに内定していた女性が銀座でアルバイトをしていたことが発覚して、「清廉性」に欠けるとして内定を取り消し、騒ぎになったばかりである。
 上重アナのやっていることは間違いなく清廉性に欠けるはずだから、日テレ側がどのような判断を下すのだろうか。

 「日本テレビの上重聡アナウンサーが3日、司会を務める朝の情報番組『スッキリ!!』の番組冒頭で視聴者に謝罪した。
 上重アナは『私のプライベートな交友関係において、個人的なご厚意に甘えたことにより、多くの方に疑念を抱かれるような結果になってしまいました。深く深く反省しております』と謝罪。続けて『今後は視聴者の皆さんに信頼されるアナウンサーになるべく精進してまいりたいと思います』と頭を下げた」(4月3日のasahi.comより)

 謝れば済む話ではないと思うのだが。

 第1位。今週の第1位は3人の女性代議士たちの醜聞である。まずは、自民党の三役・政調会長に据えられ「女性初の宰相候補」と持ち上げられている稲田朋美代議士(56)の「日本酒贈呈疑惑」について『新潮』が今週も追及の手を緩めない。
 この疑惑は稲田代議士の地元・福井県で発行されている『北陸政界』が報じたものである。  要約すると、稲田議員が2005年に初当選してから09年に再選されるまで、各自治会の新年会や支援を受けている企業の宴会に「ともみの酒」というラベルを貼った4号瓶の日本酒を持参していたという疑惑。
 現在もこれが行なわれているのなら公職選挙法違反だが、いまは止めているようだから時効ではあるが、『新潮』は「自民党政調会長としての道義的責任は免れるものではない」と追及している。
 私は彼女が当選4回ということも議員の顔さえも知らないが、これほど知名度のない人間を要職に取り上げたというのは、よほど安倍首相の覚えが目出度いのであろう。
 『新潮』の言うように「道義的な責任」はあるはずだが、この代議士の過ちはそれだけではないようだ。
 『新潮』によれば、前号で『新潮』が取り上げることを知った稲田議員の夫で弁護士の稲田龍示氏が、掲載するなら民事訴訟をするとともに「併せて悪意による名誉毀損行為でありますから、刑事告訴するつもりである」とFAXを送りつけてきたというのである。
 『新潮』は、ただ単に記事掲載を阻止しようというのに刑事告訴まで持ち出してきて「それが、恫喝(どうかつ)だと気づかないのなら、世間を知らない弁護士バカ以外の何ものでもない」と批判する。ちなみに稲田代議士も弁護士資格を持っている。
 その上、政調会長会見で『新潮』の記事を「全くの虚偽」、「これはもはや表現の自由と呼ぶに値するものではありません」から「裁判上の措置をとることとしたいと考えております」と報道を全面否定したのである。
 権力者が表現の自由まで持ち出して否定するというのだから、私のような善良な市民はエライセンセイのおっしゃることだからと信じてしまいそうだが、『新潮』はならばと、動かぬ証言の数々を集めて稲田議員を追い詰める。
 福井市在住の保守系県議は「確か、08年と09年だったかな。秘書と一緒だった。そのうちの1回、『ともみの酒』っちゅうのを持ってきました。(中略)
 5、6年前から、稲田さんがあちこちに、お酒を配っていたのは地元では話題になってたよ」。稲田議員の元スタッフは、町内会の新年会などで1万円程度の会費を払うのが嫌で、会費代わりに酒を配るようにしたのが始まりだとし、酒は地元の農事組合法人から4合瓶1本2500円で200本以上注文して代議士主催の新年会で出されたが、「残りの分はほとんど、選挙民に配られたのです」と証言している。
 さらにまずいことが判明した。注文した先の農事組合法人は「酒類販売業の免許を持っていなかった」というのだ。
 嘘を隠すためにまた嘘をつく。『新潮』の調べたとおりなら辞任はやむなしであろう。『新潮』はこう結ぶ。

 「女性初の宰相候補などと持て囃されているから、どの程度かと思えばこの有様。政治家の器量の底が知れてしまったのだ」

 政治家の底という意味では、『文春』がすっぱ抜いた「浪速のエリカ様」こと維新の党の2回生議員・上西小百合(31)氏の醜聞も、底が浅すぎて呆れるほかはない。
 上西氏は2015年度予算案が衆議院を通過した3月13日、急性ウィルス性腸炎で3日間の静養が必要という診断書を出して欠席している。
 だが、前日には他党議員と飲み歩き(これは確認されている)、その翌日、上西氏は地元大阪へ向かっているのだが、「前々から、ホワイトデーに合わせて京都の高級温泉旅館で彼氏と一泊デートの予定を立てていた」(維新関係者)という話が出回っているのである。
 しかもその彼氏というのが49歳の公設秘書だというのだ。この情報に珍しくテレビ局が動いたのは、彼女が美形だからであろう。橋下徹維新の党最高顧問はこの情報を知っていたのだろう、4月3日の会見で上西氏は辞任するしかないと早々に言い切り、さっさと除名してしまった。
 上西氏は報道各社へのFAXで旅行はしていないと否定してみせたが、恥の上塗りであった。

 お次はコワモテの高市早苗(たかいち・さなえ)総務相の「重大疑惑」を『ポスト』が追及している特集。
 話はやや込み入っている。舌足らずになるやもしれないのでお許しを。舞台となったのは農業法人・N社である。
 同社の実質的経営者は高市氏の地元、奈良県で有力な企業グループA社を経営するM会長。N社の創業者であり元社長でもある。
 M会長のグループは奈良でビルメンテナンスの会社を中心に、介護事業や警備事業、加工食品などを手広く展開。さらに、県政や県経済の話題を主に扱う地元誌の発行人(理事長)でもあり、県政界への影響力も大きい。
 同誌のブログにはこう書かれているそうだ。

 「高市早苗先生とは、多分マスコミ関係者の中では、私が一番古くからのお知り合いではないでしょうか?」

 M会長の元でN社の社長を務めたK氏は福祉施設などを運営していた人物で農業は素人だったが、「俺には大きなバックがいる。国からカネを引っ張れる」と吹聴して4年ほど前にイチゴとレタスの水耕栽培を始めた。
 K氏の古くからの知人がこう語る。
 「またいつもの大風呂敷かと話半分で聞いていたら、本当に国から融資が出た。農業の素人が始める事業にいきなり国がカネを貸したのでびっくりしました」

 融資したのは日本政策金融公庫で、ここは国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫が統合して設立された政府100%出資の金融機関で、税金が投入され、民間よりも低い金利で融資を行なっているそうだ。
 だが、最後の融資の1年後(13年)には融資がほぼ焦げ付いたという。
 「公庫側の審査が甘い融資だった疑いが生じる」(『ポスト』)。普通の企業ならとうに倒産してもおかしくない状況だ。しかもN社はオフィスもなく電話も通じないが、登記上は社長や役員を次々に交代させながら現在も存続しているのである。
 N社の経営実態を心配する関係者の1人は、M会長からこう聞かされたという。

 「Kさんは『高市先生の案件だから公庫からの借金は心配はいらない。高市先生がなんとかしてくれる。絶対に大丈夫だ』と何度もいいました。それですっかり信用した」

 N社の元役員もこう話す。

 「K社長たちは農業なんか全く興味はなかった。最初から農業をダシに国からカネを引っぱるのが目的だったのだと思う」

 しかし、そのK社長はすでに突然死しているそうだ。
 その後も公庫への返済はなされていない。『ポスト』によると、N社の土地・建物を借りて椎茸栽培を行なっている別の農業系企業は、返済資金に充てるようにと毎月160万円の賃貸料を支払っているのだが、そのカネが公庫への借金返済に回された形跡はないという。
 M会長周辺は公庫やN社の1億円の借り入れの債務保証をした農業系企業に、昨年来、何度も一括返金すると連絡しているとの証言があるが、返済は果たされていないそうだ。
 しかもM会長の言葉通りにN社の救済に動いたのは、高市事務所だったという。関係者がこう語る。
 「高市大臣の実弟で現在、総務大臣秘書官を務める高市知嗣(ともつぐ)氏がN社の新しいスポンサーとしてM会長サイドに東京の会社を紹介した。そこでは、『利益率10%のビジネスになる。ゆくゆくは上場したい』という儲け話として検討された」

 『ポスト』は「一見まともな事業をやっているように見せかけて商品を発注したり、金融機関から融資を受けたあと、返済を踏み倒す『取り込み詐欺』は昔から詐欺の常套手段である」と難じる。
 高市秘書官に取材を申し込むと、「公庫からの借り入れについて、関係したことはない。N社との面識もない」としながらも、N社救済のためにスポンサーを紹介した事実を認めたという。

 「消えたカネは国民の血税である。官邸と高市氏は『名前を使われただけ』で逃げることはできない」(『ポスト』)

 早速、高市早苗総務相は4月6日に国会内で臨時の記者会見を開いた。

 「一部の週刊誌が、政府系金融機関から融資を受けた農業法人に1億円の使途不明金があることが発覚し、高市氏の実弟である秘書官が関わっていた疑いがあると報じたことについて、『見出しも中身もあまりに悪質であり、捏造(ねつぞう)記事だ。融資には高市事務所も秘書官も私も一切関与していない』と全面的に否定した」(4月6日のasahi.comより)

 『ポスト』はこれからも追及を続けると言っているから、目が離せない。

 私は、女だからなどと言うつもりは毛頭無いが、今回の3人や小渕優子、中川郁子(ゆうこ)氏らを見ていると、安倍首相の唱える「女性が輝く時代」は政界に限って、まだまだ遠いと思わざるを得ない。
 これらのスキャンダルも安倍政権崩壊の序章のような気がするのだが。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 世界的には「クール」と評価されるらしいアニメなどの日本のカルチャーだが、実際のところ、「モテ度」が低い趣味には違いない。オタクというものは意外と社交性があり、所属できるコミュニティも多いのだが、それは共通のホビーに対する感性を共有できるから。ホビーを離れてしまうと、人間関係、ことに異性に対してなかなか臆病になってしまう。

 だからこそ、「モノ」に愛情をそそげるわけなので、この根っこはいたずらに否定してはいけないだろう(この不況下でビジネス的に大きなものを生み出しているのは事実であり、いまや日本経済にとって重要なファクターなのだから)。しかし、結果的にオタクのサークルには、「異性に対する耐性」ができていない男子が多く集まることが多い。そこに数少ない女子のメンバーが入ってくるとどうなるか。人間関係がギクシャクする可能性は高い。最悪、恋愛をめぐる修羅場がサークルの存続自体をあやうくしてしまうのである。このような女子の存在を「サークルクラッシャー」と呼ぶ。

 もちろん、女性の側でも、わざわざ男子のグループに入っていくことは勇気が要る。だから、必然的に「強心臓」といえるキャラクターが多くなるので、男子の扱いもなんとなく理解しており、必ずしも「クラッシャー」になるとは限らない。ただし、男子たちから大事に扱われ過ぎて、もはや「お姫さま」と化すこともあるとか。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 「アジアインフラ投資銀行(Asian Infrastructure Investment Bank、AIIB)」への参加をめぐって、世界の動きが慌ただしくなっている。

 AIIBは、アジア太平洋地域のインフラ整備を支援するために、中国が主導して今年末に設立が予定されている国際開発金融機関だ。

 アジア太平洋地域の途上国支援を行なう国際金融機関は、すでにアジア開発銀行(ADB)が存在している。フィリピンのマニラに拠点を置き、67の国と地域が加盟しているが、こちらはアメリカと日本が最大の出資国。貸出には両国の思惑が色濃く反映される。

 実質的に米ドルを基軸通貨と定めた1944年のブレトン・ウッズ体制以降、米国は国際通貨基金(IMF)と世界銀行を通じて、途上国の開発援助の名のもとで世界の金融を牛耳ってきた。ADBは、その一翼を担う国際金融機関だ。

 過去、IMFや世界銀行などが行なった途上国支援では、対外債務の返済に支障をきたした国に対して「構造調整プログラム」が強制された。このプログラムは、教育や福祉など公共サービスの削減、水道や電力など国の事業の民営化、多国籍企業参入のための規制撤廃などを強制的に推し進めるものだった。その結果、貧困の解消のために行なわれたはずの融資が、逆に新たな貧困をつくり出し、世界中のNGOから激しい批判を浴び「債務の帳消し」を求める声が上がることになったのだ。

 IMFや世界銀行からの融資には、構造調整プログラムで受けた傷に対するアレルギーもある。だが一方で、近年、アジア各国の経済成長に伴い、地域内におけるインフラ整備には2020年までに毎年8000億ドルが必要になると見込まれている。融資に厳しい条件や管理が伴うADBとは別の枠組みで、その資金を調達するのがAIIBの目的だ。

 ただし、AIIBの組織運営や融資審査基準などが不透明と言われており、アメリカや日本は距離を置いている。だが、中国の楼継偉(ロウ・ジィウェイ)財務相は3月22日の国際会合で「AIIBは途上国中心の国際機関であり、途上国のニーズをより考慮する必要がある」と発言。

 インフラ需要の多いアジア太平洋地域への投資は、欧州諸国にとってはビジネス拡大のチャンスでもあるため、当初は参加に難色を示していた国々も徐々に態度を軟化。アメリカの友好国であるイギリスが参加を表明したのを皮切りに、イタリア、ドイツ、フランスなどが雪崩をうって参加に転じた。3月31日現在、51か国・地域が参加表明しており、日本は微妙な立場となっている。

 AIIBが設立されれば、1944年のブレトン・ウッズ体制以降、米ドルを中心に回ってきた世界の金融地図を大きく塗り替える可能性を秘めている。

 現在、証券会社や銀行などでは、世界銀行やADBの債券に投資する投資信託が販売されているが、近い将来、そのラインナップに、アジアのインフラに投資する「AIIBファンド」なるものが登場するかもしれない。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 酔っ払ってメイクを落とさずに眠ってしまった次の日の朝のような、「二日酔い」風のメイクが流行っているという。近年、目の周囲を黒系のカラーでぼかした「スモーキーアイ」が人気だが、これを二日酔いメイクでは、「一晩たってにじんだような」ナチュラルかつ小悪魔的な目元とみる。アイメイクとともに重要なポイントがリップで、自然な色合いでうるうると濡れているような演出を加えるとよい。ヘアも少しボサボサでオイリーなくらいが、このメイクではなじむとされる。本当の「二日酔い」とは似て非なるもので、あくまでセクシーさの一つの表現といえる。

 女性向けの媒体の記事では「男性ウケする」という視点が強調されるが、一方では、顔の手入れもときには気にしないといったような、充実したライフを誇るような側面もありそうだ。それが結果として、自己を確立した女の「セクシー」につながっているわけである。なお、2015年春夏のコレクションでモデルたちに散見されたメイクであり、ネーミングはともかく、その要領自体はグローバルなものだ。いま、気張っていないメイクの流れが来ているようである。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 日本を取り巻く安全保障の環境が変わりつつあるが、これもその一環ということか。

 農水省は、2015年3月「食料・農業・農村基本計画」をまとめた。計画は今後10年間の日本農政の指針となるもので、この中で、新たな指標として「食料自給力」が盛り込まれた。

 これは、戦争などで農産物の輸入がぱったり途絶えた場合、国民1人当たり1日に必要とされるカロリー(2147キロカロリー)に対し、国内生産分でどれだけ賄えるかを示すものだ。

 具体的には、コメや麦を中心に作付けする場合やイモ類を中心とする場合など4つのケースに分けて試算。それによると現在の供給量では、イモ類を中心にした作付けで、やっと1日に必要なカロリーをクリアできる状況という。毎日イモばっかり食べてやりすごせるとは思わないが、「食料安全保障」上は軽視できない指標と言える。国民に対する啓発の意味合いもあるのだろう。潜在的な自給力を具体的な数値で示すことで、食料自給についてきちんと考えてもらいたい、ということだ。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 毎年、新入社員の特徴をヒット商品などに例えている『日本生産性本部』(東京都渋谷区)という団体があるらしく、そこで、平成27年度の新入社員を例えた表現が「消せるボールペン型」。

 いったいどーいう由来なのかを説明すれば、「柔軟性を持つが、厳しい指導には耐性が低い傾向にある」「見かけはありきたりなボールペンだが、機能は大きく異なっている」「消せるボールペンは高温下で文字が消えることになぞらえ、上司が熱血指導すると、個性を失い、離職する危険性をはらんでいる」ってことなのだそう。

 正直な話、筆者としてはあまりピンと来ない“ネーミング”でしかない。だって、消せるペンって、むっちゃ便利じゃないですか! 「高温下で文字が消える」って、そこまでの耐性なんて今の世の中必要ないじゃないですか! すなわち「完璧」ということだ。なるほど、今年の新入社員は完璧なのか……んなわけねえだろ! やり直し!!

 あと、「柔軟性を持つが、厳しい指導には耐性が低い傾向にある」というくだりも、なんか筆者が大学を卒業したころの30年前から、20代前半の若者に対して、ずーっとされ続けてきた評価であるような気もする。ってなわけで、ここもやり直し!
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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