バブル経済崩壊に伴う土地不良債権を処理し、不動産証券化の導入等によって不動産市場の回復を図るため、主として金融機関等大規模デベロッパー(開発業者)が計画・開発主体となって実施する、首都圏やその他大都市圏の都心機能の高度化すなわち都心改造を推進するための即効性を重視した都市計画事業法。同法の構想は、小泉純一郎内閣が成立する約1年前の段階から財界の経済戦略会議の戦略プロジェクトとして位置づけられ、小泉内閣が発足した直後から国土交通省に都市再生本部が設置されて法案についての検討が始まり、2002年(平成14)4月に成立した。平成14年法律第22号。
都市再生特別措置法の特徴は以下の3点である。第一は、国は事業の重点的推進を図るために都市再生本部を設置し、首相を本部長、国務大臣を副本部長および本部員とすることにより、首相自らが都市再生基本方針、緊急整備地域、地域整備方針を決定するという、際だった政府の高権性(トップダウン方式。上意下達方式)が付与されていること。第二は、民間都市再生事業計画を積極的に奨励するため、民間開発業者の計画申請から認定までの期間の大幅短縮(3か月以内)、事業資金の貸付け・補助・債務保証など各種優遇措置の付与、当該自治体が定める都市計画規制を自由に変更・決定提案できる計画権限の付与および計画認定期間の大幅短縮(6か月以内)など、各種の例外的な特別措置を講じていること。第三は、当該自治体が民間都市再生事業計画と連動した都市再生整備計画を策定して事業化するときは、特別交付金を交付して事業を推進しようとしていることである。
なお2011年の一部改正では、60数か所の緊急整備地域をさらに10か所程度の「緊急整備特定地域」に絞り込み、民間の都市開発事業の資金調達に国が債務保証する新制度が盛り込まれた。また建築基準法を緩和して、公道をまたぐ形でデパートやオフィスビルなど大型建物を建てられる特例制度も創設された。これは、小泉構造改革における都市再生政策を一段とバージョンアップさせたものといえる。
以上からいえることは、国が地方自治体の都市計画規制を事実上フリーハンド(自由裁量)にして規制緩和し、不動産市場の活性化のために金融機関等大規模デベロッパーによる都心改造を推進するのが、都市再生特別措置法の目的であり本質であるといえよう。
その後、地方での人口減少や少子高齢化が加速したため、国は地方都市のコンパクトシティ化を推進するため、2014年に改正都市再生特別措置法を施行し、地方の都市機能を中心部に集約する施策を本格的に打ち出した。市町村は街づくりのマスタープランとなる「立地適正化計画」を策定し、駅、病院、役所、商業施設などが集まる「都市機能誘導区域」と住宅を集める「居住誘導区域」を設定。補助金、税制優遇、容積率などの規制緩和で二つの区域内への移転・集約を促す。両区域外での開発には市町村への届け出を必要とすることで、郊外への機能分散を抑制する。2019年(令和1)5月時点で、全国の250地方都市が立地適正化計画を作成・公表している。さらに空き地や空き家などの低未利用地が次々に発生して市街地が低密度化する「都市のスポンジ化」に対応するため、2018年に都市再生特別措置法を再改正・施行し、複数の土地・建物に一括して利用権を設定して集約・活用する制度や、地権者の合意を前提に空き家や空き地を住民の交流施設として共同管理する仕組みなどを導入した。
2019年9月17日