文教、医療・福祉、公共事業、外交・防衛などにかかる行政費用を、借金せずに、税収などの歳入だけでどの程度まかなえているかを示す指標。国の場合、国債などで調達した資金を除いた歳入(税収・税外収入)から、国債の元利払い費を除いた歳出を差し引いて計算する。つまり借金の影響を考慮せずに、単年度の収支均衡がとれているかどうかを示す。基礎的財政収支ともよばれるほか、英語の頭文字からPBと略されることもある。
バブル経済崩壊後のたび重なる経済対策や高齢化に伴う社会保障費の増大で、日本の国と地方をあわせた借金(長期債務残高)は2018年度(平成30)末時点で約1100兆円に上り、国内総生産(GDP)に占める比率は先進国中最悪の約200%に達する見通しである。プライマリーバランスを均衡(歳出と歳入の差をゼロにする)しても長期債務残高が減るわけではないが、均衡した場合、債務は利子率に応じて増える一方、税収も経済成長率に応じて増えるため、かりに利子率と成長率がほぼ同一であれば、債務残高のGDP比率は一定に保たれ、債務残高が雪だるま式に膨らむのを抑えられる。このためプライマリーバランスは財政健全化の目安の一つとされる。
日本はバブル経済が崩壊した1992年(平成4)以降、ずっとプライマリーバランスが赤字である。歴代政権はプライマリーバランスの黒字化を目標に掲げてきたが、ことごとく失敗し、目標年次の延期を繰り返している。1999年に小渕恵三(おぶちけいぞう)政権は経済戦略会議で2008年度までにプライマリーバランスを均衡させる目標を掲げ、2006年に小泉純一郎政権は骨太の方針で2011年度に黒字化する目標を掲げた。しかし日本経済のデフレ進行や世界同時不況の影響で、政府は財政出動を柱とする経済対策を講じたため、2009年に麻生太郎政権は黒字化目標を先送りする方針に転じた。2013年、安倍晋三(あべしんぞう)政権は骨太の方針でプライマリーバランス黒字化目標を2020年度としたが、消費増税時期の先送りなどで、2018年には目標時期を2025年度に5年先送りした。
2019年8月20日