「雇う・雇われる」の関係ではなく、働く人全員が出資者となり、経営にも参加しながら働く協同労働のこと。労働者協同組合ともよばれ、労協、ワーコレ、W.Coなどと略される。1人当り1万~20万円程度の出資で、介護・家事援助、保育・子育て、食品(パン、総菜、弁当など)の製造・小売り・配達、環境・リサイクル、市民文化活動、設備管理・清掃、地域情報発信などの地域密着の非営利事業を手軽に始められる特長がある。全員が経営者となり、対等の立場で働き、全員で達成感を味わうといった目的の人々が参加している。主婦、定年後の高齢者、障害者、フリーターなどが参加しているケースが多く、生活クラブ生協の業務や地方公共団体の事業を受託するなど職種も多岐にわたっている。
ヨーロッパでは18~19世紀の産業革命直後からワーカーズ・コレクティブが普及したが、日本では、1970年代に、高齢者の失業対策として発足した労働組合系の「日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会」と、主婦層や市民運動から生まれた「ワーカーズ・コレクティブ・ネットワークジャパン」という全国組織がある。全国組織の推計では、2017年(平成29)時点で全国に600~800程度のワーカーズ・コレクティブがあるとみられる。ワーカーズ・コレクティブには不況時の雇用者の受け皿としての役割もあり、2011年の東日本大震災では、被災地で緊急雇用対策事業を受託するなど関心を集めた。
ワーカーズ・コレクティブは収益や効率より、相互扶助、消費者・生活者視点、地域密着、ダイバーシティ(人間の多様性)などを重視する側面が強く、財政面などの基盤は弱い。根拠となる法律も日本にはなく、多くのワーカーズ・コレクティブが特定非営利活動法人(NPO法人)や任意団体として活動している。このためワーカーズ・コレクティブを普及させようと、当時の公明、民主、自民党などの超党派議員連盟が2008年に「協同労働の協同組合法」案要綱をつくる動きをみせたが、政権交代や東日本大震災で法制化の動きは足踏みを続けている。
2019年5月21日