クジラ類資源の保護と捕鯨業の秩序ある発展を目的とした国際機関。英語の頭文字をとってIWCと略称する。1948年に国際捕鯨取締条約(国際捕鯨条約。1946年署名)が発効し同年発足した。もともと捕鯨国の捕鯨枠を決める資源管理組織であったが、自然保護機運の高まりを受け、商業捕鯨から調査捕鯨まで捕鯨全般を否定する反捕鯨的組織に変容した。条約締約国は89か国(2018年8月時点)あり、水産庁調べでは、反捕鯨国が48か国を占め、捕鯨支持国は41か国である。日本は1951年(昭和26)に加盟し、捕鯨支持国として最大の拠出を続けてきたが、2018年(平成30)に脱退を決め、2019年7月から日本領海と排他的経済水域で商業捕鯨を再開する。
国際捕鯨委員会は約80種のクジラ類のうち、シロナガスクジラ、ザトウクジラ、ミンククジラなど大型13種を管理対象とする。事務局はイギリスのケンブリッジ。おもな任務は、(1)クジラ資源の保存・利用についての規則採択、(2)クジラ及び捕鯨に関する研究や調査の勧告、(3)クジラ類の現状や傾向、捕鯨活動の影響に関する統計的資料の分析である。科学、保護、財政運営等の小委員会があり、重要な案件は総会(2012年まで毎年開催、以降は隔年開催)で議決する。もともと日本、ノルウェー、イギリス、オランダ、旧ソ連など商業捕鯨国の国際組織であったが、1960年代にイギリスとオランダが捕鯨から撤退したうえ、1970年代からの自然保護運動の高まりを受け、反捕鯨国が委員会の多数を占めるようになった。1982年には商業捕鯨の一時停止(モラトリアム)を決議し、1994年に南極海を捕鯨禁止区域(サンクチュアリ)とした。当初商業捕鯨禁止に抗議していた日本はこれを受け入れると同時に、1987年から南極海で調査捕鯨を開始し、1994年(平成6)からは北西太平洋にも調査捕鯨海域を広げた。しかし2014年、国際司法裁判所は日本の南極海調査捕鯨を国際捕鯨取締条約違反であるとの判決を下した。このため日本は、南極海での調査捕鯨から撤退し、北西太平洋での調査捕鯨も縮小を余儀なくされており、国際捕鯨委員会からの脱退を決めた。なお、商業捕鯨を続けるカナダは1982年に国際捕鯨委員会を脱退。一方、ノルウェーとアイスランドは商業捕鯨モラトリアムには科学的根拠がないとして、国際捕鯨委員会に加盟したまま商業捕鯨を続けている。
2019年6月18日