自転車を使って行われるすべてのスポーツ。自転車競技にはいろいろな競技種目がある。自転車が発明され、サイクリングがスポーツとして始められた当初はスピードを競い合う競走が主体であったが、自転車が普及発展するにつれて、サイクル・ボール(サイクル・サッカー)やBMX(バイシクルモトクロスbicycle motocross)、マウンテンバイク(MTB)など、新しいスポーツが開発され、現在では競走だけでなく、自転車を使って行うすべてのスポーツを自転車競技とよんでいる。
2019年7月19日
自転車競技は長い歴史と伝統をもったスポーツで、1868年フランスのパリで世界最初の自転車競走が行われて以来、今日まで世界各国で広く愛され、親しまれてきた。とくにヨーロッパでは、大衆にもっとも人気のあるスポーツの一つとして広く普及しており、1903年以降、毎年行われているフランス一周ロードレース(ツール・ド・フランスTour de France)はフランス国民を熱狂させている。
オリンピック大会においても正式種目であり、男子は1896年第1回アテネ大会から、女子は1984年第23回ロサンゼルス大会から競技が行われている。なお、1996年からマウンテンバイクが、2008年からBMXレースが正式種目に加えられ、2020年の東京大会ではBMXフリースタイル(パーク)も加わる。またパラリンピックでは、1984年からロード競技が、1996年からトラック競技が正式種目となっている。
世界選手権大会も1893年シカゴで第1回が開催されて以来(トラック競技)、二度の世界大戦期を除いて今日まで世界の各都市で毎年行われている。なお、世界選手権大会は国際自転車競技連合Union Cycliste Internationale(UCI)のタイトルのもとに、1921年からロード競技、1930年から室内自転車競技(サイクル・ボール)、1950年からシクロクロスCyclo-Cross競技、1956年から室内自転車競技(アーティスティック・サイクリング)、1990年からマウンテンバイク競技、1992年からトライアル競技、1996年からBMX競技、2003年からマウンテンバイク・マラソン、2011年からグランフォンドgranfondo(アマチュアの長距離ロード競技)、また、2017年からはBMXフリースタイル、マウンテンバイク・エリミネーター、トライアルの3種目がまとめられ、アーバンサイクリングurban cycling大会として実施されている。パラサイクリングは2007年からトラック、2009年からロードの大会がUCIのタイトルのもとに実施されている(2006年以前は国際パラリンピック委員会:IPCのタイトルのもとに行われていた)。1973年にはジュニア世界選手権大会(トラック競技、ロード競技)が開催され、既存の世界選手権大会とともに開催期日を異にして毎年行われていたが、2009年からトラック種目のみとなり、ジュニアのロード種目は既存の世界選手権大会のなかで行われている。
日本においても明治期より総延長1000キロメートルを超えるようなロードレースが行われたが、当時は自転車が高価であったため、自転車メーカーや商社あるいは新聞社などによる販売促進の色彩が強かった。大正期から昭和初期にかけては運搬用具として普及し、同時に自転車競技も盛んになってきたが、まだメーカーなどに雇われたプロ競技者の参加が多く、1936年(昭和11)の第11回オリンピック・ベルリン大会に初めてのオリンピック参加を目ざすも、アマチュア規定の問題から参加がかなわなかった。日本が初めてオリンピックの自転車競技に参加したのは、1952年(昭和27)第15回ヘルシンキ大会からである。
第二次世界大戦後ギャンブル・スポーツとして競輪(けいりん)が誕生し、戦前からの自転車競技とあわせてアマチュアとプロが並存していく流れになった。1960年代から1990年代まで自転車競技の国際組織でも内部でアマチュアとプロの2組織に分かれていたが、この時期に世界大会で活躍した日本人選手には、世界選手権プロ・スプリント競技で10連覇を果たした中野浩一(こういち)(1955― )や、1984年第23回オリンピック・ロサンゼルス大会で初めてのメダル(銅・スプリント)を獲得したアマチュアの坂本勉(つとむ)(1962― )がいる。
これ以降、オリンピックでは、1996年(平成8)アトランタ大会で十文字貴信(じゅうもんじたかのぶ)(1975― )が1キロメートルタイムトライアルで、2008年(平成20)北京(ペキン)大会で永井清史(ながいきよふみ)(1983― )がケイリンで銅メダリストとなった。またパラリンピックでは、2008年北京大会で石井雅史(いしいまさし)(1972― )と藤田征樹(ふじたまさき)(1985― )がそれぞれ三つのメダルを獲得するという快挙を成し遂げた(石井は1キロメートルタイムトライアルで金メダルを獲得)。2016年リオ・デ・ジャネイロ大会では鹿沼由理恵(かぬまゆりえ)(1981― )が銀メダル(ロードタイムトライアル)を獲得するなど、2000年に初参加して以降の5大会(シドニー大会からリオ・デ・ジャネイロ大会まで)で、金が2個、銀が7個、銅が4個の成績をあげている。
日本国内でも、1980年代からUCIに登録したいくつもの国際レースが行われるようになった。1990年にはアジアにおいて初の世界選手権大会が群馬県前橋市(トラック競技)と栃木県宇都宮市(ロード競技)で開催され、また室内自転車競技の世界選手権大会が2001年に鹿児島県の加世田(かせだ)市(現、南さつま市)、2011年に鹿児島市で開催された。国外のプロ・チームで活躍する日本人も現れ、競技スポーツとして自転車競技は注目されるようになってきている。
世界の自転車競技の組織は、1900年に結成されたUCI(本部はスイスのエーグル)によって統轄されており、2018年時点で、日本をはじめ194か国・地域が加盟している。日本において自転車競技の統轄団体が結成されたのは1934年である。当初日本サイクル競技連盟の名称で創立され、1936年にUCIに加盟、翌1937年に日本学生自転車競技連盟と合同して日本自転車競技連盟の名称となった。第二次世界大戦後、競輪の誕生により、プロフェッショナルの分野が確立され、日本プロフェッショナル自転車競技連盟の誕生を契機に、それまでの日本自転車競技連盟は1957年に日本アマチュア自転車競技連盟と改称された。1996年からオリンピックにもプロ選手が出場できることが決まり、いわゆるオープン化が進んだ。1995年にアマ・プロの両連盟は統合され、現在の公益財団法人日本自転車競技連盟Japan Cycling Federation(JCF)となっている。
2019年7月19日
競技種目は多様であるが、現在、UCIが統括する自転車競技は大きく八つの競技部門(ロード、トラック、マウンテンバイク、シクロクロス、BMX、トライアル、室内自転車競技、パラサイクリング)に分かれ、さらにそのなかで多種の種目に分かれている。そのほか、競技よりもレジャーを主目的としたサイクリング・フォア・オールcycling for allもUCIの統括下にある。また競技部門はそれぞれ年齢別にカテゴリー分けされる。毎年12月31日の時点で、17~18歳は「ジュニア」、19~22歳は「U23」、23~29歳は「エリート」とされ、30歳以上は「マスター」を選択できる。
2019年7月19日
一般の公道を走る競技で、参加人数の上限は176名(オリンピック、世界選手権大会などは200名)とされている。原則としてチーム単位で参加し、チームの作戦が見どころとなる。自転車競技のプロフェッショナルのチームのほとんどはロード競技のチームである。種目として次のものがある。
(1)ワンデイ・ロードレースone-day road race 競技者全員が一斉にスタートして、町から町に設定したコースあるいは周回コースにおいて長い距離を1日のうちに走破し、ゴールの着順で勝敗を決める競技。車輪のパンクなどに対応するために、予備車輪や予備自転車を積載したメカニックの車両やチームの車両も随伴する。審判は4輪または2輪の車両に分乗し、無線でコミュニケーションをとりながら競走をコントロールする。通常のレースの距離は男子エリートで240キロメートル、女子エリートで140キロメートルが最長距離とされるが、世界選手権大会やオリンピックでは、それぞれ250~280キロメートル、130~160キロメートルの距離で競われる。またクラシックとよばれるレースでは、この基準外の伝統的な距離で行われている。
(2)個人タイムトライアル・ロードレースindividual time trial road race 一定の間隔で1人ずつスタートし、完走タイムの優劣によって勝敗を決める競技。他の選手の直後について走ることは禁じられる。世界選手権大会やオリンピックの場合、男子エリートは40~50キロメートル、女子エリートは20~30キロメートルの距離で競われる。
(3)チーム・タイムトライアル・ロードレースteam time trial road race チームで行うタイムトライアル。かつてはオリンピックの種目でもあった。チーム(最少2名から最多10名までで大会規則により決められる)ごとに一定の時間間隔でスタートし、先頭を交代しつつ空気抵抗を分担して走行する。普通はチームの3番目の走者の完走タイムをチームのタイムとするが、何番目の走者の完走タイムを採用するかは、大会規則によって異なることがある。最長距離は男子エリートで、100キロメートルである。
なお、2019年の世界選手権大会からは同国籍の男女3名ずつの競技者による混合リレーmixed relayが行われる。男子3名が先にスタートし、25キロメートルを男子の2人目の競技者がフィニッシュしたときに、女子3名がスタートする。女子の2人目の競技者が25キロメートルをフィニッシュしたときの男女の合計タイムがそのチームの記録となる。
(4)ステージ・レースstage race 少なくとも2日以上の期間にわたって行い、各ステージ(区間)の完走時間の合計で個人とチームの総合時間順位を競う競技。チーム競技としてのみ行われる。ステージは通常、町から町へのコースで、山岳路も含めて設定する。山岳賞、ポイント賞、チーム賞などを設定することが多い。有名なツール・ド・フランスもステージ・レースであり、23日間にわたり総距離3300キロメートル前後の距離で行う。
2019年7月19日
自転車競技場で行う競技で、日本国内の競技場は周長500メートル、400メートル、333.33メートルのものが多いが、世界選手権大会、オリンピックで使用する競技場の周長は250メートルに限定され、競技規則もこれに適したものとなっている。次に解説する種目は、世界選手権大会、オリンピックなどで行われる種目である。なお、タイムを競う種目の場合には、静止状態からのスタンディング・スタートにおいて自転車を保持しスタート信号と同時に開放する装置、スターティング・マシンを用いている。
(1)タイムトライアルtime trial 独走による時間競技で、完走タイムの優劣で勝敗を決める。男子は1キロメートル、女子は500メートルの距離で行われている。
(2)スプリントsprint 元来、単に短距離競走の意味でスプリントとよばれていたが、競技形態が発展した結果、種目名となった。2~4名の選手が笛の合図とともにスタートし、先着した者を勝者とする競技。予選は200メートルで、スタート・ライン手前から助走してスタートするフライング・タイムトライアルで行い、その上位者が2~4名で行う対戦に進める。準々決勝以降は2名で行われる。333.33メートル以上の競技場で行う場合は2周、333.33メートル未満の競技場では3周で行う。勝敗はゴールの先着順で決めるが、最後の1周に入るまでは、走路上で徐行したり停止したりして、相手に対し有利な位置につくためのさまざまな駆け引きを行うことができる。最終スプリントは時速70キロメートルを超えるスピードで争われる。
(3)インディビデュアル・パーシュート・レースindividual pursuit race 「インディビデュアル」は「個人」、「パーシュート」は「追跡」の意味で、日本では個人追い抜き競走ともよぶ。2名の選手がホームとバックストレッチの中央線からそれぞれ同時にスタートし、お互いに相手を追いかける競技。スターティング・マシンを用いる。勝敗は相手に追い付くか、ゴールの先着順で決める。競走距離は性別と年齢別カテゴリーによって異なり、男子エリートとU23は4キロメートル、女子エリートと男子ジュニアは3キロメートル、女子ジュニアは2キロメートルの距離で行われる。
(4)チーム・パーシュート・レースteam pursuit race チームで行うパーシュート・レース。日本では団体追い抜き競走ともよばれる。1チーム4名で4キロメートル、風圧による負担を分担するため、先頭を交代しながら走行する。2チームがそれぞれホームとバックストレッチから同時にスタートする。もっとも内側の競技者はスターティング・マシンで支えられる。相手チームに1メートル以内に追い付いたチームが勝者となり、追い付きがなかった場合はチーム3番目の走者が早くゴールしたほうが勝者となる。
(5)ポイントレースpoints race 20~30名で行うことが多い。スタートはホームストレッチの内側と外側から、内側は補助員に支えられ、外側は柵(さく)に支点をとって待機し、1周の競技外周回後に正式スタートする。一定周回ごとに、ポイントライン(発着線)を通過した順にポイント(得点。1位から5、3、2、1点、フィニッシュにおいては10、6、4、2点)が与えられ、合計ポイントの多い選手が勝ちとなる。ポイントは250メートル以下のトラックでは10周ごと、それより大きいトラックでは2000メートルに近い距離ごとに与えられる。長距離の競技であるため、途中、他選手を追い抜く選手も出てくるが、主集団に追い付いた選手には20点が与えられ、追い付かれた選手は20点を減じられる。決勝距離は、世界選手権大会やワールドカップの場合、男子エリートは40キロメートル、女子エリートと男子ジュニアは25キロメートル、女子ジュニアは20キロメートルで行われる。
(6)ケイリンkeirin 日本の「競輪」の競走形態をもとにした競技。世界選手権大会、ワールドカップ、オリンピック(2000年第27回シドニー大会から)の正式種目となっている。競走の距離は1500メートル。750メートルをモーター・ペーサー(動力付き自転車)の後ろについて抽選で決められた順で1列(1組5~7名)で周回した後、スプリント(終盤の全力走)を行い、着順を競う。スタートは、中央線にスプリンター・レーンをあけて並び、スプリンター・レーンを走るペーサーが近づいたときにピストルの合図で行う。ペーサーはフィニッシュの750メートル前で走路の内側に退避するが、それ以前にペーサーを追い抜いた選手は失格となる。スタートしてから少なくとも最初の周はスタート時の順番を保たなければならない。ペーサーの速度はスタート時に毎時30キロメートル、走路を離れるまでに毎時50キロメートルまで加速する。
(7)チーム・スプリントteam sprint 男子は3名、女子は2名で構成する2チームが、男子はトラック3周、女子は2周してタイムを競う競技。ホームとバックストレッチの中央線からそれぞれ同時にチームでスタートし、各選手が1周ずつ先頭を走った後に走路を離れ、最終走者がゴールしたタイムで勝敗を決める。
(8)スクラッチscratch 男子エリートは15キロメートル、女子エリートと男子ジュニアは10キロメートル、女子ジュニアは7.5キロメートルの距離で行う。助走してからスタートするフライング・スタートで開始し、最終スプリントで順位を決定する。追い抜かれた競技者はその競技から除外される。20名前後で同時にスタートして行うことが多く、多人数で着順のみを競うため、ロードレースと同様な作戦が重要である。
(9)マディソンmadison 2名で構成するチームで、各チームのうち1名が競技に参加し、走行中に交代しながら、333.33メートルより短いトラックでは10周ごと、その他のトラックでは5周ごとの中間スプリント(中間ポイントライン通過時の得点。1位から5、3、2、1点、フィニッシュ時は10、6、4、2点)を含む25キロメートル前後の距離で競う競技。交代は随時、手または腰にタッチして行うことができる。交代までの全力疾走距離は通常500メートル前後である。2名で行うポイントレースといえる。長距離の種目なので追い抜きが起こりうるが、主集団に追い付いたチームには20点が与えられ、追い付かれたチームは20点を減じられる。
(10)オムニアムomnium 複数種目の競技を行い総合得点で順位を競う複合競技。2012年の第30回オリンピック・ロンドン大会から男女の正式種目となったのを機に競技規則が整備された。現行の規則(2016年より)では、スクラッチ(男子エリートは10キロメートル、女子エリートは7.5キロメートル)、テンポレース(男子エリートは10キロメートル、女子エリートは7.5キロメートル)、エリミネーション、ポイントレース(男子エリートは25キロメートル、女子エリートは20キロメートル)の4種目を1日で行う。最初の3種目では1位40点、2位38点、3位36点、のように得点が与えられ、21位以下には1点が与えられる。最後のポイントレースはそれまでの合計ポイントをもって開始し、中間スプリント、最終スプリント、周回獲得等の点数の加減により順位を決する。同点の場合は最終種目のポイントレースの最終スプリントの順位により決する。テンポレースは、ポイントレースと同様にスタートし、5周回以降フィニッシュを含む毎回の中間スプリントの1位に1点を与える。主集団に追い付いた選手は20点獲得、主集団に追い付かれた選手は20点を失う。エリミネーションは、集団でスタートし、毎周または2周ごとにフィニッシュ・ラインを最後に通過した者がその競技からエリミネート(除外)されていき、最後に残った2者で勝敗を決する競技である。
(11)タンデムtandem 2人乗り自転車によりスプリントを行う競技である。競技規則は1人乗りスプリントに準じる。パラサイクリングでも視覚障害者の種目として行われ、晴眼者が前に乗り、視覚障害者が後ろに乗る。予選はフライング・スタートの1周タイムトライアルで行うが、パラサイクリングにおいてはフライング・スタートの200メートルタイムトライアルで行う。
2019年7月19日
マウンテンバイクとよばれる、フラットなハンドル・バーと太いタイヤを特徴とする自転車で、おもに未舗装路で行う競技。
(1)クロスカントリーcross-country 通常、周回コースを用い、一斉スタートで着順を競う競技で、オリンピック種目となっている。クロスカントリー競技のコースは、通常、道路区間、林間の小道、野原、土あるいは砂利の小道、さらにかなりの総量の登坂および降坂などの多様な地形を含む。舗装路はコース全長の15%を超えることはできず、また全コースにわたり乗車可能でなければならない。クロスカントリー競技は多くの種目を含むが、代表的なものは1996年第26回アトランタ大会からオリンピック種目に採用されたクロスカントリーである。サーキット周長は4~6キロメートル、男子・女子エリートの競技時間は1時間20~40分である。
(2)ダウンヒルdownhill 選手が1人ずつコースを降坂し、タイムを競う競技。コースは最長3500メートル、競技時間2~5分。コースは旗、矢印、テープ等で示す。選手は安全のためにプロテクターを着用しなければならない。
そのほか、フォア・クロスfour cross、エンデューロenduro、ポンプトラックpump track、アルパインスノーバイクalpine snow bike、E-マウンテンバイクE-mountain bikeなどの種目もある。
2019年7月19日
通常、9~翌年2月の、秋・冬季に行われる競技。コースは道路、急坂など変化に富んだ道、林道および牧草地を含み、これにより競技のペースを変化させ、困難な区間の後には選手が回復できるように容易な区間を設ける。2.5~3.5キロメートルの周回路で形成し、この周回路の少なくとも90%は自転車で走行可能とする。コースには、選手が自転車から降りることを余儀なくされる障害物を含んでいなければならない。男子エリートの標準競走時間は60分。一斉スタートで、フィニッシュ・ライン通過時の着順で順位を決定する。
2019年7月19日
アメリカでおもに若年層を対象として開発された、BMXとよばれる自転車を使った競技。
(1)レースrace ジャンプやバンクなどを人工的に配した、全長300~400メートルの土を固めたトラックで、最大8名の選手が一斉にスタートし、着順を競う。5歳からエリートまで年齢別カテゴリーに細分化されている。2008年第29回北京大会からオリンピック種目に採用された。
(2)フリースタイルfreestyle 主として二つの異なる種目(パークpark、フラットランドflatland)のどちらかまたは両方をさす。一つまたは複数の、「トリック」とよばれるさまざまな自転車操作(技)を含む演技実行の技量に基づいて得点する、採点競技である。BMXレースと異なり、速さを競う競技ではない。
パークは、スケートボード・パークのような、クォーターパイプ、ピラミッドなどのセクション(構造物)からなるフィールド(最小15×25メートル、最大各60メートル)で、エア(空中での演技)を含めた演技をする。フラットランドは、平坦(へいたん)なプレーフィールド(最小10×10メートル、最大各25メートル)で演技をする。
2020年の東京大会から、パークがオリンピック種目に採用されることとなった。
2019年7月19日
屋外または屋内の自然の地形、人工的な障害物で構成された複数のセクションを走破するテクニックを競う採点競技。BMXから派生した20インチクラスと、マウンテンバイクから派生した26インチクラスがある。セクション内で足や体の一部、自転車の一部を地面や障害物について支点をとったり、セクションの境界を越えたりした場合は減点される。
2019年7月19日
(1)サイクル・ボールcycle-ball 自転車に乗って行う球技で、日本ではサイクル・サッカーとよばれている。男子のみの種目で、1チーム2名で行う。エリートおよびU23の試合時間は前後半7分ずつ、サイドチェンジ(ハーフタイム)は2分以内、布製ボール(直径17~18センチメートル、重量500~600グラム)を自転車の前後輪で巧みにドリブルしながら、ゴールにシュートして得点を争う。キーパーとして守備についているとき以外は手でボールに触れてはならない。自転車はドリブルやシュート、ターンや前後の動きが容易にできるよう、競技専用の自転車を使う。この自転車はハンドルが普通の自転車とは異なり、角(つの)のようになっている。また、ブレーキがなく、ギヤが固定されているためペダルを止めることでブレーキをかけることができ、後進することもできる。
(2)アーティスティック・サイクリングartistic cycling 専用の自転車上で倒立や直立などの演技を行い、優劣を争う採点競技。日本ではサイクル・フィギュアとよばれている。男女別にシングルとペアおよび4人制、6人制がある。
2019年7月19日
身体機能に制限がある競技者による自転車競技。1984年からパラリンピック種目にもなっている。競技適性により、手でこぐハンドバイク、トライサイクル(三輪)、バイシクル(二輪)、視覚障害者が対象のタンデム(2人乗り)にクラス分けされ、さらにそのなかで運動能力に応じて細分化される。ロード競技としては集団スタート、個人タイムトライアル、チーム・リレーが、トラック競技としては、1キロメートルおよび500メートル・タイムトライアル、インディビデュアル・パーシュート、タンデム・スプリント、チーム・スプリント、スクラッチ・レースが行われる。
2019年7月19日
トラック競技では、スターティング・マシンで支えられた静止状態からスタートする「スタンディング・スタート」、スタート・ライン手前から助走してスタートする「フライング・スタート」でそれぞれ距離別に世界記録が認められる。伝統的な形態の自転車を使用してトラック上を単独で1時間に走破した距離は「アワー・レコード」として認められ、新奇な技術や形態の自転車(たとえばディスク車輪、ハンドル・バーなど)を使用した記録は「ベスト・アワー・パフォーマンス」として区別される。
2019年時点でのトラック競技の世界記録は、男子エリートでは、200メートル・フライング・スタートは9秒347、500メートル・フライング・スタートは24秒758、750メートル・スタンディング・スタート団体は41秒871、1キロメートル・スタンディング・スタートは56秒303、4キロメートル・スタンディング・スタートは4分07秒251、4キロメートル団体は3分50秒265、アワー・レコードは55.089キロメートルである。女子エリートでは、200メートル・フライング・スタートは10秒384、500メートル・フライング・スタートは28秒970、500メートル・スタンディング・スタートは32秒268、500メートル・スタンディング・スタート団体は32秒034、3キロメートル・スタンディング・スタートは3分20秒060、4キロメートル団体は4分10秒236、アワー・レコードは48.007キロメートルである。
なお、公道やサーキットで行うロード競技は、距離、高低差、気象等の条件が多様であるため、世界記録は認められない。
2019年7月19日
UCIの規則による自転車の定義は、「自転車は、同径の二つの車輪を持つ乗り物である。前輪は操舵(そうだ)可能で、後輪はペダルとチェーンからなる装置を介して駆動される」というように形式を限定している。また、推進力は下肢によるクランク回転のみにより与えられ、かつ空気抵抗を減ずるような付加物は禁止される。競技種目によって各種のタイプがあり、その特徴もさまざまに分かれていて、UCIの規則に規格が定められている。規格にあわない自転車の使用は、競技終了後に判明した場合も含めて拒絶される。
ロード、トラック、シクロクロス競技に用いる自転車の全長は185センチメートル以下(タンデム=2人乗り自転車は270センチメートル以下)、幅は50センチメートル以下で、車輪の直径は55~70センチメートル、最少重量は6.8キログラム。ハンドル・バーの形状は伝統的な「ドロップハンドル」で、その前端は、タイムトライアル系の種目では、クランク軸を通る垂線より75センチメートル以内、それ以外の種目においては前車軸より前に出てはならない。フレームは「ダイヤモンド型」で、構成材の断面寸法・形状に制限がある。トラック競技用、ロード・タイムトライアル用を除いて、一体成型のフレームは禁止される。ロード競技用自転車は、18~24段の変速機を備え、パンク時にすばやく車輪を交換できる機能をもつ。トラック競技用自転車には、フリーホイール(走行中に足を止めることができる機構)、変速機、ブレーキは使用できない。シクロクロス競技用自転車のタイヤ幅は33ミリメートル以下とし、フラットなハンドル・バーは使用できない。マウンテンバイク競技用自転車は、未舗装で起伏のある路面に対応してサスペンションを装備するものが多いが、フラットなハンドル・バーを使用しなければいけない。
2019年7月19日
自転車競技場には屋外と屋内競技場がある。周長は、整数周回あるいは整数+半周回で1キロメートルとなるよう、250、285.714、333.33、400メートルなどに決められている。世界選手権大会、オリンピックに使用できる競技場は、周長250メートルに定められている。競走路は、木製、コンクリート製、アスファルト製などがある。走路には時速75キロメートルに耐えられる直線のカント(傾斜)がつけられ、周長250メートルの場合、曲線部で45度、直線部で15度ほどである。走路の内縁より内側は青色に塗られ、ブルー・バンドとよばれる回避地帯となる。走路には走行方向に、内縁より20センチメートル外側には測定線、さらに70センチメートル置いてスプリンター・ライン、走路幅員の3分の1のところにステイヤー・ラインが引かれる。走路を横断してフィニッシュ・ライン、中央線、200メートル線が引かれる。競技中や練習中も安全に移動できるように、走路の内側にある選手控え場所、ウォームアップ・エリアや審判施設と外部を連絡するトンネルが必要である。日本においても、2011年静岡県伊豆市に屋内・木製走路の250メートルの競技場(伊豆ベロドローム)が建設され、2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会でも使用される。
2019年7月19日