医薬品や健康食品、化粧品を中心に、日用品、雑貨、食品などを扱う小売店。薬局のカウンセリング機能を省き、原則消費者がセルフサービス方式で購入する形態をとるが、薬剤師が常駐して対面販売を行うドラッグストアもある。日本で医薬品を販売できる店は、薬剤師が処方箋(しょほうせん)に基づいて調剤する「薬局」と、大衆薬(一般用医薬品)のみを販売する「店舗販売業」に分かれており、ドラッグストアは「薬局」ないし「店舗販売業」のどちらかの許可を受けて営業している。営業時間が長いという特徴があり、日用品や食品などを値引き販売して集客し、利率率の高い医薬品や化粧品で利益を稼ぐ事業モデルをとる。家電量販店やホームセンターなどと同じ専門店の一種である。
ドラッグストアはアメリカで19世紀後半に小売業として確立した。もともと医薬品店であったが、日用雑貨、たばこ、菓子、新聞・雑誌、書籍などをあわせて販売し、「ソーダ・ファウンテンsoda fountain」とよばれる軽飲食カウンターを併設する店が多い。アメリカ文化を象徴するコカ・コーラは、ソーダ・ファウンテン併設のドラッグストアで提供されたのが始まりである。日本では1970年代、薬局・医薬品店が共同仕入れや独自ブランド開発のためにボランタリー・チェーンを形成して誕生した。1980年代後半から、健康食品、化粧品を品ぞろえし、低価格で販売するスタイルが消費者に支持され、駅前、繁華街、郊外への出店が加速した。大手チェーンが中小店を次々に買収し、規模拡大しながら急成長をとげ、2008年(平成20)に初めて「日本標準産業分類(総務省)」にドラッグストアという業態分類が設けられた。北海道のツルハドラッグ、アインファーマシーズ、関東のウエルシア、マツモトキヨシ、サンドラッグ、富士薬品、中部のスギ薬局、九州のコスモス薬品といった地域すみ分けがあったが、大衆薬のネット販売拡大や薬剤師不足による人件費上昇などから、地域を越えた再編が進みつつある。日本の2018年度の総売上高は7兆2744億円、店舗は2万0228店。2000年度に比べ売上高は約3倍、店舗数は約2倍に増えた。小売りの市場規模としては、百貨店(6兆円弱)を上回り、スーパー(約13兆円)やコンビニエンスストア(約11兆円)に次ぐ規模である。
2020年1月21日