信用力や十分な担保のない個人、法人、団体などが借入れ、物やサービスの購入、不動産の賃借契約を行うときに、その返済や支払いの義務(債務)を、第三者が保証する行為。借入金の返済や、代金、家賃などの支払いができない場合、借り手にかわって第三者である保証人が返済(代位弁済)しなければならない。保証人が代位弁済した場合、保証人は債務者への求償権が発生するが、求償金が払われることはほとんどない。通常、保証者は債務者から一定の手数料(保証料)をとる。財務基盤が脆弱(ぜいじゃく)ながら成長が期待される企業が資金調達する場合、金融機関や親会社などが債務保証するケースが多い。信用力や担保に乏しい中小企業が借入れをしやすくするため、債務保証する公的機関として信用保証協会や中小企業基盤整備機構がある。宇宙・海洋開発、資源探査、原子力関連、途上国貿易などリスクの高い事業を営む企業や団体に対し政府が債務保証する場合もある。日本では経営者やその親族が債務保証する個人保証という独自の商慣習が広く行われている。
国際決済銀行(BIS)による自己資本比率基準では、債務保証は一般企業向け融資と同じく、もっともリスクが高いとみなされ、銀行にとって債務保証額は全額がリスク資産に計上される。上場企業には、債務保証先や保証額を有価証券報告書に注記することが義務づけられている。企業経営者が取締役会の正式な議決を経ずに債務保証した場合、特別背任で刑事責任を問われることがある。バブル経済期に、親会社が子会社や関連会社の信用補完手段として、明確な債務保証ではなく、将来、債務保証すると約束する「保証予約」や、監督・経営指導責任があることを示す「経営指導念書」「覚書」などを金融機関へ差し入れる保証類似行為が横行した。バブル経済崩壊後、最終的に親会社が借入金の肩代りを迫られ、経営に重大な影響を及ぼす事例が相次いだ。日本公認会計士協会は1999年(平成11)3月期の監査から、保証類似行為を含め、すべての債務保証を情報開示し、適宜、債務保証損失引当金に計上するよう求めている。
政府は2020年(令和2)から、中小企業の経営を承継した者に対し、経営状態が健全であることを示す、(1)債務超過でない、(2)もうけに比べ借入金が多すぎない、などの条件を満たせば、個人保証を免除する制度を導入。かわりに、中小企業の過去の債務を保証協会などが保証する。個人保証負担が重く、中小企業の事業承継が進まない現状を改善するねらいがある。全国銀行協会(全銀協)や商工組合中央金庫(商工中金)も個人保証をとることを原則禁止するガイドラインを策定している。
2020年3月18日