日本大百科全書(ニッポニカ)

彩釉タイル
さいゆうたいる
glazed tile 英語

表面に釉薬(ゆうやく)を施したタイル。古代から現代まで、建築の内外壁、床(ゆか)や天井などの装飾に広く用いられ、またストーブや家具、調度類の外装にも利用される。塗装による装飾よりも耐久性に富み、華麗な装飾効果を特色とする。表面に浮彫りをもつもの、全体として絵画的構図をとるものなど、さまざまな種類がある。古代の例では、エジプト第3王朝のジョセル王ピラミッド地下の壁面が有名。また第18王朝のアマルナでは、浮彫りをした上に多色の釉(うわぐすり)をかけた精巧な作品が王宮などにある。メソポタミア、イランでは、初期には彩釉れんがが多用され、タイルが普及するのは紀元前8世紀ころ以降である。イスラム教の時代に入ると彩釉タイルは全盛期を迎え、モスクの内外はすきまなく美しいタイルで覆われるのが常となった。八角形、星型など、何種類かの基本形をもつタイルを精緻(せいち)に組み合わせた壮麗な空間は、彩釉タイルの最高の芸術的成果である。ヨーロッパでは中世の教会堂の床などに初期の例がみられるが、マジョリカ、デルフトなどの陶芸の発達とともに、壁や床に施釉タイルを用いることが流行し、今日に至っている。とくに17、18世紀のドイツ、イタリア、スペイン、ポルトガルに優れた遺例がある。
[友部 直]