日本大百科全書(ニッポニカ)

機械遺産
きかいいさん
Mechanical Engineering Heritage 英語

日本の機械産業の発展に貢献し、歴史的に意義のある製品(物件)を遺産として認定する制度。または認定された物件。たいせつに保存し次世代に伝える意義があるとして、社団法人日本機械学会が創立110周年を迎えた2007年(平成19)から認定を始めた。機械技術上、工学的に大きな進歩や成果に寄与した、あるいは国民生活や文化、社会、教育などに貢献した機械が認定される。(1)世界初、日本最古などの機械で、現在まで保存・収集されているもの(Collection)、(2)機械を含む象徴的な建造物・構造物(Landmark)、(3)歴史的景観を構成する機械遺産(Site)、(4)歴史的に意義のある機械関連文書類(Documents)、の4分野を対象に認定する。毎年「機械の日」である8月7日に認定式がある。
 2018年までの認定件数は94件。国産初の量産型「旅客機YS11」、初代の「東海道新幹線0系電動客車」、世界初のロータリーエンジン、マツダの「10A型ロータリエンジン」、アメリカの排ガス規制を世界で初めてクリアした「ホンダCVCCエンジン」、有人潜水調査船「しんかい2000」のほか、「札幌市時計台の時計装置」などの風景、「青函(せいかん)連絡船及び可動橋」などの建造物・構造物、「東京帝国大学水力学及び水力機講義ノート」などの文書類が認定されている。対象となる時代は原則、産業革命以降の工業化時代であるが、近代以前の機械も含み、芝浦製作所(後の東芝)創業者の田中久重(ひさしげ)作の「からくり人形 弓曳(ひ)き童子」や、現存する最古の劇場型木造芝居小屋「旧金毘羅(こんぴら)大芝居(金丸座(かなまるざ))の廻(まわ)り舞台と旋回機構」など江戸期の遺産も認定されている。ほとんどの機械遺産は記念館や博物館などに展示されており、認定された機械遺産を観光資源として活用し、地域経済の活性化に役だてるねらいもある。
[矢野 武]2019年8月20日