日本大百科全書(ニッポニカ)

細胞呼吸
さいぼうこきゅう

生物個体が外界から酸素を取り入れ二酸化炭素を排出する外呼吸に対して、細胞が体内に取り入れた酸素を消費し細胞外に二酸化炭素を出す現象で、内呼吸ともいう。また、この現象を細胞でなく組織のレベルでみた場合には組織呼吸とよぶ。生化学的にみた細胞呼吸とは、動物が分子状酸素を用いて有機物を酸化分解し、その過程で生体に利用可能な形で物質に含まれるエネルギーを獲得することをいう。真核生物で細胞呼吸をつかさどる細胞内器官はミトコンドリアである。ミトコンドリアは外膜と内膜からなる二重膜構造をもち、その数は1細胞当り肝細胞では約2500個、植物細胞では200個ぐらいである。ミトコンドリアの内膜に囲まれたマトリックス(基質)内にはクエン酸回路、脂肪酸酸化その他の酸化反応に関与する酵素群が存在し、内膜には電子伝達系、酸化的リン酸化系の諸酵素、およびコハク酸脱水素酵素などが結合している。これらが働いて細胞呼吸をする生化学的な仕組みは次のようである。糖、脂肪酸、アミノ酸などが代謝分解されてできたアセチル補酵素Aは、次にクエン酸回路に入り、脱水素されて二酸化炭素を生じる。こうして生じた二酸化炭素は細胞外に放出される。一方、除かれた水素は電子伝達系を経て、最終的には分子状酸素を用いるチトクロム酸化酵素により酸化され、水となる。この過程で呼吸によって取り込まれた酸素が消費されるのである。
[嶋田 拓]