地球温暖化対策に関する国際的な新たな協定。2015年12月、フランスのパリで開かれた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で合意したため、こうよばれる。1997年(平成9)に採択された京都議定書にかわる18年ぶりの多国間の枠組みで、2020年からの実施を目ざす。パリ協定は、気候変動枠組み条約に加盟する196すべての国・地域が参加する初の枠組みである。産業革命以降の世界の平均気温上昇を2.0℃未満に抑えるとの全体目標を定め、さらに1.5℃未満に抑える努力をすることを確認。21世紀後半には、人類の活動による温暖化ガスの排出量と吸収量を均衡させ、実質的に温暖化ガスの排出量をゼロにすることを目ざす。京都議定書では、先進国だけに温暖化ガスの削減目標を課したが、パリ協定では開発途上国を含むすべての国・地域に自主的な削減目標を国連に提出するよう求めた。目標達成の義務づけは見送ったものの、5年ごとに目標を見直し、世界全体で温暖化防止に向けた進捗(しんちょく)状況を点検する仕組みを取り入れた。先進国には開発途上国への資金援助を義務づけ、その他の国も自主的に資金支援することを推奨している。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、パリ協定に盛り込まれた産業革命以降の平均気温上昇を2.0℃未満に抑えるには、温暖化ガスの累積排出量(炭素換算)を7900億トンに抑える必要があるが、すでに人類は2011年までに約5150億トンを排出している。このため石炭火力の抑制、省エネルギー対策、森林の保護などを地球規模で進める必要があるが、パリ協定には目標を達成できなかった場合の罰則や対策が明確に盛り込まれておらず、環境保護団体などからは温暖化防止の実効性に乏しいとの批判が出ている。
[矢野 武]