Web版・DVD版の刊行にあたって
このたび、雑誌「中央公論」の名編集長と謳われた滝田樗陰(1882~1925)が旧蔵していた近代作家の膨大な原稿集を、「Web版・DVD版日本近代文学館」の一環として刊行する運びとなりました。
これらの原稿は、2010年に樗陰ご遺族よりご寄贈されたものです。そのほとんどは樗陰が文芸欄の充実に力を入れていた大正時代に「中央公論」誌に掲載されたもので、文学者だけでなく画家・評論家・学者など多彩な顔ぶれの67人、213作品の原稿が揃っております。
このWeb版・DVD版「滝田樗陰旧蔵近代作家原稿集」では、1万枚を越えるこれらの原稿を全てフルカラーで収録し、あわせて中央公論新社のご協力のもと、作品が掲載された箇所の「中央公論」本誌の画像を全て収め、原稿と比較対照が出来るようにいたしました。さらにWeb版・DVD版ならではの機能として、閲覧・検索等きわめて便利に利用できます。多くの研究者の皆様に活用され、また様々な分野の研究に資するものと確信しております。
日本近代文学館は、わが国の貴重な文学資料を収集・保存し、研究者等の閲覧に供し、さらにひろく公表することをその基本的な存在意義としております。従って、これまで三十余種の文芸誌を複刻・刊行、八木書店との提携による「マイクロ版近代文学館」等を刊行してまいりました。その後、これらの資料はCD版・DVD版、そしてWeb版へと進化をいたしましたが、このたびの「滝田樗陰旧蔵近代作家原稿集」も、こうした文学館活動の一環として刊行に至ったものです。
長い間、この貴重なコレクションを大切に守り伝え、ご寄贈くださった遺族の方々、刊行のため多大なご尽力を賜わった編集委員・執筆者の方々、刊行を許可して下さった著作権者の方々、中央公論新社、八木書店をはじめご協力いただいた関係者各位に心から感謝申し上げます。
2011年10月
公益財団法人 日本近代文学館
理事長 坂上弘
刊行の辞 ~マイクロ版・CD-ROM版・DVD版近代文学館~
わが国近代文学の、散逸のはなはだしい諸資料・文献を収集・保存する運動が、文壇・学界・マスコミ関係の有志百余名によって発起され、日本近代文学館が創立・発足したのは1962年春でした。以来、文学館では貴重な各種の資料・雑誌を、多くの方々の援助を得て収集するとともに、文芸雑誌複刻版、各種『名著複刻全集』、『日本近代文学大事典』、各種『資料叢書』などを刊行してまいりました。
ところが近代・現代文学の研究には、最も基本的で欠くことのできない『新潮』『文章世界』『新小説』『太陽』など主要な諸雑誌は、完全なかたちではなかなか揃っているところがなく、何よりも必要なものとされながら、余りにも規模が大きすぎるなどの困難により、容易に実現しませんでした。1977年、研究検討の結果、八木書店の協力と、発行元・著作権者の方々の援助を得て、「マイクロ版近代文学館」シリーズの刊行を開始しました。その後このシリーズはCD-ROM版、DVD版へと発展してきております。
図書館・大学・研究者から要望の多かった日本近代の最も重要な総合雑誌・文芸雑誌を刊行できることは、たいへん意義深いことであり、また、大きな喜びであります。このシリーズが多くの方々に活用されることを願ってやみません。
関係者各位に深く感謝の意を表します。
財団法人 日本近代文学館