朝倉 数学辞典

数学はあらゆる学問分野の基礎であり，その影響は世の中の隅々にまで広く薄く浸透しています．数学には多くの研究対象があり，分野も細分化されているため，全体を見渡すことは専門家にとっても困難になっています．この辞典では数学の専門家ではないけれども数学のことを広く知りたいという読者を対象にしています（とりわけ大学の学部学生，元学生から大学院の学生までを主に想定しています）．

この辞典の作成にあたり，「読める辞典」という目標を掲げました．そのために中項目主義をとりました．一項目の解説が長い大項目辞典では読み通すことが困難になり，いっぽう用語を説明するだけで終わる小項目辞典では周りとの関係がわからなくなりがちだからです．文中の数式は最小限に抑えて平易な記述を心がけ，理解を助けるための多くの例や図をあげるよう努めました．また，項目の区切りとページの区切りを一致させ，見やすさにも配慮しました．さらに，項目間の参照は避けてその代わりに索引を充実させました．最新の結果を集めた専門家のための辞典ではなく，専門用語の意味を解説しただけの辞典でもなく，初心者が読んで勉強できる辞典を目指して，基礎や入門部分も詳しく説明し，高校で学ぶ程度の項目も簡略にまとめました．執筆者は，数学の分野を幅広く俯瞰できる第一線の研究者に依頼しましたが，初学者にとっても近付きやすい叙述を心がけていただきました．この辞典によってより数学が親しみやすいものとなることを期待しています．

2016年5月

川又雄二郎・坪井　俊・楠岡成雄・新井仁之