日本大百科全書(ニッポニカ)

食糧自給率
しょくりょうじきゅうりつ

一国の食糧総供給量のうち、国内生産で供給される度合いを示す指標。農林水産省の統計資料では「食料自給率」と表記されている。通常、品目別には、国内消費仕向量に対する国内生産量の百分率で表される(品目別自給率)。品目別自給率をみてわかることは、日本では、ほぼ自給しているのは米(99%)と鶏卵(96%)のみである。大豆(4%)、小麦(11%)は著しく低いまま推移している。また、1980年代なかばごろを境に、主要品目の自給率が大幅に低下している。かつて高かった野菜は95%から86%へ、魚貝類は96%から72%へ、肉類も81%から56%へと下がった。肉類の生産に要する飼料の自給率は26%にすぎず、変化はほとんどない(数値は1985年度と1997年度の比較)。
 自給率は、食生活の変化という消費側の要因と、貿易や国内生産の状態という供給側の要因との二つの側面に左右される。牛肉では、貿易制度の変化(輸入自由化)と消費量の大幅な増大があり、国内生産以外の条件変化が自給率低下の原因となった。しかし、他の品目では、貿易制度や消費量に大きな変化はなく、国内の農業生産者の減少によるところが大きい。その背景には、アジア諸国から安価な農産物が流入し国内相場が大きく低下したため、農業の先行きに不安がもたれるようになったことがある。
 食糧全体の自給率を示す総合自給率の算定には、かつては価額を共通尺度として供給量を算出する方式なども用いられていたが、現在はおもに供給熱量(カロリー)によって算出する供給熱量自給率が使用される。この方式では、畜産物はその生産に要した飼料の熱量の段階でとらえられる。いずれの方式も一長一短があり、供給熱量自給率には、畜産物の国内生産部分や、熱量の低い野菜の供給の状態が反映されないという問題がある。日本の総合自給率は、1985年度(昭和60)の52%から1997年度(平成9)には41%へと下がった。諸外国と比較すると、穀物自給率はアメリカ109%、旧西ドイツ106%、日本28%となっている(外国の数値は1988年度、日本は1997年度)。先進資本主義国のなかでも著しく低い食糧自給率のなおいっそうの低下は、食糧供給と消費のあり方をめぐって多くの論議をよんでいる。そして、食糧自給率の低下に対する国民の不安が背景となり、1999年(平成11)7月に成立・施行された「食料・農業・農村基本法」では、はじめて目標を設定して食糧自給率の向上を図ることが定められた。
[新山陽子]

その後の動き

21世紀に入っても、輸入農産物の増加や米の需要減退で、日本の食糧自給率は徐々に低下を続けている。2018年(平成30)の供給熱量自給率は37%と、米の深刻な凶作だった1993年(平成5)と並び、過去最低を記録した。日本政府は地産地消の推奨や米粉の需要拡大などの自給率向上策をとっているが改善していない。2015年には、供給熱量自給率を2025年までに50%へ引き上げるとした政府目標を45%へ下方修正した。諸外国の供給熱量自給率(2013年時点)はオーストラリアが223%、アメリカは130%、フランスは127%、ドイツは95%、イギリスは63%で、日本は先進国のなかで最低水準にある。なお日本の2018年時点の生産額ベースの自給率(政府目標は73%)は66%である。
[編集部]2020年1月21日