体操競技における女子器械種目の一つ(平均台運動)。また、その器械名。長さ500センチメートル、上部平面は10センチメートルの幅の木製台で表面は皮革(バックスキンレザー)で覆われており、床面から125センチメートルの高さで水平に固定される。使用するマットの厚さは20センチメートルである。
18世紀中ごろより、ドイツでJ・B・バゼドウやJ・C・グーツムーツらによって青少年の体育運動として取り入れられ、「ドイツ体操の父」といわれるF・L・ヤーンが丸太の遊動木による平均運動を行った。19世紀末になって女子による平均台運動がみられるようになるが、静的な運動が主で、優雅に平均台上を移動するような内容であった。1936年のオリンピック・ベルリン大会から団体総合の演技種目として採用(幅8センチメートル)されており、1960年代になって急速に演技内容が高度化し、後転とびや宙返りなどのアクロバティック系要素の連続技が積極的に導入されてきた。
きわめて狭い台上で行うので、高度な平衡感覚と身体能力が要求されることから、技術の進歩により「演技面(演技スペース)の限定されたゆか運動」ともいわれるようになった。バランスを崩さずにいかに安定して演技するかが優劣判定の条件ともなっており、女子競技のゆかを除く3種目中、もっとも落下率が高い種目で、選手はつねに落下という重圧と闘っており、平均台演技のでき・不できが総合成績に大きく影響するという声もある。
演技内容には歩、走、跳躍、振動(体を振る)、波動(波のような動き)などの体操系の運動、ポーズ、ターンなどのバランス系の運動、倒立回転、倒立回転とび、宙返りなどの回転系の運動が含まれる。演技は、90秒の演技時間内に前述の運動要素をむだなく組み合わせ、500センチメートルの台上を最大限使用しなければならない。そのため、回転系の技を中心にスピーディーな動きが求められる。リズミカルで安定した動きやフォームがEスコア(演技実施点)を高めるうえで重要となる。演技時間(90秒)および落下時の中断時間(10秒)を超過すると減点となる。1952年の第15回オリンピック・ヘルシンキ大会よりオリンピック種目(種目別)となった。
2020年2月17日