日本大百科全書(ニッポニカ)

認知機能検査
にんちきのうけんさ

精神機能(認知機能)を評価する検査。簡易な検査法としてよく知られるものに1975年にアメリカで開発された「ミニメンタルステート検査(MMSE:mini mental state examination)」がある。11の質問項目からなり、記銘力や見当識、計算力などの認知機能を簡易に測定することができる。具体的には、日時(年月日や季節)、現在地(県名や市名など)、記憶と想起(三つの品名を復唱し、あとでもう一度繰り返す)、7シリーズ(100から順に7ずつ引いていく)、呼称(時計と鉛筆を見せられ、それぞれの名称を答える)、読字(文章を声に出して読むなど)、言語理解(紙を持ち、折りたたみ、渡すなど3段階の指示に従う)、文章理解(文を読んでそれを行動に移す)、文章構成(文章をつくる)、図形把握(図形を見せて書き写させる)である。それぞれの項目に対する答えが得点(30点満点)で示され、総得点が22~26点の場合に軽度認知障害が疑われ、21点以下の場合に認知障害が疑われると判断される。
 ほかに日本では「長谷川式認知症スケール」(旧称:長谷川式簡易知能評価スケール、長谷川式痴呆(ちほう)スケール、1974年作成)とよばれる9項目からなる評価法がある。質問項目の多くは基本的にはMMSEに近いが、図形把握などの質問項目がない。しかし1991年(平成3)の改訂版では、検査の実際の場面を想定して質問方法が具体的に示され、また提示した数字を逆から復唱させるなどいくつかの点で新しい要素が加わっている。
[編集部]2016年5月19日

近年の動向

2009年(平成21)から、日本では75歳以上の後期高齢者は運転免許更新の際、講習予備検査という名目で簡易な認知機能検査を義務づけられた。記憶力や判断力をみる30分程度の筆記検査で、「時間の見当識」(検査当日の年月日、曜日と時間)、「手がかり再生」(16種類のイラストを記憶し、何が描かれていたかを答える)、「時計描写」(時計の文字盤を描き、そこに特定の時刻を表す針を書き入れる)の3項目検査がある。検査を受けると「認知症のおそれあり」(第1分類)、「認知機能低下のおそれあり」(第2分類)、「認知機能低下のおそれなし」(第3分類)のいずれかに判定される。2017年3月に認知機能検査を強化した改正道路交通法が施行され、認知機能検査のあと、それぞれの分類に応じて計2時間程度の高齢者講習を受けることになる。第1分類と判定された人は医師受診が義務化され、認知症を発症していれば免許取消し、または停止処分となる。第2、第3分類でも指定場所一時不停止、信号無視、逆走などの18の違反(特定の違反)をすると、次回更新時をまたずに臨時認知機能検査を義務づけられ、医師が認知症と診断すれば免許取消しなどの処分を受ける。警察庁の統計によると2018年に認知機能検査を受けた人は約216万5000人で、このうち約5万4700人が第1分類と判定された。2017年から2018年にかけて第1分類と判定され免許の扱いが決まった人のうち、約5%が免許取消し・停止処分、約45%が自主返納、約15%が免許失効となり、継続して免許をもっている人は約35%であった。
[編集部]2020年2月17日