日本大百科全書(ニッポニカ)

ロシア連邦保安庁
ろしあれんぽうほあんちょう
Federal Security Service of the Russian Federation 英語

ロシア連邦の情報・治安機関。旧ソ連のKGB(国家保安委員会)の流れをくむ諜報(ちょうほう)機関である。略称はFSB(ロシア語名を英語アルファベットに置き換えた略称)。国家安全保障やテロ防止のため通信・電磁波・信号などの傍受活動を行うほか、国境警備、麻薬・金融取引などの経済犯罪対策、兵器などの開発・発注、科学・情報技術の開発・収集などの活動を行っている。将校や士官候補生らで構成する軍事特殊部隊も管轄している。アメリカのCIA(中央情報局)、イギリスのSIS(秘密情報部、略称MI6)、中国の公安部、イスラエルのモサドなどと並ぶ情報機関である。ロシア大統領のプーチンが第4代長官を務めるなど、ロシアの政治家や財界人を輩出しており、ロシアでは国政に影響力をもつエリート集団とみなされている。
 KGB解体後、ロシア保安省、ロシア連邦防諜庁などを経て1995年に発足した。2000年以降、順次、国境警備、傍受、金融犯罪対策などの機能を受け入れ、旧KGBの姿に戻りつつある。2014年、ネット検索大手ヤフーから大量の個人情報が流出した事件では、ロシア連邦保安庁の職員が起訴された。また、2016年のアメリカ大統領選挙に介入するためのサイバー攻撃に関与した疑いももたれている。世界ドーピング防止機構(WADA)は2016年、ロシア連邦保安庁が2014年の冬季オリンピック・ソチ大会などで国家ぐるみのドーピング違反に関与していたと報告。日本関係では北方領土周辺で、北海道の漁船がロシア領海に入り込んだとしてたびたびロシア連邦保安庁に拿捕(だほ)されているほか、旧ソ連秘密警察の流れをくむロシア連邦保安庁がシベリア抑留者の全名簿記録を管理しているとみられる。
[矢野 武]2019年5月21日